賢い人ほどネットワークビジネスとスピリチュアルから抜け出せない理由
ネットワークビジネスにハマるのは、学歴が低い人や騙されやすい人だというイメージがある。
でも、内部に身を置いてみると違うことがわかる。
8年間ネットワークビジネスに関わった私が見てきた限り、組織の中心にいたのは慶応、早稲田、上智、MARCHといった、いわゆる世間的には高学歴に分類される人たちが多かった。
そして彼らの多くが、ネットワークビジネスと同時に「引き寄せの法則」や「波動セミナー」といったスピリチュアルの世界にも深くハマっていった。
なぜ賢いはずの人間が、こういう世界に深くのめり込むのか。
そして一度ハマると、なぜなかなか抜け出せないのか?
今回は3つの切り口からこの構造を考えてみた。
「吸収力の罠」——学ぶ力が、組織の中心に引き込む
「物わかりが早い」
「穏やか」
「話の持っていき方がうまい」
「成長意欲が高い」
高学歴の人たちと関わったとき、私がいつも感じた印象だ。
そしてこれは普通に考えれば、どれも長所のはず。
でもネットワークビジネスの世界では、この長所が裏目になる。
よくあるパターンから話すと、ネットワークビジネスに入った高学歴の人は、まず「学ぼうとする姿勢」が目立つ。
結果を出したいから、上のリーダーが持っているノウハウを積極的に吸収しようとする。
物わかりが良くて要領もいいから、教えたことをすぐに実践できる。
そのうちに組織側から「この人は使える」と思われて、グループリーダーや組織の運営といった重要な役割を任されるようになる。
本人は「成長できている」「認めてもらえている」という手応えがある。
組織側は「優秀な人材が定着する」というメリットがある。
このお互いにとって都合のいい関係が、高学歴の人を組織の中間から上位にどんどん引き込んでいく。
私が実際に見た中で、一番印象に残っているのが京大卒の人物だ。
その人はある時期から、ネットワークビジネスで稼ぐことよりも、トップリーダーのコミュニケーション力を学ぶことが目的になっていた。
「この人のそばにいれば自分が成長できる」という気持ちで、今も関わり続けているらしい。
これを「盲目になっている」と言い切るのは難しい。
本人なりの理由や目的があるからだ。
でも外から見ると、ネットワークビジネスという場所に留まり続けるための「理由の作り直し」が起きている。
つまり吸収力の高さというのは、良い環境に置かれれば最大の強みになる。
でも巧みに作られた環境に置かれたとき、その同じ吸収力が、深くはまり込むための燃料になってしまう。
「論理で入って、感情で抜けられなくなる」——頭で納得したことが、出口を塞ぐ
どんな人でも、多くの場合は勢いや雰囲気に流されてではなく、自分なりに考えて納得した上で入っている。
「このビジネスの仕組みは理にかなっている」
「トップが大企業出身の元副社長なら信頼できる」
「実績のある社長についていくのは、長い目で見て合理的な判断だ」
そういった理由を積み重ねて、入会を決める。
入口がしっかりした理由であることは、一見すると健全に見える。
でもここが裏目に出ることもある。
理屈で入った人間は、辞めるときにも理屈を必要とすることが多い。
「辞める合理的な理由」が見つからない限り、辞めるという選択肢が頭に浮かびにくい。
そして組織の中に深く入り込むほど、辞める理由を自分で消していく理屈が次々と生まれてくる。
「今辞めたら、ここまでかけた時間とお金が全部無駄になる」
「この人たちを裏切ることになる」
「もう少し続ければ必ず結果が出る」
私が見ていた組織では、人望の厚い社長の存在がこの構造をさらに強めていた。
「あの社長についていくことは、徳を積むことだ」
「本物のリーダーに出会える機会は人生でそう多くない」
そういった考え方が組織全体に広がっていたため、ビジネスとしての損得よりも「この人のそばにいること自体に意味がある」という感情が、辞める理由を上回り続けた。
