見出し画像

『宙ごはん』――心の闇に、あかりを灯してくれた一冊

ここ最近読んだ本の中でも、なぜか手が止まらず、どんどん読み進めることができた一冊。

町田そのこさんの『宙ごはん』。

主人公の宙ちゃんが、あまりにもしっかりしていて。

そして、宙ちゃんを取り巻く大人たちのサポートが、あまりにも的確で。

一つ一つの出来事に、何度も涙がこぼれました。

「親の言うことは正しい」と思っていた

作中に、こんな言葉が出てきます。

「刷り込みってねぇ、怖いんだ。」

何度も何度も言われ続けていると、それを疑わなくなってしまう。

ありがたいんだ。
感謝しなくちゃいけないんだ。
自分の考えよりも、親の言葉の方が大事なんだ。
私の考えは間違っているんだ。

そんなふうに、自分の気持ちを自分で否定するようになってしまう。

この言葉を読んだとき、なぜか自分自身のことを考えていました。

私は、親の言うことを疑いもせずに生きることを、強いられてきた部分がありました。

それが当たり前だったから、当時はそれを「おかしい」と思うこともなかった。

でも、大人になって。

自分が子どもを産んで、親になって。

少しずつ、「あれ? それは違うんじゃないか」と思うことが増えていきました。

そして、ようやく考えるようになったのです。

「自分って、なんなんだろう」

親から与えられた価値観を、自分の価値観だと思って生きてきたけれど。

では、本当の自分は何を思っているんだろう。

何をしたいんだろう。

何を大切にしたいんだろう。

「毒親」という言葉の中で

世間では、そういう親を「毒親」と呼ぶことがあります。

でも、自分の親が本当にそうだったのか。

今でも、私にはよくわかりません。

親の立場から見れば、きっと私に何かを託したかったのだと思う。

その分、たくさん世話をしてくれたのだとも思う。

だからこそ、単純に「良い親」「悪い親」と分けることはできないのかもしれません。

親になった今の私には、それが少しだけわかる気もします。

私も、子どもたちの前で迷い続けている

私自身も親になってから、ずっと迷っています。

自分がされて嫌だったことを、子どもたちにはしないようにしよう。

でも、ではどう接することが正解なのか。

何が正しくて、何が間違っているのか。

そんなことも、実はよくわからないままです。

「反面教師」という言葉だけを頼りにしているようなところもあります。

それでも、子どもたちと向き合いながら、少しずつ自分なりの答えを探してきました。

たぶん、親になるというのは、そういうことなのかもしれません。

「正しい家族」じゃなくてもいい

宙ちゃんたちの家族が、決して「正しい家族のかたち」だとは思いません。

それでも私は、彼女たちの姿に強く惹かれました。

本気で。

本心で。

相手と向き合うこと。

遠慮して、自分の気持ちを飲み込むのではなく、相手の気持ちにも、自分の気持ちにも、ちゃんと向き合うこと。

傷ついた経験があるからこそ、人の痛みに気づける。

苦しんだことがあるからこそ、誰かに優しくできる。

もちろん、傷ついた経験が必ず人を強くするわけではないと思います。

それでも宙ちゃんの生き方を読んでいると、

「自分の中にある傷も、いつか誰かを大切にする力に変えられるのかもしれない」

そんなふうに思わせてもらえました。

心の闇に、明かりを灯す

『宙ごはん』は、私にとって、ただ涙を流しながら読んだ物語ではありませんでした。

自分のこれまでを振り返るきっかけをくれた本。

「本当はどうしたかったんだろう」と、自分の心に問いかけるきっかけをくれた本。

そして、これから子どもたちとどう向き合っていきたいのかを、もう一度考えさせてくれた本です。

心に傷を負っているからこそ、強く、優しく生きていける。

そんなふうに、私自身の背中をそっと押してくれました。

暗いところにずっといると、そこが世界のすべてだと思ってしまうけれど。

小さな明かりが灯れば、

「ああ、ここに出口があるかもしれない」

と思えることがある。

『宙ごはん』は、私の心の闇に、そんな小さなあかりを灯してくれた一冊でした。

そして私も、子どもたちにとって、

「自分の本当の気持ちを話しても大丈夫」

と思えるような親でありたい。

正解は、まだわかりません。

これからもきっと、迷うと思います。

それでも、遠慮せず、本心で向き合うこと。

自分の気持ちも、相手の気持ちも、大切にすること。

そんな生き方を、これから少しずつ身につけていきたいと思います。


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集