例の感想です

最果タヒさんの『夜景座生まれ』読みました。
特に好きだった詩の感想を書きます。

ブレーカーの詩
「今日から二人、ブレーカーが落ちるまでの愛。」
ビビッときた。という世間一般でよく使われる、運命を指す表現をもじっている。電流が体に流れていて、私が自身の孤独な電流を蓄電していると他人が帳尻を合わせてくれる。つまり、世の中の均衡を電流で保っている。そして、その電流が誰かと共有してブレーカーが落ちるまで。その間、「私たち」が機能するまでが愛である、と。発想と視点が面白くて、最後の言葉はシンプルに良いなと思った。

ピアニカみたいな欲望
本心みたいに安心して読める。ぼくが外に出て行ってしまう言い訳に、かつてのぼくがいるというところ。むず痒かったのに、知らんぷりしてた真実を真っ向から突きつけられた気がした。遡及的なぼくが実は地続きのぼくであるという事実は、こんなにも残酷であるよという詩。

美しい人
桃は私の本質。どんなに薄い表面であっても皮を剥いた時点で桃であることを消失していく。逆もそうだ。与えられて(抱きしめられて)自分がもう既に過去の自分でなくなっていくことで記憶がなくなっていく。愛する、愛されるとは幸福な忘却行為。そして、忘れることはほとんど死になっていく。
「きみよりきみの肌についた、雨粒に愛されたい、」
この一節が好き。わたしは雨粒を愛していないから。愛しているのはきみで、きみについた雨粒は不変の美しさとして存在できる。そうやってきみを拒むことで、今のわたしが死ぬことはなくなるから。時間としての本質が揺らがないことで、死は、忘はやってこないから。

喪服
全てを踏まえた上で「気持ちいい」と思えるところが、本当に好き。気持ちいいって言葉が出てくるの、すごすぎるんだよな…

ポニーテール
僕は本来、こういうのばかり読んでいたい。自分の言葉で置き換えて分かろうとしなくても、感覚的に映像的に好きになれる。好きになるしかない。ずっと声に出して読んでいた。
「これが、夜の肌だと思った。」
自分の声として、音として、この一節が自室に響くという幸せは僕だけが知っていて、それだけで好きになった。

おそようございます
内側の世界だけをつくっていたわたしが気づいた。世界は本来、外にあることを。この世界の言う「この」は「わたしの」だ。顧みすぎたのだ。外の世界は終わって欲しい。眠っていても見えるわたしの世界がいい。そんな内側に働きかける眠気が、内側のわたしの絶望。外側のわたしの幸福。桜が綺麗に咲いているような。良い。

友達
あぁ、好きだな…って思うしかない(思うことしかできない)詩。

ヨーグルトの詩
この詩集でいっっちばん好きな詩。
砂時計は生活の曖昧を、幻は想いの不明瞭さを。
「死んでしまいたいと」から雰囲気が変わっているようで実は本人にとってこれは延長線の話だ。きみはぼくにとって当たり前に「美しい」の中で生きていて、それが「醜い」という俗な瞳で変換される。でも、この日常の一部みたいに当たり前に、きみが望んで死んでしまった事実やぼくもそうありたいという願いはヨーグルトを習慣として口にするみたいに自然に、美しいことなんだと思う。ヨーグルトみたいな朝を象徴する食べ物を扱っているから言えること。ではなくて、扱わなければ言えないこと。

(以下、感想ではありません。)

僕がフォローしてる大学生の方にオススメの作家(オススメの本だったかもしれないけれど…)を聞いて返ってきたのがこの詩集。でも、その前に「優しくしてほしい?それとも思想で殴ってほしい?」って聞かれた時はゾクゾクしました。だから、順当な気持ちで後者を選べたんです。やっぱり聞いてよかったな、と思いました。この文章をその方が読んでくれているかは分かんないですけど、面白そうな人だなーって思ってフォローしたら実はめっちゃ怖い人で(悪い意味ではなく)知識と感性と感情の怪物だと思ってます。あと、声が良いです。僕があの声になったら、声が一人歩きしていきそうなくらい良い声です。その方だから扱える声だと思ってます。教養とか哲学とか文学とか、まぁその辺の類のもので縛っておかなければ飛んでいきそうな強さです。だから、スペース参加できなかったんですよ…すみません。いずれ参加します。多分、何も喋らないで聞いてるだけの結構恐ろしい存在になってると思いますので…
それと、実はこの詩集を勧めていただいてから、感想を書くのに一ヶ月以上かかりました。これは読むのを渋ってたわけではなく、何も書けなかったからなんです。三週間ぐらいずっと読んでました。寝る前に読んで、朝起きて読んで、たまに呟いて、好きなところを朗らかに読んで、検討して、目を瞑ってみて、なんだか心地よくなって、眠ったりして、読みたくなったら読んで、それを何日も続けて、何回も繰り返し読んでいました。僕にとって詩は言葉を能動的に受け取り、深くまで潜っていく必要がありました。僕は小説しかまともに知らなかったですし、もちろん言葉に対するそういった姿勢に不慣れでしたので、随分時間がかかってしまいました。それでようやく、自分の言葉を感想と呼べるぐらいにはなりました。結構な難産でした。でも、そのわりにまだ何も言えていないみたいな感想です。僕はもっと他者の言葉に触れるべきですね。これからは詩にも触れていきたいと思っています。
勧めてくださってありがとうございました。

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