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(株)高田工業所 溶接競技会で日本一になるまでの軌跡 「欠かせないのは友情・努力・継続」

20250821

成長止めず日本一になった
小林和樹さん

溶接は強いアーク光で作業の様子を肉眼で見ることができず、そのため、技能教育が最も難しい一つとされている。そんな課題に向き合い、自社・他社問わず、多くの溶接士に技能習熟に向けたアドバイスを行うのが(株)高田工業所の小林和樹さんだ。

今回のARC MASTERS(アークマスターズ)では、2022年度の全国溶接技術競技会で国内30万人の溶接士の頂点に立ち、現在も溶接士として成長を続ける小林さんに「溶接士の成長」について話を聞いた。

今や会社の顔となった溶接士、小林和樹さん

溶接士の成長の本質語る

2022年度の全国溶接技術競技会の被覆アーク溶接の部で、国内30万人の溶接士の頂点に立った小林和樹さん。満足したら成長が止まってしまうと考えている小林さんは、「溶接日本一」などと声をかける度に、「仲間に恵まれた」と謙虚な姿勢をみせる。

溶接技能は一人では習熟できないとする小林さんには、「21年度の全国溶接技術競技会で後輩に負けた時」「初めて現場溶接を一人で担当した時」という二つのバックグラウンドがあり、これらのポイントが自身の溶接技能を大きく成長させるタイミングになったという。

全国溶接競技会の表彰を受ける小林さん

小林さんは、22年度の全国溶接競技会で、競技会本番まで残りわずか1週間のタイミングで、これまで練習してきた溶接条件を新たに捨て、組みなおした。

見直したのは薄板の中間の邪魔板でアークを中断し棒継ぎを行う箇所だ。

「従来はアークを再開する際に、新しい溶接棒に交換していたが、中断前の溶接棒をそのまま使ってアークを再開する工法に変更した。溶接棒が途中で足りなくなる危険はあるが、溶接棒に残った熱で棒継ぎ箇所が溶込みやすくした」という。

直前まで溶接条件を工夫し続け勝利した小林さん

競技会直前での条件変更は失敗のリスクをおおいに伴うが、理由は脳裏から離れない21年度の全国大会だった。会社の後輩である井上裕貴(ゆたか)さんとともに全国溶接技術競技会に出場し、井上さんが2位、小林さんが3位、後輩の順位に一歩及ばなかった。

小林さんは溶接条件をコンマ数ミリ単位で試し続け、整えなおした溶接条件を反復して染み込ませてから本番に臨んだ。

小林さんは、「たくさんの仲間と溶接条件について話をしながら調整を最後まで怠らなかったのが優勝に繋がった。しかし完璧な出来栄えだとは思っておらず、まだ成長の余地はある」と話す。

アーク溶接を行う小林さん

続いて、初めて現場溶接を一人で担当した時のこと。高田工業所はプラントの配管などを溶接技能で建設している。プラントは大勢が関わる工事となり、一人の溶接士のミスで工期を伸ばすわけにはいかず、手戻りは許されない。

実は小林さんは、直前まで手戻りがゼロにならず、先輩溶接士が修正にあたっていた。しかし、その日の小林さんは、先輩溶接士のOJTを受けることができず、高圧ガス配管の現場溶接を一人で担当しなければならなかったのだという。

小林さんがいつも頼りにしている先輩社員

不安が心を渦巻く中ではあったが、落ち着いて溶接トーチを握った結果、小林さんの作業に手戻りは起こらなかった。小林さんは「やる気が空回りして溶接棒を押し込み過ぎていたのだと気が付いた。先輩からのサポートを受けられない状況で、余計な思考と力みがなくなり、繰り返し練習してきた成果が表れたのではないだろうか」と振り返る。

何かあった時に頼ることができる先輩溶接士が居ることのありがたみを痛感した小林さんは、「作業としては一人でも、一人では技能の習熟に限りがある。溶接技能を通じて関わった人がいたから磨かれていくのだ」と話す。

今では溶接を教える側にもなった小林さん

溶接技能が大きく華開くタイミングは人ぞれぞれだが、小林さんの溶接技能が華開いたのは、いずれも「仲間と積み上げてきた溶接条件が自身に最適化された時」だ。遮光面を被り、一人で行う溶接作業だが、小林さんにとって、技能が習熟するには、ライバルや先人、時には後輩といった仲間が欠かせないのだ。

コロナ禍以降、インターネット環境の整備によってリモートワークが普及した。一方で、入社から17年、高田工業所で仲間と溶接トーチを握り続け、人の生活には欠かせないインフラ設備を溶接技能で支えてきた小林さんの言葉を聞くと、「仲間」「継続」「友情」「努力」「勝利」といった、長い間、顔を突き合わせることでしか生まれないストーリーの可能性を信じてみたくなる。

仲間・友情・努力・勝利・継続が大切だと
話す小林さんの仲間

【小林さんの気になる溶接技能者はいますか?】
「溶接について相談を受けことをきっかけに、今では一緒に溶接技能を高めあう仲間であり、ライバルでもある和歌山県を代表する溶接士、日鉄テックスエンジ(株)の片平昴太さんを紹介してください」

(株)高田工業所日鉄テックスエンジ(株)

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