ノートPCのCPU動作でTTSを色々と動かしてみたので一旦比較まとめ
はじめに
これまで、いくつかのローカルTTS(テキスト読み上げ)モデルを自分のPCで試してきました。 一番の動機は、クラウドサービスの制限やサブスクリプションを気にせず、手元のリソースだけで自由に声を生成したかったからです。
その過程で見えてきた数値と、実際に動かしてみた際の正直な感触をまとめておこうと思います。
今回の検証は、すべて以下の環境で行っています。
いわゆる「GPUを積んでいない」一般的なノートPCです。
CPU: AMD Ryzen AI 5 PRO 340 (2.00 GHz)
メモリ: 32.0 GB
OS: Windows 11
多くのモデルは、本来NVIDIAのグラフィックボードなどのGPUで動かすことを前提に設計されています。それをあえてCPU環境で動かしているため、開発者の方が想定しているパフォーマンスとは異なる結果が出ている可能性があることを、あらかじめ記しておきます。
比較結果
比較といっても、過去記事で動かした結果をまとめただけになります。詳細は該当する過去記事を参照していただければと思います。
評価指標として、生成速度を「RTF(リアルタイム係数)」で算出しました。 RTFは「1秒の音声を生成するのに何秒かかったか」を示す数値です。値が小さいほど速く、1.0未満であれば実際の再生時間よりも短い時間で生成できたことになります。
手元のストップウォッチで計測した、少し緩めの評価であることはご了承ください。(以下の表は、すべてCPU環境での測定結果です。)
$$
\small
\begin{array}{c|c|c}
\rule{0pt}{1.5em}
\text{モデル名} & \text{公開時期}& \text{速度(RTF)}
\\[5pt] \hdashline
\rule{0pt}{1.5em}
\text{MOSS-TTS-Nano} & \text{2026年2月} & \text{0.1}
\\[5pt] \hdashline
\rule{0pt}{1.5em}
\text{StyleTTS2} & \text{2023年11月} & \text{0.3}
\\[5pt] \hdashline
\rule{0pt}{1.5em}
\text{Tsukasa Speech} & \text{2024年5月} & \text{0.3}
\\[5pt] \hline
\rule{0pt}{1.5em}
\text{Kokoro-TTS} & \text{2024年12月} & \text{0.3}
\\[5pt] \hline
\rule{0pt}{1.5em}
\text{Irodori-TTS} & \text{2026年3月} & \text{14}
\\[5pt] \hline
\rule{0pt}{1.5em}
\text{VOICEVOX} & \text{Version 0.25.2} & \text{0.2}
\\[5pt] \hline
\end{array}
$$
比較のおまけとしてVOICEVOXも並べました。
これが一番簡単に動かせました^^。開発の成熟度を感じます。素晴らしいですね。
生成音声のサンプルと感想
ここからは実際に生成した音声を聞きながら、モデルごとの特徴を見ていきます。 本来なら全て同じ文章で比較すべきなのですが、MOSS-TTSはルールを揃える前の検証だったこと、StyleTTS2は英語のみの検証だったこともあり、バラバラの素材になっています。 その点はゆるやかに見ていただければ嬉しいです。
MOSS-TTS-Nano
驚くほどの速さを見せました。私の環境でもRTF 0.1という数値を叩き出しており、CPU動作でもストレスを全く感じません。速度を最優先したい場合には、非常に強力な選択肢になります。
StyleTTS
2023年に登場したStyleTTS2は、現在のローカルTTSにおける一つの基準だと感じています。私の環境でもRTF 0.3という実用的な速度を記録しました。
Tsukasa Speech
StyleTTS2派生であるTsukasa Speechも、日本語の自然な抑揚を保ちつつ、CPUで軽快に動作してくれました。
Kokoro-TTS
パラメータ数が非常に少ないため、処理は高速です。ただ、実際に声を聴いてみると、他のモデルと比較して少し淡々とした、いわゆる「ロボット風」な印象を受けるかもしれません。用途によって好みが分かれそうです。
Irodori-TTS
こちらは質を追求した「重厚な」モデルという印象です。私の環境では10秒の音声生成に140秒ほどかかりました。CPUでの常用は正直厳しい数値ですが、それはこのモデルが高いクオリティのために膨大な計算を必要としている証拠でもあります。
VOICEVOX
数あるキャラクターの中から、今回は代表して「四国めたん」さんに発話していただきました。環境構築の苦労もなく、安定してこのクオリティの音声がサクッと生成できる安心感は、さすがの一言ですね。
おわりに
開発者の方々が「GPUありき」で設計されている中、あえてCPUで回してみる。 私の環境がそうなので仕方がないのですが、いじわるな評価結果になってしまったかもしれません。
これからも折を見て、新しいTTSは追加していこうと思っております。
この記事が、ご自身のCPU環境でTTSを試そうとしている方の、ささやかな道標になれば幸いです。
これまでの検証記事
環境構築に四苦八苦した記録も含まれています。何かの参考になれば。
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