魔女のハーブは、あんまり甘くない 4ー4 魔女と流星の矢(4)
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◯リサのお店(夜のころ)
カウンターには、飲み終わったティーカップと、空になった赤い小皿が、おいてある。
ノア「あー、おいしかった。お腹いっぱい」
ノア、お腹を両手で、パンパンと、たたく。
リサ「・・そうか、長旅だったんだものね。それは、お腹が、すいてるわよね」
リサ、小さく笑う。
ノア「・・すみません。あとで、お礼はします。それで、お姉ちゃんでしたよね」
リサ、べつにそんなこと、と両手をふると、真顔にもどる。
ノア「お姉ちゃん、急に、あたしたちの前から、いなくなっちゃって・・・・」
ノアの元気だった顔に、かげが、さす。
リサ「・・・そうなの。ぜんぜん、知らなかったわ」
リサ、自分のティーカップに、ハーブティーを入れると、口にはこぶ。
ノア「・・それで、あたしたち、ユンカー家の家系なんです」
リサ「あら、そう・・って、ユンカー家?」
リサ、吹き出しそうになるのを、手でおさえる。
ノア、こくりと、うなづく。
リサ「(目を開いて)え・・、貴族エリアでも有名な、あのユンカー家?」
ノア、少してれたように、ほほえむ。
リサ、ティーカップをおいて、ノアに、背中をむける。
リサ「(小声で)わたし、スラムエリアにいたことは、だまってたほうがいいかな・・・・」
ノア「・・・・え?」
ノア、不思議な顔。
リサ「・・う、ううん、なんでもないの」
リサ、あわてて首をふって、向きなおる。
リサ「でも、アカリちゃん、そのことは、ぜんぜん、わたしには・・・・」
ノア「・・ええ。お姉ちゃんは、自分は自由に生きたいって、とつぜん、家をでました」
リサ「・・・・?」
ノア「・・いろんな人に聞いたら、この街で、お姉ちゃんが、ハーブのお店をやっているのがわかったので、あたしも家をでて」
ノア、小さなため息を、つく。
ノア「・・家族も、ともだちも、みんな心配してて。だから、あたしが、つれもどしにきたんです」
リサ「・・・・」
リサ、やがて、ふっと、肩をおとす。
リサ「・・しっかりモノの妹さんね。うらやましい」
リサ、ハーブティーを、ゆっくりと飲む。
ノア「はい。でも、いちばん心配してるのは・・・・」
ノア、口をとじて、だまりこむ。
リサ「・・・・?」
リサ、壁の時計を見ると、閉店時間を、だいぶ過ぎているのに気づく。
リサ「・・あ、もう、こんな時間。ノアちゃん、今夜は泊まっていきなさいよ。アカリちゃんの部屋、空いてるから」
ノア「・・え、本当ですか? やった」
ノア、両手でガッツポーズをつくると、リサ、ノアを、2階につれていく。
リサ、2階の奥のアカリの部屋のドアを開けて、ノアに、なかを見せる。
ノア「・・わあ、お姉ちゃんの匂いだ」
ノア、両手を、あわせる。
リサ「・・ふふ、そうやって笑った顔なんか、ほんと、アカリちゃん、そっくり」
リサ、ノアの背中に手をおいて、部屋のなかに、うながす。
ノア「・・きれい。この窓から、星が、すごくよく見えますね」
リサ「そうなの。さいきんは、星がやたらと、キラキラしてるのよね」
ノア「・・ええ。星が、呼び合ってるみたいです」
リサ、うなずく。
リサ「そう・・そうね。まるで、共鳴しているっていうのかしら・・・・」
リサ、じゃあ、ベッドはこれねと言って、部屋を出ていく。
ノア「・・おやすみなさい」
リサ「うん、おやすみ」
リサ、ドアをゆっくりしめて、階段を降りていく。
ノア、枕元に、アカリといっしょに笑っている写真を、おく。
そして、写真のノアのうしろには、ひげをはやした男性と、美しい婦人がたっていた。
ノア「お姉ちゃん、きっと、もうすぐ会えるよ・・・・」
ノア、部屋の灯りを、けす。
◯森の中(夜のふかいころ)
月明かりがさす森の中を、はあはあと、少年が、息をきらして走っている。
少年「こ、こんなことが・・」
落ち葉が音をたてて、少年のあとを、小さく舞い上がる。
少年「おれ・・、おれなの?」
少年、自分の顔に手をあてながら、問いかけるようにつぶやく。
やがて、落ち葉にうもれたきりかぶが、月明かりのしたで、ぼんやりと、浮かんで見えた。
少年、つかれたように、きりかぶに腰をおろすと、両手で長い黒髪をつかむ。
少年「あのペンダント・・、星の魔法、なのかな・・・・?」
つぶやく少年の、真上。
ふくろうおじさんが大きな枝に座り、黄色い目を開けて、少年をじっと見ている。
おじさん「おや、めずらしいな。こんな時間に・・・・」
ふくろうおじさん、大きな翼をひろげると、枝から地面に、ゆっくりとおりる。
少年が、どきっとおどろいた顔で、目の前に立つふくろうおじさんを、見る。
おじさん「・・なあ、キミ。こんなとこで、なにを、しているんだい?」
ふくろうおじさんが、少年に話しかける。
すると、少年、きりかぶから立ち上がり、逃げるように、走りさっていく。
森に、静寂がながれる。
おじさん「・・・・あ、そうだった」
ふくろうおじさん、はっとする。
おじさん「わしは、顔は、ふくろうのままだったんだ・・・・」
ふくろうおじさん、両手で、自分の顔をさわる。
ばささと、音をたてて、となりの木の枝にとまっていたシロフクロウが、ふくろうおじさんの肩の上に、とまる。
おじさん「でも、あの少年、どこかで見たような・・。そう、遠いむかし、どこかで・・・」
シロフクロウが、クックと、おじさんにむかって鳴く。
おじさん「(はっとして)おお、そうだった。この新しいクルミを、ナナちゃんたちに、とどけなくては・・」
ふくろうおじさん、翼を大きくひろげて、夜空へと、飛びたっていく。
◯森の奥(夜のおく)
森の奥には、高い木々が、ならんでいた。
少年は、木々の間を、すばやく進んでいく。
少年「な、なんだったんだ、あの、ふくろうみたいなの・・」
少年、いったん足をとめて、息を、ととのえる。
少年「きっと、暗いから見間違えただけだよな、うん、ゼッタイ。・・えっと、たしか、このへん・・」
視線の先に、白い岩があらわれ、われ目がはいった古いきりかぶが、そばにあった。
少年、息をのむ。
少年「たしか、これが・・」
少年、両手をひろげて、きりかぶの上に置くと、すうっと、大きく息をすう。
少年「たしか、あの言葉・・、よし」
少年、大きく口を、開ける。
少年「・・ひらけ、森のとびら」
その時、背後の草の中で、なにかが動いた。
しばらくすると、ゆっくりと岩が動き、大きなとびらが、姿をあらわした。
少年「す、すっげえ・・・・」
少年、震えながら、声を出す。
少年「やった、やっぱり記憶がもどっているんだ。どんどん思い出してくる・・・・」
少年、頭のうえに、両手をおく。
少年「やっぱり、若いっていいな・・って、なに言ってんだ、おれ・・」
少年、いちどあたりをうかがうと、とびらの中を進んでいく。
夜の風がふくと、草の中から、小さな2つのかげが頭をだし、やがて、光りはじめた。
背中に羽のはえた2つの光が、じっと、少年が入っていったとびらを、見ていた。
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<4ー5に、つづく>
