見出し画像

変形問題の理解に必要な2種類の素過程を整理してみた

構造物とは、道路やダムなど「複数の材料や部材などから構成され、基礎などにより重量を支えられた構造で造作されたもの」を指します。

構造物は様々な外力を経て形状変化(変形)を引き起こし、最終的に破壊に至ります。これらを評価する上で重要な物理量として「応力」があります。構造物に掛かる力の話であることから「内力」に分類される力です。

応力にも、主応力やミーゼス応力(相当応力)など用途次第で様々な言い方があります。今回はその続きになります。過去に2記事ほど書いており、それらを以下に示します。


♦️前回までに投稿した関連記事



今回は変形に関してひとつの分岐点に相当する物理現象である「降伏」について、概要レベルの話をしたいと思います。

材料にある限界範囲内の外力を加えると弾性変形を起こし、外力をゼロに戻すと元の形状に戻る。限界以上の外力に対しては永久変形が発生し、それが時間経過に依存しないとき、このような変形を塑性変形と言う。塑性変形を開始する現象を降伏と言い、降伏に要する応力を降伏応力と言う。

出典(一部改変):https://www.jsme.or.jp/jsme-medwiki/doku.php?id=07:1004082

上記は巨視的(マクロ)な物理現象という立場の説明です。微視的(ミクロ)な立場の説明もありますが、この辺は今回は割愛します。


⭐️🐍⭐️🐍⭐️
今回は数年前に投稿した「降伏条件と降伏曲面について」という記事が現在も多く読まれていることを受けて、現在のスタイルに合わせて再編集(アップデート)しました。



弾性変形と塑性変形

材料には変形に関する固有の特徴(特性)が存在します。自分が生業とする構造解析においても、材料特性は重要な構成要素のひとつ。データとしてどこまで精密に取得できるかが、現実の物理現象の再現性を担保しています。

材料特性(データ)として、一般的に多く用いられているものに「応力-ひずみ線図」があります。金属に関しては、結晶構造により下記の2種類に大別されると言われています。

一般的な金属(材料)の応力-ひずみ線図

ここで、図の左側で言うところの1回目に頂点に相当するポイントを「降伏点」と言います。この分岐点が降伏なのですが、右側の場合は「耐力」に相当するポイントで代替します。

降伏点から左側は、応力ーひずみ線図における線形領域(応力とひずみに比例関係が成立する状況)であり、弾性変形に該当します。一方で、降伏点から右側は、応力とひずみの間に線形性が成立せず、塑性領域と言います。

弾性変形と塑性変形は、巨視的または微視的のいずれから見ても現象が根本的に異なります。特に、塑性変形はその先に破壊(破断)が存在します。

破断に関しては、構造物の破壊現象に直結することなので、構造解析では「どのように構造物の破壊を回避するか」という問題の対象と言えます。

金属に関する有名な降伏条件

前述した通り、弾性変形から塑性変形に転移することを「降伏」と言います。

金属については、有名な降伏条件として「トレスカの降伏条件」「ミーゼスの降伏条件」が提唱されており、現在もよく用いられます。いずれも、前に説明した「主応力」をベースに考えます。

トレスカの降伏条件は、金属内部の原子配列にズレが発生する現象「すべり」と主応力を紐づけたものです。具体的には、すべりが生じるときのせん断応力(臨海せん断応力:k)と、最大主応力の最小主応力の差を等式にします。

$${\sigma_{max}-\sigma_{min}=2k}$$

次に、ミーゼスの降伏条件は前に紹介した「ミーゼス応力」から考えます。ミーゼス応力が降伏応力に到達したときが降伏に相当します。延性材料(塑性領域が比較的に確保できる金属)に適合することが知られています。

主応力に基づいたミーゼス応力(出典:https://note.com/artemis35/n/ndd8f4641aeb8)

ミーゼス応力は主応力空間で図示したとき、3種類の主応力(3次元空間では主応力は基本的に3通りで求まります)を等しいとする関係(直線)を中心軸に、降伏応力の値を半径(定数)とした円筒表面を形成します。

これはミーゼスの降伏条件を表します。円筒の内側は弾性領域に、外側が塑性領域に相当します。

ミーゼスの降伏条件の図のイメージ(出典:https://www.cybernet.co.jp/ansys/learning/lesson/031)

主応力(3種類)が全て等しいならば、全方向から同等の力(静水圧)が掛けられます。ミーゼスの降伏条件は静水圧に依存しません。静水圧が如何なる値でも、それだけでは降伏は起こりません。

ミーゼス応力について

ミーゼス応力は構造解析から得られた物理の評価においても、一般的に多用される物理量(指標)と言われています。

ミーゼス応力の最大の長所は、複数ある応力状態に対して、ひとつのスカラー量で定量的に評価できること。つまり、ミーゼス応力と材料の降伏応力の値を比較するだけで、降伏を評価できるのです。

応力状態の一般論(垂直応力とせん断応力で合せて9個の応力成分があります)

一方で、ミーゼス応力はあくまでスカラー量ですから、数式を見れば分かる通り、正負の判別が付きません。つまり、変形状態が「引張」「圧縮」の区別が付きません。それらを判断するには、主応力も合せて確認する必要があります。

例えば、疲労破壊は引張応力から促進される物理現象です。このことから、引張応力が働く箇所を集中的に対策する訳ですが、ミーゼス応力だけでは構造的に対策するべき箇所を判断できません。

このような場合は、ミーゼス応力とは別の新たな物理量(指標)と合せて評価します。

おわりに

今回は変形問題に関する総まとめとして、変形に関する基礎(主に弾性変形と塑性変形と相互関係)の話をしました。

構造解析では、対象の構造物の形状の再現性も大事ですが、構造物に使われる金属の特徴(特性)を正確に再現することも大事です。そのための手段として、様々な材料試験が行われます。

出典:https://www.instron.jp/ja-jp/products/testing-systems/universal-testing-systems

時には、複数(種類)の材料試験から得られたデータを引用して、構造解析の質を高めるアプローチにすることもあります。

今回紹介した材料(データ)の基本である「応力-ひずみ線図」は、業種次第では多く目にすることになるので、今回はその辺も解説してみました。

前にも書きましたが、変形の理論的な話題は全然尽きません。連続体力学などの学問の範囲でこれまで説明してきましたが、なるべく平易にして、知識の分かりやすさを引き続き追求したいです。

-------------------------
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。この記事があなたの人生の新たな気づきになれたら幸いです。今後とも宜しくお願いいたします♪♪
-------------------------

⭐︎⭐︎⭐︎ 谷口シンのプロフィール ⭐︎⭐︎⭐︎

⭐︎⭐︎⭐︎ ロードマップ ⭐︎⭐︎⭐︎


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集