【30~60代の方へ】 80歳を過ぎても元気な人は、若い頃から健康を意識していたのか?
こんにちは、ありちゃん先生です。
はじめに
あなたの周りの高齢者、いきいきしていますか?
突然ですが、こんなことを考えたことはないでしょうか。
「自分も年を取ったら、どんな身体になっているんだろう?」
40代、50代、60代くらいになると、親や身近な高齢者の姿を見て、そんなことを考える機会もあるかもしれません。
今回は、特に30~60代の現役世代の方に向けて、健康について少し考えていただきたいと思います。
私は普段、治療院でさまざまな年代のお客様の身体を見ています。
その中で、最近ふと感じることがありました。
私の治療院には、現在80歳以上のお客様が6名ほど、定期的に通われています。
もちろん、これまでに80歳を超えて通われていた方は他にもいます。
不定期になった方もいますし、残念ながらお見えにならなくなった方もいます。
そんな中で、現在も定期的に通われている80歳以上の方々には、ある共通点があることに気づきました。
それは、健康に対する意識が、とても高いことです。
「ここが悪いから何とかしてほしい」
というだけではなく、普段から身体の状態を気にし、健康について考えておられます。
80歳を過ぎても、ご自身で車を運転して治療院まで来られます。
もちろん、健康意識が高いから元気に過ごせている、と断定することはできません。
若い頃からどのような生活を送ってこられたのか、詳しく確認したわけでもありません。
ただ、長年お客様と接していると、言葉の端々から健康に対する意識の高さが伝わってきます。
そんな方々を見ていると、私はふと思うのです。
こうした健康への意識は、高齢になって突然身についたものではなく、若い頃から自分の身体や健康について考えてきたことが、長い年月を経て今の身体につながっているのではないか、と。
もちろん、これは私が臨床の中で感じている一つの仮説にすぎません。
では、この仮説は科学的に見ても、何か裏付けられるものなのでしょうか。
今回は、そこを少し調べてみることにしました。
60~70代のお客様から聞く言葉
一方、60~70代のお客様を見ていると、少し違った傾向を感じることがあります。
もちろんすべての方に当てはまるわけではありませんが、80歳以上で現在も定期的に通われている方々と比べると、健康に対する意識はそこまで高くないように感じることがあります。
すでに身体の不調が出てから、治療院に来られる方も少なくありません。
そんな方々からよく聞くのが、
「こんな風になるとは思わなかった」
という言葉です。
長年さまざまなお客様の身体を見てきましたが、この言葉は決して珍しいものではありません。
若い頃には、今の自分の身体を想像していなかった。
仕事をして、家庭を持って、毎日を忙しく過ごす中で、多少身体が痛くても
「そのうち治るだろう」
「まだ大丈夫だろう」
とそのまま過ごしてしまう。
そして何十年か経ったときに、思っていた以上に身体が変化していることに気づく。
もちろん、年齢を重ねれば誰でも身体は変化します。
ただ、私はここで一つ考えてほしいのです。
自分が60代、70代になったとき、どんな身体でいたいでしょうか。
さらに若い世代を見ると
では、40代、50代、そして30代くらいの方はどうでしょうか。
この年代になると、まだ大きな不調を感じていない方もたくさんいます。
肩も腰も、それほど痛くない。
普通に仕事もできるし、日常生活にも困っていない。
そうすると、健康について深く考える機会もなかなかありません。
「今は元気だから大丈夫」
「何か症状が出たら、そのとき考えればいい」
そんな考え方になってしまうのも、無理はないと思います。
私自身も、若い頃から健康について今ほど考えていたわけではありません。
だからこそ、今回このnoteを書こうと思いました。
まだ大きな不調がなく、健康について深く考える機会も少ないため、
「不調が出たら治療する」
という考え方になりやすい。
しかし、不調が出てから健康を考えるのではなく、元気なうちから考えることが重要なのではないか。
そんな仮説が、私の中に浮かんできました。
将来、80歳を過ぎてもいきいきと生活できる人を増やすためには、若い頃から健康を意識することが大切なのではないか。
