見てはいけない
最初は、ただの興味だった。
深夜二時。眠れなくて、なんとなくスマホをいじっていたときだった。SNSのおすすめ欄に、見慣れないライブ配信が流れてきた。
タイトルは——
「絶対に見てはいけない」
ふざけているのかと思った。でも、なぜか指が止まる。
視聴者は、たったの3人。
逆に、それが気味悪かった。
私は、タップした。
画面は暗かった。ほとんど何も見えない。ただ、微かにノイズのような音だけが流れている。
コメント欄には、一言だけ書かれていた。
「戻れなくなるぞ」
誰も返信していない。
しばらく見ていると、画面の奥に、何かが映った気がした。
人影。
いや、気のせいかもしれない。
私はスマホを近づける。
その瞬間、画面が急に明るくなった。
——部屋だ。
どこかの部屋の映像。
散らかったテーブル、ソファ、カーテン。
見覚えがある。
いや、そんなはずない。
私は、ゆっくりと周りを見渡した。
自分の部屋と、同じだ。
心臓が嫌な音を立てる。
画面の中の部屋には、誰もいない。
なのに、配信は続いている。
コメントが一つ増えた。
「気づいた?」
私は思わず、コメントを打ち込んだ。
「これ、どこですか?」
すぐに返信が来た。
「あなたの後ろ」
——ゾッとした。
反射的に振り返る。
もちろん、誰もいない。
いるはずがない。
なのに、背中に視線を感じる。
恐る恐る、もう一度画面を見る。
そこには——
“私”が映っていた。
スマホを持って、今と同じ姿勢で立っている。
ただ違うのは、表情だった。
画面の中の私は、ゆっくりと笑っている。
私は笑っていない。
なのに、画面の中の私は、はっきりと笑っている。
コメントがまた流れる。
「見ちゃったね」
その瞬間、スマホが震えた。
通知。
新しいライブ配信。
タイトルは——
「次は、あなたが映る番」
視聴者数は、1。
そしてその一人は、
今の“私”だった。
