なぜ100年前に、ウェーベルンのような音楽が生まれたのか
ウェーベルンを聴くと、まず不思議なのは「新しい」ことではありません。
なぜ100年以上前に、こんな音楽を作った人がいたのか。
1910年代には、シベリウスもまだ交響曲を書いていました。ストラヴィンスキーもいました。ドビュッシーもいました。
つまり、20世紀になったから音楽が一斉に無調へ進んだわけではありません。
ウェーベルンは、いくつもあった道の中から、かなり特殊な道を選んだのです。なぜでしょうか。
大きかったのは、まずシェーンベルクです。
ウェーベルンはウィーンでシェーンベルクに学びました。調性を使わなくても音楽は作れる、という実験がすでに目の前で始まっていました。
しかし、シェーンベルクの弟子なら誰でもウェーベルンになったわけではありません。
ウェーベルン自身が、音楽を極端に短く、濃くする方向へ進みました。
長い旋律を歌わせるより、一音。
大きな展開より、数秒の変化。
音が鳴っていない沈黙まで音楽として扱う。
《管弦楽のための5つの小品 Op.10》などを聴くと、それがよく分かります。
しかも面白いことに、ウェーベルンは過去を捨てた人でもありません。
ルネサンス音楽のポリフォニーを研究した音楽学者でもありました。
つまりウェーベルンの音楽は、
昔の音楽を深く研究した人が、シェーンベルクという急進的な環境に入り、もともと持っていた「極端に凝縮する性質」を押し進めた結果
と考えると分かりやすいと思います。
だからシベリウスと同じ時代に存在できたのです。
時代そのものがウェーベルンを生んだのではありません。
時代が用意した新しい可能性を、ウェーベルンという一人の人間が異常なほど遠くまで押し進めた。
これなら、100年前にあの音楽が突然現れたことも、少し納得できます。
そして100年以上たった今でも奇妙に聞こえるのは、当然なのかもしれません。
そもそも当時から、普通の音楽ではなかったのです。
▶︎ ウェーベルン《管弦楽のための5つの小品 Op.10》
https://www.youtube.com/watch?v=iHWDpUF8Zj4
▶︎ シベリウス《交響曲第4番》
https://www.youtube.com/watch?v=YK_WJ9OkJsM
ほぼ同じ時代の音楽として続けて聴くと、その違いがかなり面白く感じられます。
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