パンの香りに、記憶が追いつかなかった|ペンギンベーカリー吉祥寺店
扉が開くたびに、甘い香りがふわっと外にこぼれていた。
吉祥寺らしい、少しおしゃれでやわらかい空気。
その中に、そのパン屋はあった。
土曜日の昼、店の前には10人ほどの列。
入場規制をしていたおかげで、騒がしさはなく、
むしろ「ちゃんと選べそうだな」と思えたのを覚えている。
待っている間にLINEクーポンの案内があって、少し得をした気分になる。
こういう小さな出来事が、その日の印象をやわらかくする。
10分ほどで店内へ。
人は多くない。
焦らなくていい。
パンを一つひとつ見て、ちゃんと迷える。
それが、思っていたよりもずっとよかった。
――後で後悔しない買い方ができた、と思う。
ただ、お昼時だったからか、
目当てにしていた食パンはもうなかった。
少しだけ、惜しい。
気づけば、トレーの上にはいくつもパンが乗っていた。
最初は一つか二つのつもりだったのに、
選んでいるうちに、少しずつ増えていく。
どれも違って、どれもちゃんと美味しそうで、
「あとで後悔しないように」と思うほど、手が止まらなくなる。
結局、気になったものをいくつか持ち帰った。
焼きたてではない。
2時間ほど経っている。
それでも、
袋を開けたときに、あの香りが少しだけ戻ってきた気がした。
まず印象に残ったのは、カレーパン。
外側はしっかりとした食感で、中には具がぎっしり。
噛むほどに味が広がる、満足度の高い一品だった。
そしてもうひとつ、シナモンのドーナツ。
まず驚くのはその大きさ。
一般的なものよりも一回り大きく、手に取った時点で期待が上がる。
一口食べると、生地はずっしりとしていて、
シナモンの甘さと香りがしっかり残る。
これひとつで、しっかり満たされる感覚があった。
他にもいくつか。
濃厚チーズ蒸しパンは、
どこか懐かしさのある見た目なのに、味は名前の通りしっかり濃厚。
よく知っているはずの味に、少しだけ違いを感じる。
チョコ三重奏は、その名の通り、
チョコチップ、生地に練り込まれたチョコ、
そして中のクリームと、層になって味が広がっていく。
チョコ好きなら、素直に嬉しい構成だと思う。
もちもちカマンベールは、温めることで印象が変わる。
チーズの香りが広がって、一口目からしっかり濃厚。
名前の通り、生地のもちもち感も印象的だった。
クリームパンは王道。
割ると中から出てくるカスタードは卵の風味がしっかりしていて、
甘さも強すぎず、ちょうどいい。
ミニバケットは、あえてのサイズ感がよかった。
いくつも買ったあとでも、無理なく手が伸びる。
価格は200円台から300円台が中心で、
気づけばいくつも手に取っていた。
どれも手に取りやすく、「もう一つだけ」と思ってしまうちょうどいい距離感だった。
今回は食パンを買えなかったから、もう一度行く理由がちゃんと残っている。
たぶん次は、もう少し早い時間に。
そのときにまた、
同じように迷えたらいいと思う。
