見出し画像

転倒災害対策の肝はここ もっと目を向けるべき大切な視点

朝礼等で「足元にも気をつけましょう」と言う言葉を聞くかもしれません。また壁には「整理整頓」のポスター、通路には「滑りやすいキケン!」などの文字… 
それでも、時々誰かが「あ、危ない」とか「痛た…」と声を上げる。

――もしそんなことに心当たりがあるなら、あなたにこの記事は少し役に立つかもしれません。

実は今、日本の職場では「転倒」による労災が、確実に増え続けています。
そして今年、その対策に関わる法律にも動きがありました。

多くの現場が先ず考える転倒防止対策それはどんなことでしょう?
—— 整理整頓、手すり設置、滑りにくい床材への変更、靴の早期交換 ——それらは、もちろん大切です。
けれど、40年以上シューフィッターとして何千人もの足を見てきた立場から言うと、そこには大きな見落としがあります。
それは「見た目に分かりやすい対策」ではなく実は「足もと」です。
つまり一人ひとりが履いている靴であり‟履き方”です。
「足もと環境」と言っても良いでしょう。

今回はそんな話をしたいと思います。

増え続ける「転倒」という労働災害

厚生労働省が公表した令和7年の労働災害発生状況によると、休業4日以上の死傷者数は135,333人となり、連続で増加していたものが微減しました。

ただその中でもっとも件数が多い事故の型が「転倒」で37,195人と、こちらは前年からさらに増えてます。
それは墜落・転落や腰痛などの「動作の反動・無理な動作」を上回って断トツの1位となっています。
転倒・墜落転落・動作の反動といった、いわば「体の使い方」に起因する災害は、令和6年には全体の59.2%を占めるまでになりました。

さらに見過ごせないのが年齢構成です。
国の第14次労働災害防止計画では「60歳代以上の死傷年千人率の増加に歯止めをかける」ことが目標の一つに掲げられているほど、高齢の働き手の転倒リスクが課題になっています。
この背景には働く高齢者の増加があります。

北海道でも状況は同様に深刻です。
昨年の地方紙の報道では、今年は10月末までにすでに転倒による労災が1,800件近くに達し、過去最悪だった昨年度の12〜3月のペースを上回る勢いだと伝えられていました。
多くの企業が注意喚起ポスターを貼ったり、筋トレを取り入れたりと試行錯誤していますが、それでも歯止めがかかっていないのが実情のようです。

2026年4月の法改正が意味することとは?

こうした背景を受けて、2026年4月1日、改正労働安全衛生法が施行されました。
この改正では、高年齢労働者の労働災害防止対策の推進が事業者の努力義務として明記されています。

「努力義務」というと軽く聞こえるかもしれませんが、これは国が「高齢の働き手の転倒・労災は、個々の企業が主体的に取り組むべき経営課題である」と正式に位置づけたということです。
今後、行政指導や助成金の設計、労災保険料率の算定といった形で、じわじわと「対応している企業」と「していない企業」の差が可視化されていく可能性があります。

「転倒しないように気をつけましょう」という注意喚起だけではなく
企業として、どうすれば転倒災害を減らせるのか。

これを具体的に考えていく必要があるということです。

現場でまず思いつく対策、そしてその限界

転倒災害対策と聞いて、多くの安全担当者がまず思い浮かべるのは、次のようなものではないでしょうか。

  • 通路や作業場の整理整頓を徹底する

  • 段差や階段に手すりを設置する

  • 滑りにくい床材に更新する

  • 支給靴が摩耗して滑りやすくなる前に、早めに交換申請をする

どれも間違いなく必要な対策です。
実際、環境整備によって転倒件数が減った事例はたくさんあると思います。

ただ、正直に言うと、これらは「根本的な解決」にはなりにくいというのが、長年現場で足を見てきた実感です。

なぜなら―― もう一つ、見落とされがちな要因があるからです。

この記事では、単に「靴を見直しましょう」という話をするのではありません。

なぜ転倒対策に「足もと環境」という視点が必要なのか。
そして、企業が従業員一人ひとりの足と靴をどのように見ればいいのか。

私が40年以上、実際の足を見てきた経験から考えてみます。

ここから先は

3,713字

¥ 500

Amazon Payで支払うと最大2%還元のチャンス! 9/30まで

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?