魔女のハーブは、あんまり甘くない 6ー2 魔女と星の未来(2)
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◯ヤマテノ丘(昼のころ)
馬車が、大きな音をたてて、ヤマテノ丘にとまる。
若い馬が、ブルルと、声をあげる。
馬車の前には、広い丘がひろがり、たくさんの白い十字架がならんでいた。
リサ「・・ようし、到着ね」
エドワウ「・・・・」
リサとエドワウ、馬車をおりる。
リサ、ぎょしゃのおじいさんを、見る。
おじいさん、馬車からおりると、ちかくの大きな石に、よいしょと座る。
リサ「あの・・、この馬車を、私に・・・?」
エドワウも、おじいさんを見る。
おじいさん、手で、あごひげをなでる。
ぎょしゃ「・・ああ、わしは、このとおり、もう引退をするんでね。この子の、新しい主人がほしいと、思ってたんじゃ」
ぎょしゃのおじいさん、わらってポケットからパイプをだすと、マッチで火をつける。
リサ「でも、どうして、私に・・・・?」
若い馬が、ブルルと鳴くと、大きな舌で、リサをぺろっとなめる。
リサ「わっ、くすぐったい」
リサ、笑いながら、馬の頭をなでる。
ぎょしゃ「いや、はじめて見たよ。この子は、わし以外には、なつかないんじゃが、あんたを、たいそう気に入ったらしい」
ぎょしゃのおじいさん、ゆっくりと、口から煙をはく。
ぎょしゃ「・・わしのカンなんじゃが、この子は、あんたを主人にしたい、といっているよ」
リサ、やや緊張した表情をつくる。
リサ「でも、私、馬なんか、よく知らないし・・・・」
リサの胸のペンダントが、小さく光った。
リサ「?」と目をあける。
馬が一瞬、地面から浮いたように見えた。
リサ「・・・・え?」
馬は、ただ夢中で、丘の草を食べている。
ぎょしゃ「おや、そのペンダントは・・・・?」
おじいさん、パイプを口からはなし、おどろいた顔で、ペンダントを見る。
リサ「・・・・?」
エドワウ「姉さん。叔母さんは、あそこだよ」
エドワウ、丘の奥のほうにある十字架を、ゆびさす。
リサ、こくりとうなずくと、エドワウといっしょに奥の十字架へと歩いていく。
おじいさん「あれは、もしかして・・・・」
おじいさん、2人のうしろ姿を見ながら、つぶやく。
奥の十字架の前までくると、エドワウが、花を、そっとそばにおく。
リサ「あら、ノアちゃんが、もってきてくれた花ね」
リサ、嬉しそうに見る。
エドワウ「・・ああ、きれいな花さ。1本だけ、しおれちゃったけど」
エドワウ、いちばんはじの、小さな花を見ていう。
2人で、十字架を見る。
エドワウ「・・叔母さん、口うるさかったけど、一生懸命、ぼくらを育ててくれたからね」
エドワウがつぶやくと、リサがそっと手をのばし、指さきを十字架につける。
エドワウ「・・よかった。叔母さんも、天国で、よろこんでるよ」
エドワウがほほ笑むと、リサも、そっと、ほほえむ。
リサ「・・そうね。私も、すごく、おてんばだったから、大変だったのね・・・・」
リサの胸のペンダントが、光る。
リサ「・・・・?」
エドワウ、はっとする。
エドワウ「あれ、しおれていたのに・・・・?」
いちばんはじの花が、きれいな花を、咲かせていた。
リサとエドワウ、たがいに顔をあわせると、しばらくして、ふっと笑いだす。
リサとエドワウ、わらったまま馬車のほうへもどると、おじいさんの姿が、なかった。
リサ「・・あら? おじいさんは?」
リサ、あたりを見回したが、だれもいない。
エドワウ「うん? 馬のそばに、なにかある」
おじいさんが座っていた石の上に、小さな紙が、おいてあった。
エドワウが、紙をひろうと、小さな文字が書いてある。
<そのペンダントで、この子を、はばたかせてあげてほしい。よろしく>
リサとエドワウ、しばらくだまりこむ。
エドワウ「・・え、なにこれ?」
リサ「はばたかせる、って・・・・・?」
馬、リサを見て、ブルルと小さくなく。
リサ「・・・・?」
エドワウ「さ、街にもどろうか」
リサとエドワウ、馬車に乗る。
エドワウ「でも・・、どうやって動かせば、いいのかな?」
リサ「え・・と、街へ、行ってくれるかしら?」
リサが若い馬につぶやくと、胸のペンダントが、光った。
すると、若い馬が、うれしそうに鳴いて、馬車が街にむかって、いきよいよく走り出した。
リサ「わっ」と、声をあげる。
エドワウ、おどろいて、帽子を手でおさえる。
◯アカリのお店(昼と夕のあいだ)
厨房で、エプロン姿のユイが、楽しそうにハーブティーをいれている。
ユイ「よーし、新しいハーブティー、完成っ!」
ユイが、スプーンで、ハーブティーにハチミツをいれ、一口のむ。
ユイ「んー。アカリのより、ちょっと甘くて、ちょうどいいかな」
ユイ、笑みをうかべるが、窓のそとを見ると、すこし、むずかしい表情に変わる。
ユイ「しっかし、アカリは、いつ、帰ってくるのかなあ・・・・」
ユイがつぶやくと、カランと、お店の扉が、ひらいた。
ユイ「いらっしゃいませ」
ユイが笑顔でいうと、扉のそばに、水色の服を着た少女がたっていた。
だが、前髪と、かぶったフードで、顔がよく見えない。
少女「・・あの、ハーブティーを、もらえますか?」
少女が小さな声をだすと、ユイ、こちらへどうぞ、とカウンターにすすめる。
ユイ「・・いま、ちょうど、オリジナルのハーブティーができたんです、ぜひ、どうぞ」
と声をかけると、少女、小さくうなずいて、カウンターにすわる。
フードは、かぶったまま。
ユイ「えへへ、はじめてのオリジナル。どんな反応するかな・・・・」
と笑みをうかべながら、ハーブティーをいれる。
ユイ「おまたせしました」といってハーブティーをだすと、少女、ひと口のんで、ふっと笑う。
少女「・・おいしい。ほんのり甘くて」
少女、前髪のすき間から、よろこびを含んだ青い瞳をみせる。
ユイ「え、本当ですか? うれしい」
ユイ、両手で、ガッツポーズをつくる。
少女、2口、3口とハーブティーを飲むと、スプーンで、ハチミツをすくっていれる。
ユイ「あの・・、ちがう街から、きたんですか? その服、めずらしいので」
ユイ、少女の水色の服を、見ながらいう。
少女「え、ええ・・・・」
少女、ティーカップをおく。
少女「そうですね・・。とても遠いです。たぶん、人が、たどりつけないような場所・・・」
少女、窓のさきの、遠くを見ながらいう。
ユイ「・・・・え?」
その時、少女の胸に、きらりと光るものが見えた。
ユイ「・・・・?」
少女、ハーブティーの最後の一口を、飲む。
少女「・・ごちそうさまでした。とっても、おいしかったです」
ユイ、嬉しそうに笑うと、少女、硬貨を2枚おいて、小さくおじぎをしてさっていく。
ユイ「・・あの子、どっかで、見た気が・・・」
ユイ、首をかしげると、空を見ておどろく。
空が、夜の色を、おびていた。
ユイ「あれ、きゅうに、空が・・。まだ、そんな遅くないのに・・・・?」
7つの星が、夜空に、かがやいていた。
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<6ー3に、つづく>
