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フェルメール『真珠の耳飾りの少女』の瞳の奥にある、永遠の1/60秒

ヨハネス・フェルメールの最高傑作として、そして美術史上で最も愛される一枚として知られる『真珠の耳飾りの少女』。

この名画が、ついに14年ぶりに日本へやって来ますね。

前回の来日時には、ひと目その姿を拝もうと数時間の行列ができるほどの社会現象になりましたが、あの息をのむような美しさに再び生で出会える機会が巡ってきます。

今回は、展覧会の足を運ぶ前にぜひ知っておきたい、キャンバスに閉じ込められた「絵画の中のストーリー」を紐解いていきます。

これを知っているかどうかで、本物と対峙したときの没入感がまったく変わってくるはずです。

呼びかけに、ふいに振り返る瞬間

暗闇の中から、こちらをまっすぐに見つめる少女。


彼女は今、誰かに呼びかけられて、ふいに足を止めて振り返った――

そんな「一瞬の沈黙」が切り取られています。

特に印象的なのが、わずかに開いた口元です。

下唇の端に置かれた小さな白い絵具のドット。

この「光の点」が唇の潤んだ質感を表現しており、「今まさに、何か言葉を発しようとしている」その刹那の生々しさを、360年経った今も見事に伝えています。

金よりも高価な「青」に照らされて


少女の頭上を鮮やかに飾る青いターバン。

これは当時のオランダの日常着ではなく、どこかオリエンタルな異国の衣装をまとった「仮装」の姿です。

そして、この吸い込まれるような青の正体は、アフガニスタンから運ばれた天然の宝石「ラピスラズリ」を砕いて作られたウルトラマリンという顔料です。

当時は金(ゴールド)と同等か、それ以上の価値があったと言われる究極の青。

フェルメールはこの贅沢な色彩を惜しみなく使うことで、少女の瞳に宿る微かな光を極限まで引き立て、彼女のまわりに神秘的な空気を作り出しました。

実は「描かれていない」真珠の輪郭


この絵のタイトルにもなっている、耳元で怪しく光る大きな真珠。

しかし、少女の身分には不釣り合いなほど巨大なこの真珠をよく見ると、奇妙な事実に気づきます。

近年の科学調査でも明らかになっている通り、この真珠には耳に固定するための「金具(フック)」が一切描かれていません。

それどころか、真珠自体の「輪郭線」すら存在しないのです。

フェルメールは、背景の黒の上に、光の反射を表す白い絵具をわずか数筆ぽんぽんと置いただけ。

私たちの脳が、その光の配置を勝手に「輝く真珠」だと錯覚しているのです。

まさに光の魔術師が仕掛けた、視覚のトリックと言えます。

彼女は現実には存在しない


驚くことに、この少女には特定のモデルがいません。

実在の人物を描いた肖像画ではなく、画家の想像を交えて表情や衣装のタイプを研究するために描かれた「トローニー(顔の習作)」というジャンルの作品だからです。

現実には存在しない、光と宝石の青から生まれた架空の少女。

だからこそ、彼女の視線はどこか浮世離れしており、私たちは永遠に彼女の正体にたどり着くことができません。 

14年ぶりの来日。
静寂の中で本物の前に立ったとき、あなたには彼女がどんな言葉を紡ごうとしているように見えるでしょうか。

📖 フェルメールの世界を、さらに深く旅する本
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展覧会に行く前にページをめくっておくと、美術館での鑑賞体験が何倍にも深いものになります。

https://item.rakuten.co.jp/book/15582935/

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