見出し画像

なぜ男性は女性より早く死ぬのか?早く死ぬ仮説を7つ紹介(Y染色体シリーズ4/4)

前回はY染色体が老化により喪失することが男性の寿命が短くなる理由の一つという記事を書きました。

男性の寿命が女性よりも短い理由はY染色体だけではありません。
X染色体にもその理由があります。
また、XY染色体でないZW染色体を持つメスZW型異なる染色体を持ちますが、オスより短命です。

今回は、なぜ男性は女性より早く死ぬのか?というテーマで解説しましょう。


A.世界共通の不思議な現象

世界中のほぼすべての国で、女性の平均寿命は男性より長いことが知られています。
例えば日本では男性約81歳女性約87歳であり、約6年の差があります。
この現象は人間だけでなく、哺乳類全体でも約72%の種でメスの方が長生きであることが確認されています。
したがって、この寿命差は文化や社会だけでなく、生物学的な要因が関係している可能性が高いと考えられています。
ではなぜこのような差が生まれるのかについて、複数の仮説が提唱されています。

B.男性の寿命が短い理由に関する主な仮説

ここでは従来の説と最新の研究を含め、代表的な仮説を整理します。
まず前回の記事の復習をかねて、Y染色体喪失(mLOY)から解説しましょう。
比較的新しい仮説から古い仮説の順番になっています。

なお、この記事で「〇〇仮説」と書いているものは、私が説明用に分かりやすいと思い、勝手に表現したものです。
(私の記事をパクる人がいたのですが、私がオリジナルで表現したものまでパクるため、念のため記しておきます。
かといって、章題だけ変えてパクるのもやめて下さい)

1.Y染色体喪失(mLOY)仮説

近年になって特に注目されているのが、Y染色体喪失(mLOY)です。(読み方はエムロイ
これは加齢とともに男性の細胞の一部からY染色体が失われる現象です。
この現象は特に血液細胞で多く観察され、年齢が上の人ほど増加していることが知られています。
研究ではmLOYが心血管疾患アルツハイマー病がん感染症の重症化と関連する可能性が指摘されています。
Y染色体には免疫応答炎症制御に関与する遺伝子が含まれています。
そのためmLOYは男性の寿命が女性より短い理由の一つである可能性があると考えられています。

2.X染色体保護仮説

遺伝学的な観点からはX染色体の数の違いが重要とされています。
女性X染色体2本持つのに対し、男性1本しか持っていません。
そのため女性では有害な遺伝子変異があってももう1本のX染色体が機能を補うことができます。
しかし、男性ではその補完ができないため、劣性変異の影響が直接表現型に現れやすくなります。
この考え方は「Unguarded X仮説(守られていないX仮説)」と呼ばれています。

3.異型性染色体仮説

進化生物学の研究からは、性染色体の構造自体が寿命に影響する可能性が示されています。
哺乳類ではオスがXYであり、異なる染色体を持つ性となります。
一方、鳥類ではメスZWであり、こちらが異なる染色体を持つ性となります。
研究では異なる染色体を持つ性の方が寿命が短い傾向が示されています。
このことから非対称な染色体による遺伝的不安定性有害変異の蓄積が関与している可能性が指摘されています。

4.性ホルモン仮説

性ホルモンの違いも重要な要因と考えられています。
女性ホルモンであるエストロゲンには抗酸化作用心血管保護作用があることが知られています。
その結果、女性では動脈硬化心血管疾患の発症が遅れる傾向があります。
一方で、男性ホルモンであるテストステロン血圧上昇心血管リスク増加との関連が指摘されています。
このようにホルモンの作用の違いが寿命差に影響している可能性があります。

5.免疫機能仮説

免疫機能の差も男女の寿命差に関係していると考えられています。
女性は男性より抗体産生が強い、そして感染症に対する抵抗力が高いことが報告されています。
これはエストロゲン免疫細胞に作用し、免疫反応を高めるためと考えられています。
一方で女性は免疫が過剰になりやすく、自己免疫疾患が多いという特徴もあります。
つまり女性の免疫は強力ですが、その分だけバランスの影響も受けやすいと考えられます。

6.進化戦略仮説

進化の観点からは、オスとメスは異なる戦略で進化してきたと考えられています。
多くの哺乳類オス繁殖競争が激しく、闘争リスクの高い行動を取る傾向があります。
そのため長く生きることよりも繁殖で成功することが優先されてきた可能性があります。
この結果として攻撃性体の大きさホルモンバランスなどが進化しました。
しかし、これらの特徴はエネルギー消費の増大ストレス負荷の増加を伴い、同時に寿命を短くする要因にもなり得ます。

7.生活習慣仮説

最も分かりやすい説明は、生活習慣の違いです。
男性は女性に比べて喫煙率が高く、飲酒量が多く、危険な職業に従事する割合が高い傾向があります。
また、事故自殺など外的要因による死亡率も男性の方が高いことが知られています。
このため長い間、男性の寿命が短い理由は生活習慣によるものと考えられてきました。
しかし、他の哺乳類でも同様の寿命差が見られるため、この説だけでは十分に説明できないとされています。

まとめ

男性の寿命が女性より短い理由単一でないということです。
以前から、生活習慣性ホルモン免疫機構進化戦略、そして複数の要因が重なっていると考えられてきました。
特に近年の研究により、染色体レベルの変化が健康や老化に影響する可能性が明らかになりつつあります。
今後はこれらの要因を統合的に理解することが重要になると考えられています。
男性の寿命差の研究は現在も進んでおり、今後さらに新しい知見が明らかになることが期待されています。

参考資料(ただし、ごく一部)

本記事は一部を下記の書籍を参考にしています。
ただし、本書に載っているのはごく一部で、Y染色体喪失(mLOY)仮説についてぐらいです。
男女の寿命の性差も性ホルモン仮説を中心に解説しています。
X染色体保護仮説異型性染色体仮説についても特に言及していませんでした。(本書はY染色体がテーマなので)
それらの仮説は医療サイトなどを参考にしてこの記事を作成しました。
本書をきっかけに今回の記事のため調べましたので、参考資料としています。
アイキャッチ画像に使った理由はシリーズ4記事目だからです。

最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は4月6日(月)午前10時です。
XXY型は男性か女性か?の話です。
そんなこと知ってるよという人も多いかと思いますが、他の染色体パターンの話もします。

少しでもご参考になれば、スキを押して下さい。

この記事が参加している募集