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【BL】せんのはれ ep. 熱帯夜

夜遅く帰ってきた千晴は、アイスを食べようと冷凍庫を開けた。
そこには冷凍食品ばかりで、アイスはなかった。

「恒一くん、アイスない」

千晴が恒一に訴えると、

「なかった?」

コーヒーを淹れていた恒一が、千晴と一緒に冷凍庫を覗いた。
千晴の鼻を石鹸の匂いがくすぐった。

「ないね」

恒一が重なり合う冷凍食品をひっくり返しながら言った。

「買ってきていい?」

千晴が言うと、

「一緒に行こう。
ズボンだけ替えてくるね」

と恒一はクローゼットに向かった。
着替えた恒一と玄関を出る。
むわっとした熱気に包まれた。
少し息苦しい。
すぐ近くにコンビニはあったが、少し遠くの25時まで営業しているスーパーまで足を伸ばした。
恒一が保冷バックを持っている。
道すがら、今日あったことを恒一に話す。
繋いだ手はすぐに離れた。
暑かったからだ。
ぬるい湯の中にいるようだった。

「ここのスーパー久しぶり」

千晴が言うと

「俺も」

と、恒一。
自動ドアが開くと、冷気が熱った肌を撫でた。
千晴と恒一はまっすぐアイスコーナーに向かった。
見慣れないアイスが並んでいた。
千晴は迷った。
どれも美味しそうだ。

「冷凍庫に入らなそうだから、バラのにしようね」

恒一が言った。
悩みに悩んで千晴は、チョコソースのかかったパフェみたいなアイスと、期間限定のアイスを手に取った。
恒一はメーカーの違うバニラアイスをひとつずつかごに入れていた。

「早く帰ろう」

続けてチルドデザートのコーナーに行きかけた千晴だが、恒一に止められた。
レジに向かい、会計を済ませる。
帰り道も暑かった。
半月が出ていた。
家に着く頃には、千晴は汗でベタベタだった。
恒一も額から汗が流れている。
バニラアイスを冷凍庫にしまうと、恒一は言った。

「もう一度、シャワーを浴びてこようかな」

「……一緒に入る?」

恒一が一瞬固まった。
しかし、すぐに

「……いいけど」

と言って浴室に向かった。
千晴は手に持っていたアイスを冷凍庫に入れ、恒一の後についた。


***** 


恒一と千晴は洗面所で服を脱いで浴室に入った。
恒一は見慣れた千晴の体から視線を外しながらシャワーの栓を開けた。
千晴がバスタブの縁に座る。
シャワーは外の気温より熱かったが、気持ち良かった。
汗が流れていく。
恒一は頭からシャワーを浴びた。
千晴はそんな恒一を眺めている。

この流れは……

アイスは、後か。

恒一は努めて平静を装った。
汗を流し終わったので、お湯を出したままのシャワーヘッドを千晴に渡す。
今度は恒一がバスタブの縁に座った。
千晴の体を眺める。
そんな恒一の視線に気がついたのか、千晴が鏡越しに恒一と目を合わせた。

「遅くなるよ。オレ、髪も体もこれから洗うし。出てれば?」

千晴が言った。

「えっ」

恒一は思わず声が出た。

「え?」

千晴が手を止めず恒一を見る。

「シャンプー、付くよ?」

「…うん」

恒一は浴室を出た。
千晴が出てくるまでの間、恒一は心を落ち着けていた。
千晴は出てくると、

「お待たせ」

と言って冷凍庫を開けた。

「アイス、どっちでもいい?」

「……うん」

千晴は二つのアイスとスプーンを持って、恒一の隣に座った。

「はい」

バニラアイスを渡された。
千晴がアイスカップを開けて、もたれかかってくる。

―まあいいか。

自分の口元が歪むのがわかった。
恒一はバニラアイスを口に含んだ。



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