2012年の銀座で出会った遊びのデザイン
switch — 岡本光市 遊びのデザイン — 2012.04.27 - 06.03
@POLA MUSEUM ANNEX
今回ご紹介する1枚のフライヤーは「スイッチ」をテーマにした展覧会のものです。
2012年春に銀座のポーラ ミュージアム アネックスで開催された
「switch — 岡本光市 遊びのデザイン —」
「音が溢れ出す不思議なテーブル」
真っ白な空間に、ぽつんと置かれた木製のテーブル。

「musical table」という作品です。
テーブルの上には1音だけを鳴らす500個ものオルゴールがずらりと繋がれています。
オルゴールがランダムに音を奏でる仕組みになっています。
「イタズラの道具」に変わる瞬間
この展覧会の生みの親である岡本光市さんは、アートと音楽、そしてデザインの境界線を軽々と飛び越えて活動するクリエイターです。
「子供の頃から私の身の回りにある生活用品すべてが材料でありイタズラの道具でした」
この言葉通り、作品の素材は私たちがよく見かける身近なモノばかり。
「えっ、あのライトがこんなにオシャレな照明になるの!?」と、自分の目が信じられなくなるような楽しさ。
まさに、大人の本気のイタズラを見せられているような、最高のワクワク感が空間全体に満ちていました。
迷ったら「一番ワクワクする選択肢」を選ぶ
岡本さんは、音を出すためにデザインを使い、デザインを伝えるために音を使っている。
ジャンルに迷ったら、自分が一番「面白い!」「ワクワクする!」と思う形に素直に形を変えていく。
きっと「四角四面に収まるなよ!」というメッセージなのかもしれません。
「こんなの、誰の役に立つんだろう?」
と真面目に考えず
「面白いからやってみた!」
というピュアな初期衝動こそが、人の心を動かすアートの始まりになるのではないかと思います。
ウラバナシ(フライヤー裏面)
裏面の作品解説を読むと、岡本光市さんというデザイナーの、モノづくりに対する「圧倒的な職人魂」と「執念」が見えてきます。
ネジもボルトも一切使わない!半年間、手作業でアルミを曲げ続けた「椅子」
「Composition Chair」という1人掛けのソファのような作品。
「アルミニウム線を手作業で半年かけて加工した」 ボルトもネジも使わず、溶接すらしていない作品。
気の遠くなるような長さのアルミニウムの線を、ただひたすら手作業でカチカチと曲げて、お互いを噛み合わせるようにして、人が座れる頑丈な椅子を作ってしまったんです。
「遊びのデザイン」の裏側には、こうした「圧倒的な時間の投資」というベースがあるからこそ、私たちは観た瞬間に「本物だ……」と圧倒されるわけですね。

1000本のダイヤルキーが絡み合うゲーム
もうひとつ、裏面で目を引くのが、黒くて丸い、まるで毛糸玉のような不思議な球体の写真。
作品名は「1000 combination locks」。
日常でよく使うダイヤル式の南京錠が、1000個も複雑に絡み合ってひとつの球体になっています。
「鍵=何かを厳重にロックするもの」という当たり前の常識を、「みんなでガチャガチャ回して遊ぶ、巨大な知恵の輪」に変えてしまう。
この、既成概念のひっくり返し方は、クリエイティブなアイデアを出したいときの最高の教科書になります。
見えないものを、あえてユーモラスな形で見えるようにする。
これこそが、岡本さんの言う「遊び」の真髄。
岡本さんのように、アルミ線を半年曲げ続ける覚悟、あるいは鍵を1000個集める執念。
そこまで振り切るからこそ、唯一無二の価値が生まれます。
別紙で岡本さんが語っていた言葉です
スイッチの先にある装置を稼働させる行為、それらが無数にあることにより無作為な意図しない現象を生みます。
それらのコードの長さ、距離によって産まれるコントロール感、無数を操作する支配感が生まれます。
手元のスイッチを押すだけで遠くにある無数のマシンが動き出す。
この「距離」と「コードの長さ」があるからこそ、自分の指先が世界を動かしているような感覚を覚えたりもします。
自分が起こしたハズなのに、予想もつかないカオスが巻き起こる。
スマホひとつで世界中のネットワークやトレンドを指先でザワつかせている、現代の私たちの日常そのものに10年以上前の個展の意図がつながっている気がしました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
