「未来のことを想像させる」と、売り上げにつながる?
今回は度々お話しする仕事についてのこと。
デザイナーという仕事は、直接的に売上を大幅に上げることや、数字を取ってくるということが中々難しい職業だと思う。
インハウスデザイナーを経てフリーランスになった今でも、私はときどきそのことについて考えている。
依頼されたものを綺麗に作って納品すること。クライアントの満足度やリピート率を上げること。もちろんそれがデザイナーの主たる仕事だ。
けれど、会社が厳しい状況に立たされた時や、「自分にもっとできることはないか」と悩む時、デザイナーという職種はどうしても無力感を抱きやすい。営業のように直接数字を取ってくるわけではないからだ。
でも実は、売上や受注という点においても、デザイナーだからこそできる貢献の仕方があるんじゃないかと思っている。
それは、「相手に未来を想像してもらうこと」だ。
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たとえば、あるお店から「認知拡大のためにA4のポスティングチラシを作りたい」と依頼されたとする。
通常なら、ヒアリングをしてポスティングチラシのラフ案を作成して提出する。
けれど私はその時、チラシの案と一緒に「もしこれを他へ展開するなら」という簡単なイメージをそっと添えるようにしている。
たとえばお店の入口に貼るポスターや、店内の商品POP、小さなリーフレットなど。「このデザインベースで展開すると、こんな空気感になりますよ」という視覚イメージだ。
かっちり作り込む必要はなくて、あくまで「イメージを共有する」程度でいい。
単にチラシの出来栄えや価格に見合っているかを「見定めにきた」クライアントは、その展開案を見た瞬間、少し様子が変わる。
「あ、チラシを配ったあと、お店に来たお客さんにはこういう見せ方ができるのか」「看板もこれに合わせたら雰囲気が揃うかも」と、頼んでもいないのに自分の中で想像を膨らませ始めたりするのだ。
何かを買う時や新しいことを始める時、未来を想像してワクワクすると「あれもこれも」と考えが止まらなくなった経験は、誰にでもあると思う。その状態を、提案の場で作るのだ。
ここで大事なのは、絶対に売り込まないこと。
「追加でこれも作りませんか?」と営業をかけると、人は警戒して心を閉ざしてしまう。
だから、「このデザインなら、店前の看板でこういう使い方もできます」「チラシを見て来たお客さんがお店に入った時、イメージが繋がると効果的です」と、あくまでさらっと補足する程度にとどめる。
種を蒔いておくだけでいいのだと思う。
困りごとを解決したくて依頼してくれたクライアントの背中を、未来のイメージで少しだけ押す。すると、「じゃあ、他にもどんなことができる?」と相手から興味を持ってくれるようになる。
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かつて会社員だった頃、デザイン部の部長に言われて「予算を増やした場合の未来案(この時は2期工事案)」という資料を作ったことがあった。
営業の方に同行してクライアントに説明した時、相手の反応が思った以上に良くて驚いたのを覚えている。
時間が経ってから別のかたちで受注に繋がることもあったし、今回は見送りになっても「次の案件」の話に化けることもあった。提案がそのままの形で通らなくても、全然いいのだと思う。
営業から「この制作物を作ってほしい」と指定された時、「本当はもっといい方法があるのにな」ともやもやすることはないだろうか。
フリーランスで受けていて、「もう少しここにお金をかけたら効果が出るのに」と歯痒い思いをすることはないだろうか。
でも「こっちの方がいいですよ」とストレートに提案しても、相手にはどうしても「売り込まれている」と受け取られてしまいやすい。
だからこそ、「未来を想像してもらう」というワンクッションが効いてくるのだと思う。
クライアントに「未来を想像してワクワクしてもらうこと」、そして「この人ならその未来を一緒につくってくれるかもしれない」と感じてもらうこと。
言葉にならない理想をカタチにして見せられるのは、デザイナーの面白いところであり、秘かな強みなんじゃないかな、と思う。
過去の私と同じように「自分にできることはないか」と悩んでいるインハウスの方や、もう一歩先へ進んでみたいフリーランスの方に、届いたら嬉しい。
