2つのDNAを持つキメラは三毛猫だけでなく人間にも存在!DNA鑑定はどうなる?(キメラシリーズ1/5)
(アイキャッチ画像 左:ギリシア神話の怪物キメラ 右:キメラの可能性のある三毛猫 2枚ともpixabayのフリー画像)
以前の記事でオスの三毛猫はほとんど性染色体3本のXXY型と書きましたが、さらに珍しいケースで他にもいます。
それがキメラで、2つ以上のDNAが一つの生物に存在する場合です。
今回はまたオスの三毛猫にも触れながら、キメラについて解説します。
なお、キメラは人間でも存在が確認され、研究されています。
日経BPの記事でキメラ猫の写真がありましたので、リンクしておきます。
なお、この猫は三毛猫でなくニ色の毛です。
しかも、白い毛が無いのに金目銀目(オッドアイ)でもあるという不思議な猫です。
(金目銀目はW(ホワイト)遺伝子が必要で、W遺伝子は1つでもあると、必ず全部または一部の毛を白くするため)
キメラ三毛猫は普通のモザイク三毛猫と違い、左右対称のブロック状模様で境界がはっきりと分離しています。
それでアイキャッチ画像にそのような猫を選びました。
1.生物は1つのDNAでできていると限らない
私たちは通常、生物は1つのDNAでできていると考えています。
DNA=遺伝子の情報を記録している物質そのもの
遺伝子=DNAにある遺伝情報(機能単位)
(DNAが入れ物で遺伝子が中身と考えると、イメージできるかもしれません)
もし、DNAが1つでできていないと、DNA検査やDNA鑑定の結果が必ずしも信用できないものになってしまいます。
しかし、生物学的には、この前提が必ずしも正しくない場合が存在します。
体の部位や臓器ごとに異なるDNAがあるケースです。
こうした現象の代表例がキメラです。
そして、この概念は三毛猫の毛色やオスの三毛猫という話とも密接につながっています。
キメラとは何かについて、モザイクとの違いに触れながら解説します。
2.キメラとは2つの命が1つになる現象
キメラとは分かりやすく言うと、2つの命が1つになる現象です。
厳密には、異なる受精卵に由来する細胞が1つの個体の中に共存している状態またはその個体を指します。
キメラという言葉は、ギリシャ神話に登場する怪物でライオンの頭・ヤギの胴体・ヘビの尾を持つ存在に由来します。

つまり、本来は 異なる生物が合体した存在という意味で使われていました。
そこから転じて、生物学では異なる遺伝的起源を持つ細胞が混在する個体を指す言葉になりました。
最も典型的な発生のメカニズムはパターンは以下です。
(本来は二卵性双生児になるはずの)2つの受精卵が初期発生の段階で1つの個体として融合する。
理論的には3つ以上の受精卵の融合の可能性があります。
結果として、体の部位や臓器ごとに異なるDNAを持つ個体になります。
3.モザイクは1つの受精卵からの変化
キメラとよく混同されるのが、モザイクです。
モザイクとは1つの受精卵から生じた細胞の中で、途中から遺伝子変異が起こり、異なる細胞集団ができる状態です。
整理すると……
キメラは2つ以上の受精卵から生じるのに対し、モザイクは1つの受精卵から生じます。
キメラは複数の遺伝子があるのに対し、モザイクは遺伝子が同じですが変異が有ります。
イメージとしてはキメラは合体、モザイクは変化になるでしょう。
キメラは最初から別物で、モザイクは途中で変化した同一個体です。
4.三毛猫との関係:モザイクとキメラの違い
ここで三毛猫との関係でモザイクとキメラの違いを整理します。
三毛猫はキメラっぽい見た目ですが、実際にはほとんどがモザイクです。
① モザイクの三毛猫
三毛猫の毛色(黒・茶・白)X染色体の不活性化によって生じます。
メカニズムは以下の通りです。
メスでは細胞ごとにどちらかのXが不活性化します。
黒の遺伝子が働く細胞と茶の遺伝子が働く細胞がランダムに分かれます。
結果として まだら模様(モザイク模様)になります。
② キメラの三毛猫
一方、キメラの三毛猫は黒色の猫の受精卵と茶色い猫の受精卵が融合して生じます。
この場合のモザイクと比べて次の特徴があります。
模様が左右対称に近い
模様がブロック状になる
色の境界が比較的はっきりと分離している
遺伝子解析すると、色の違う細胞は明確に異なる個体と判明する
アイキャッチ画像の三毛猫がキメラかは証明できませんが、実際のキメラの三毛猫はこのような感じかもしれません。
5.オスの三毛猫との関係:XXYとキメラ
以前の記事に書いたオスの三毛猫はさらに特殊です。
オス三毛猫は主にXXY(クラインフェルター)とキメラのいずれかで説明されます。
① モザイクのオス三毛猫
X染色体が2本ある
三毛の色分けが可能
繁殖能力はほぼない
② キメラのオス三毛猫
・黒のX染色体の細胞と茶のX染色体の細胞がある
・より不規則または分離した模様
・条件により繁殖能力はあるが、少ない
6.人間でもキメラが存在
人間でもキメラは存在します。
キメラが問題になる代表的な事例は次の2つです。
犯罪捜査
親子鑑定
犯罪捜査ではDNA鑑定をしても犯行現場と犯人のそれぞれのDNAが一致しないという結果が出ます。
親子鑑定では例えば母親がキメラの場合、体のどの部位のDNAを調べるかで結果が変わります。
母親の子宮と皮膚のDNAが異なる場合、皮膚のDNAで鑑定すると親子関係を否定される場合があります。
人間のキメラについては、血液キメラといって2つの血液型を持つケースがありますので、次回はそれについて解説します。
まとめ
キメラとモザイクは似ているようで本質的に異なる現象です。
重要なポイントを整理します。
キメラは複数の受精卵の融合
モザイクは1つの受精卵からの変化
三毛猫の多くはモザイク
まれにキメラ由来の三毛猫も存在する
オス三毛猫はXXYまれにキメラ
人間にもキメラは存在し、DNA鑑定に影響する
キメラという現象は1個体が1つのDNAという常識の例外を示しています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
次回は5月11日(月)午前10時です。
キメラの続きで、血液キメラといって2つの血液型が一人の人間に存在するケースについてです。
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