もちろん、私の治療院に通われている80歳以上のお客様が若い頃どのような生活を送ってこられたのかを、詳しく調べたわけではありません。
あくまでも臨床の中で感じた仮説です。
ただ、せっかくこうした疑問を持ったのなら、科学的なエビデンスから確かめてみたくなりました。
そこで今回は、中年期からの生活習慣や健康行動が、その後の健康状態とどのように関係しているのかを調べてみました。
科学的エビデンスを調べてみる
調べるにあたっては、特定の一つの病気だけを見るのではなく、将来の生活に大きく関係しそうなものを幅広く見ていくことにしました。
たとえば、身体活動はその後の身体機能とどのような関係があるのか。
運動習慣は、年齢を重ねたときのフレイルと関係するのか。
食生活や体重、喫煙、飲酒といった生活習慣はどうか。
さらに、認知機能や心血管疾患、死亡リスクなどとは関係があるのか。
そして最終的に、「健康で自立した生活を長く続けること」と中年期の生活習慣にはどのような関係があるのか。
こうした視点から研究を見ていきました。
ここで一つ大切なことがあります。
今回調べたいのは、「健康意識が高い人は長生きするのか」という単純な話ではありません。
健康意識というものは、数字にして測ることが難しいからです。
そこで、健康を意識することによって実際の行動が変わった場合、その行動と将来の健康状態にはどのような関連があるのか、という視点で見ていきます。
身体を動かす
食生活を見直す
タバコを吸わない・やめる
飲酒量を適切にする
体重や血圧
血糖などを管理する
こうした一つひとつの行動が、何十年後の身体とどのように関係しているのかを調べてみると、興味深いことが分かってきました。
身体活動について
まず分かりやすいのが身体活動です。
Whitehall II研究では、中年期の身体活動が、その後の身体活動とも関連していることが報告されています。
平均54歳の時点で身体活動量が多かった人ほど、13年後の平均66歳の時点でも、客観的に測定した身体活動量が多い傾向がありました。
つまり、若い頃の身体活動の習慣は、その後の生活にもある程度引き継がれていたということです。
さらに、60~83歳を対象にした別のWhitehall II研究では、身体活動量が多い人ほど、認知機能や運動機能、呼吸機能が良好で、障害や主要な慢性疾患などがない「successful ageing」と関連していました。
「若いうちから身体を動かしている人は、その習慣を後の年代にもつなげやすい」
そして
「年齢を重ねた後の良好な健康状態と、身体活動には関連がある」
この二つの研究結果は、今回のテーマを考えるうえでとても興味深いものです。
もちろん、これだけで
「若い頃に運動していれば80歳になっても元気でいられる」
と言い切ることはできません。
しかし少なくとも、今の身体活動や生活習慣を、将来の自分とは無関係なものとして考えることはできない、ということが見えてきます。
フレイルについて
さらに今回のテーマと非常に近かったのが、フレイルです。
フレイルとは、加齢に伴って身体や心の機能が低下し、健康な状態と要介護状態の中間にあるような状態を指します。
2026年に発表された系統的レビューでは、39~64歳の中年期の人を対象とした20のコホート研究が検討されています。
そこでは、後のフレイルと関連する可能性のある修正可能な要因として、身体活動、食事、喫煙、飲酒、身体組成など、さまざまな生活習慣が挙げられていました。
つまり、フレイルは高齢になって突然現れるものとしてだけ考えるのではなく、中年期からの生活習慣という、もっと前の段階にも目を向ける必要がある、ということです。
これは、
「高齢になってから健康を考える」
のではなく
「高齢になるずっと前から、将来の身体について考える」
という今回のテーマとも重なります。
食事・喫煙・飲酒などについて
身体活動だけではありません。
WHOも、健康的な加齢のためには生涯を通じた健康的な行動が重要だとしており、バランスの取れた食事、定期的な身体活動、喫煙を避けることなどが、非感染性疾患のリスクを減らし、身体的・精神的能力を維持し、介護への依存を遅らせることにつながるとしています。
また、WHOは認知機能低下や認知症についても、身体活動、禁煙、有害な飲酒を避けること、健康的な食事、適正体重の維持、血圧・コレステロール・血糖の管理など、さまざまな健康行動がリスク低減につながる可能性を示しています。