結果として、その組織では会社がネットワークビジネスとしての活動を終了すると発表した、最後の日まで残っていた人が多かった。
自分から辞めたのではなく、環境がなくなるまで居続けた。
感情が出口を完全に塞いだ状態の、典型的な末路だ。
理屈で入り、感情で抜けられなくなる。
そしてその感情を正当化するために、また理屈が使われる。
このループが出来上がったとき、簡単には環境を抜けられなくなっている。
「結果が出ない空白を、スピリチュアルが埋める」——理屈の限界が、神秘への扉を開く

理屈で動いていた人が、行き詰まったとき何が起きるか。
ネットワークビジネスで結果が出ない時期は、誰にでも必ず来る。
やり方を変えてみる、会う人の数を増やす、話し方を磨く。
それでも結果が出ないとき、こういったアプローチは限界を迎える。
「正しいことをやっているのに、なぜ結果が出ないのか」
この部分に入り込んでくるのが、多くの場合スピリチュアルだ。
私が見てきた限り、高学歴の人がスピリチュアルに流れるパターンは二種類あった。
一つは、もともとそういった考え方が好きで、ネットワークビジネスを始める前からスピリチュアル的な世界観を持っていたケース。
もう一つは、結果が出ない時期にあれこれ試す中で、「引き寄せの法則」や「波動エネルギー」という概念に出会い、そこに答えを求めていくケースだ。
「〇〇の法則」
「言霊」
「波動を整える」
こういった考え方は、理屈では説明できない領域に答えを置く。
結果が出ないのはやり方の問題ではなく、自分の内側から出るエネルギーの問題だ、という解釈を提供する。
行き詰まった人間にとって、これはある種の救いになる。
自分を責めなくて済むからだ。
ひとつ象徴的な出来事があった。
私がいた会社の社長が、最終的に自ら「波動セミナー」を開くようになった。
実績のある人間が、スピリチュアルに行き着く。
これは矛盾ではなく、むしろ自然な流れなのかもしれない。
理屈で説明できない結果の差を、理屈の外にある考え方で補おうとする。
その延長線上にスピリチュアルがある。
高学歴の人ほど、理屈の限界を自分で理解できる。
だからこそ、理屈が届かない領域に踏み込んでいくのかもしれない。
なぜ「高学歴」なのか
なぜ高学歴の人に、この傾向が強く出るのか。
一言で言えば「教養の差」ということだ。
論理的に考え、自らを納得させる力、そして未知の知識を吸収しようとする姿勢。
これらは、高学歴という環境が与えてくれた「教養」の現れだ。
良い環境にいれば、これらの力は本人にも周りにも価値をもたらす。
でも、マルチの環境に置かれたとき、同じ力が深くはまり込むための燃料にもなる。
「自分の頭で考えれば大丈夫」という錯覚を生み、抜け出せなくなるための理屈を作り出し、スピリチュアルへ傾倒するきっかけにもなる。
見落とせないのは、本当のトップ層、つまり会社を作って運営して利益を得る側には、むしろ高学歴は少ないかもしれない。
大学・高校を中退した元経営者が多かったという印象だ。
組織を設計して儲ける側には学歴フィルターがなく、その組織の中で一生懸命学んで働く側に高学歴が集まる。
この構造は、どのマルチ会社に属しても変わらないと考えている。
終わりに
高学歴の人がネットワークビジネスやスピリチュアルにハマることを、「頭がいいはずなのに」と言う人がいる。
でもこの話を通じて見えてくるのは、「頭がいいはずなのに」ではなく、「頭がいいからこそ」という構造だ。
吸収力が高いから深く組み込まれる。
頭で考えるから自分で出口を塞ぐ。
理屈の限界を知っているからスピに向かう。
これは能力の問題ではなく、環境の作り方の問題だ。
巧みに設計された環境は、人間の長所を利用する。
だからこそタチが悪く、だからこそ抜け出すのが難しい。
「なぜあの人がハマったのか」ではなく、「どういう仕組みがそうさせたのか」を考えることが、結果として深くハマらないための対策だったりする。
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