義母:個人主義社会の中で生きる
義母は、今90歳。
1人で暮らしている。
伝い歩きしかできない。
10m体を動かすだけで、ゼーゼーと言い出す。
でも杖をつくなんてみっともない行為はできないから、外出しない。
買い物は行かない、というより行けない。
自分の体は自分が1番よく知っている、と言い張り、医者へ行かない。
調子はいつもよくない。
介護認定はさせない。
「私はボケていなくて幸せだ」といつも言うが、言ったことはすぐ忘れる。
支払いなどの郵便物は、理解不能のため、無視。
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暑すぎる日は、動くと暑いから、
寒すぎる日は、ベッドが気持ちいいから、
夕方まで寝室で横たわっているらしい。
日々の買い物は、お隣さんがやってくれるらしい。
現金の引き出しもお隣さんがやってくれるという。
自分のカードと暗証番号を知らせているらしい。
彼女の銀行関係の後見人はとりあえずうちの旦那である。
重たいものは、息子である旦那が宅配を頼んでいる。
ずっと同じ町に住み続けているが、彼女の知り合いはどんどん逝き、1人残されている。
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コロナ禍後間もなくしてからだ、嫁の私が夜な夜な彼女のうちにやってきて、色々なものを隠したり、冷蔵庫、冷凍庫に変なものを置いていく、と言いだした。
まだらボケで記憶が飛んでいることを認めたくないために、嫁の私がやった仕業だ、と思い込むようになったようだった。
冗談はやめてほしい。彼女のうちまでは片道70km。そんな暇人じゃない。私は義母と関わることをやめた。そして5年が経った。
この頃、旦那と次男は二週間に一回ほど義母を訪ねる。顔を見ても、あまり嬉しそうではないらしいが。
そしていまだに、誰か(私)がまた嫌がらせをする、と口にするそうだ。
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一時期トイレ掃除もままならず、かなり酷かったとは、長男の報告。彼はごくたまにだが、子連れで彼女を訪問し、トイレなどをささっと綺麗にすると言っていた。
我が長男は信頼している義母だが、シングルファザーの彼は忙しすぎる。
定期的に彼女の面倒までは見られない。
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そんな義母には、何かの時のための救急システムを契約している。腕時計のようなものに大きいボタンが付いているので、それを押せばいつでも救急隊員が駆けつけてくれるのだ。
本人は、それをいつも身につけていると言うが、果たして本当だろうか。
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どうしてそんな老人に一人暮らしをさせているのか。
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同居を嫌がり、介護認定をさせず、医者にも行こうとせず、自分はまだまだ大丈夫、と思っている大人。まだらボケとはいえ、とりあえずは1人で生きている。
本人が限界を感じるまで手の打ちようがないという旦那と義理姉。
無理やり騙して介護施設?
ドイツでは無理だな。
個人の意思が最大限尊重される社会だ。
が、個人の意思を尊重するとは、ある意味、見て見ぬふりができる気楽な社会だとも言える。
一体彼女は幸せなんだろうか?