2026年に更新されたWHOのガイドラインでは、認知機能低下・認知症のリスクは生涯を通じて蓄積するものであり、身体活動や喫煙、飲酒、食事などの修正可能な要因への対策が重要とされています。
ここまで調べてみると、私が治療院で感じていたことと、科学的な研究から見えてくるものには、少なからず重なる部分があるように感じます。
高齢になってから健康について考えることももちろん大切ですが、それだけではなく、もっと前の段階から自分の身体について考えておくことにも意味がある。
今回、さまざまな研究を調べてみて、私はそんなことを改めて感じました。
研究から分かったこと
ここまでいくつかの研究や公的な資料を調べてみて、私が最初に立てた仮説について、少なくとも一つ言えることがありました。
それは、中年期の生活習慣とその後の健康状態には一定の関連があるということです。
身体活動だけでなく、食事、喫煙、飲酒、体重など、さまざまな生活習慣がその後の健康状態と関係していることが研究されています。
WHOも、健康な加齢を単に「病気がない状態」とは捉えていません。
年齢を重ねても、身体を動かしたり、考えたり、人と関わったり、自分で生活したりするための「機能」をできるだけ維持していくことを、健康な加齢の重要な要素としています。
そしてその機能は、高齢になって突然決まるものではありません。
WHOの資料でも、健康状態は成人期や青年期からの生活習慣の影響を受けるとされ、身体活動や食生活だけでなく、喫煙、飲酒、座りがちな生活なども将来の健康に影響する要素として挙げられています。
ただし、ここで誤解してほしくないことがあります。
「若い頃から健康に気をつけていれば、必ず健康な高齢者になれる」
という単純な話ではありません。
人によって遺伝的な違いがありますし、病気になることもあります。
生活環境や仕事、経済状況など、自分だけではどうにもできない要因もあります。
同じような生活をしていても、すべての人が同じように年齢を重ねるわけではありません。
だからこそ、「健康に気をつけてさえいれば大丈夫」と言いたいわけではありません。
一方で、「将来の健康は、今の自分とは関係ない」とも言えないことが、今回調べてみて分かりました。
そう考えると、私が治療院で感じていた、
「80歳を過ぎても元気に通われている方々は、若い頃から健康について考えてこられたのではないか」
という仮説も、少なくとも考えてみる価値のあるものだったのではないかと思います。
もちろん、その答えを私が知っているわけではありません。
だからこそ今回、こうして調べてみました。
そして調べてみた結果、私は改めてこう思いました。
健康について考え始めるのに、早すぎることはないのではないか、と。
現役世代(30~60代)の方に伝えたいこと
ここからは、このnoteを読んでくださっている現役世代の方に向けて、少しだけお伝えしたいと思います。
今、身体に大きな不調がない方もいるでしょう。
肩も腰も痛くない
普通に仕事ができる
休日には好きなことができる
そういう状態なら、わざわざ健康について考える必要を感じないかもしれません。
でも私は今回、80歳を超えても元気に治療室へ通われている方々を見て、そして60~70代のお客様から
「こんな風になるとは思わなかった」
という言葉を聞いて、こう考えるようになりました。
「まだ痛くないから大丈夫」
ではなく、
「まだ元気だからこそ考える」
これが大切なのではないでしょうか。
健康は、身体の調子を崩してから取り戻すものだけではありません。
今の身体をできるだけ長く維持することも、健康を考えるうえでは大切なことです。
もちろん、何をしていても年齢による変化は起こりますし、若い頃とまったく同じ身体のまま80歳を迎えることはできません
それでも、今からできることはあります。
身体を動かすこと、食生活を見直すこと、喫煙や飲酒などの生活習慣を考えること、身体の変化に気づくこと。
そして何より、自分がこれからどんな身体で年齢を重ねていきたいのかを、一度考えてみること。
それだけでも、健康との向き合い方は少し変わるかもしれません。
60代、70代になってから「こんな風になるとは思わなかった」とならないために。
まだ何も困っていない今だからこそ、自分の将来の身体について考えてみてほしいと思います。
これからの少子高齢化社会を生き抜くために
そして、もう一つ考えておきたいことがあります。
これから私たちが生きていく社会は、今まで以上に高齢者の多い社会になっていきます。
長生きする人が増えることは、とても喜ばしいことです。
ただ、寿命が延びることと、健康に生活できる期間が延びることは、必ずしも同じではありません。
WHOも、健康な加齢を「病気がないこと」だけではなく、年齢を重ねても自分らしく生活するための機能を維持することとして捉えています。
だからこそ、これからの少子高齢化社会では、
「何歳まで生きるか」
だけではなく、
「何歳まで自分らしく生活できるか」
という視点が、ますます重要になるのではないでしょうか。
そのためには、高齢になってから健康を考えるのではなく、もっと若い世代から健康について考えておく。
今回、私がこのnoteを通して一番伝えたいのは、そこです。
私の治療院に通われている80歳以上の方々が、若い頃どのような生活をしてこられたのか、それは私には分かりません。
でも、その方々の健康に対する意識の高さを日々見ていると、
「こういう高齢者をもっと増やしていけたらいいな」
と思います。
そのために必要なのは、高齢になってからではなく、もっと前からの健康意識なのではないか。
今回、科学的なエビデンスを調べてみて、私はそんな仮説を、以前よりも強く意識するようになりました。
まとめ
今回は、私の治療院でのちょっとした疑問から始まった話でした。
現在、治療院には80歳を超えても定期的に通われているお客様が6名ほどいらっしゃいます。
その方々に共通していると私が感じているのが、健康に対する意識の高さです。
そこで今回、「中年期からの健康行動は、その後の健康状態と本当に関係しているのだろうか?」と、科学的なエビデンスを調べてみました。
すると、身体活動や食生活、喫煙、飲酒など、中年期のさまざまな生活習慣と、その後の身体機能や健康状態との関連が報告されていることが分かりました。
もちろん、健康に気をつけていれば誰もが健康な高齢者になれるわけではありません。
それでも、「将来の健康は、今の自分とは関係ない」とは言えないようです。
だからこそ、30~60代の今から、自分の健康について少し考えてみてほしいと思います。
まだ大きな不調がないからこそ、できることがあります。
「こんな風になるとは思わなかった」
そうならないためにも、今の自分の身体と、これからの自分の身体について、一度考えてみてはいかがでしょうか。
おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
今回のnoteでは、少し大きなテーマとして「将来の健康」について書いてみました。
私のnoteでは、普段は肩こりや腰痛など、身体の不調について発信しています。
不調が出てからの改善方法だけではなく、できるだけ不調を起こさないための予防や、ご自身でできるセルフケアについても紹介しています。
身体のことをもっと知りたい方や、これからの健康について考えてみたい方は、ぜひ他のnoteも覗いてみてください。
今回のnoteが、皆さんにとって自分の身体について考えるきっかけになれば幸いです。
参考文献
※今回のnoteを書くにあたり、以下の研究・公的資料を参考にしました。
Sabia S, et al.「中年期から高齢期にかけての身体活動の変化に関するWhitehall II研究」BMJ Open. 2012.
Menai M, et al.「身体活動と良好な加齢との関連に関するWhitehall II研究」Scientific Reports. 2017.
Longworth S, Panayiotou B.「中年期の生活習慣とその後のフレイルとの関連に関する系統的レビュー」Journal of Aging and Health. 2026.
世界保健機関(WHO)「健康な加齢と機能的能力」
世界保健機関(WHO)「高齢化と健康」
世界保健機関(WHO)「認知機能低下・認知症リスク低減ガイドライン 第2版」2026年.
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