その熱中症、本当に防げなかっただろうか救急医療を守るために、私たち一人ひとりができること
「搬送相次ぐ熱中症患者、救急医療が逼迫」という記事を読みました。
名古屋市では、猛暑となった7月23日、救急車54台の稼働率が一時84.6%まで上昇し、「救急隊ひっ迫アラート」が発令されたそうです。病院には夕方から、ほぼ1時間おきに熱中症患者が運び込まれたといいます。将来、東京都では熱中症患者だけで救急車が埋まり、搬送困難が多発する可能性まで試算されています。
消防庁の発表でも、2026年8月10日から16日までのわずか1週間で、全国3,132人が熱中症により救急搬送されています。
これを読んで、以前書いた二つの記事を思い出しました。
一つは、街中に誰でも水を飲める場所を増やしてほしいという記事。
もう一つは、赤字や人手不足の中、多くの医療機関が使命感と現場の努力によって何とか持ちこたえているという記事です。
この二つは、実はつながっているのだと思いました。
熱中症を防ぐことは、
自分の体を守るだけではなく、救急医療を守ることにもつながります
救急車が一台埋まれば、その一台を必要とする別の人がいる
熱中症になった人を責めたいわけではありません。
高齢者、持病のある人、屋外で働く人、子どもなど、注意していても体調を崩すことがあります。重い症状が出たときには、迷わず救急車を呼ぶ必要があります。
ただ、少し考えたいことがあります。
朝からほとんど水分を取らなかった。
炎天下を長時間歩いた。
冷房を我慢した。
「これくらいなら大丈夫」と無理を続けた。
そうして重症化し、救急搬送される人を一人でも減らせたらどうでしょう。
救急車一台、救急隊員、病院の救急ベッド、医師、看護師、診療放射線技師、臨床検査技師等の多くのスタッフ。それだけの医療資源を、本当に予測できなかった病気や事故に回すことができます。
救急医療には限りがあります。
同じ時間に患者が集中すれば、
受け入れられる人数には限界があるのです
ここを、私たちはもっと意識してもよいと思います。
医療現場は、余裕があるから受け入れているわけではない
以前の記事で、日本の医療機関の経営が厳しくなっていることを書きました。
医療機関は診療報酬によって収入が決まり、人件費、光熱費、医療材料、委託費などの上昇を自由に価格へ転嫁しにくい構造があります。
そこへ人手不足があります。
救急医療は特に大変です。
昼間だけ患者を診れば終わる仕事ではなく、夜間も休日も誰かが働き続けています。救急車が来れば患者の状態を看護師が確認し、診療放射線技師、臨床検査技師による検査を行い、医師が治療し、必要なら入院の手続きをする。
猛暑で搬送が急増しても、病院の医師や看護師、診療放射線技師、臨床検査技師が突然二倍になるわけではありません。
私はここを強く伝えたいのです。
多くの医療現場は、使命感と現場の努力によって持ちこたえている
外から見ると病院は普通に動いています。
受付があり、診察室があり、救急車を受け入れている。
それだけを見ると、いつでも診てもらえるように感じます。
けれど、その裏側では誰かが夜勤をし、誰かが残業し、誰かが休憩を削り、空いたベッドを探しています。
その積み重ねによって、私たちの医療は保たれています。
暑いとき一本の水を飲むことも、自身の予防と立派な医療従事者への負担軽減対策につながる
以前、私は「マイボトルを持たない人こそ、水が飲める場所を」という記事を書きました。
駅、公園、学校、商業施設などに、容器がなくても水を飲める場所を増やしてほしい。
その思いは、今回の記事を読んでより強くなりました。
熱中症患者を救急車で運び、病院で点滴をして治療する。
もちろん必要な医療です。
しかし、その前に街中で水を飲めていたら。
少し涼しい場所で休めていたら。
本人がもう少し早く危険に気づいていたら。
救急搬送まで至らずに済むケースもあるのではないでしょうか。
水分を取る。
無理をしない。
冷房を使う。
暑い時間帯の外出を避ける。
高齢の家族へ声をかける。
とても地味です。
けれど、その地味な行動の積み重ねが大切なのだと思います。
病院へ行くほど悪くならないように、
自分の体を守る、それは医療を支える行動にもなるのです
救急車を呼ぶべき状態なら、迷わず呼ぶ。
そこを我慢する話ではありません。
本当に必要な救急要請まで遠慮してしまえば逆効果です。
私が伝えたいのは、その前の段階です。
暑い日に水を持つ。
水がなければ買う。
給水場所があれば利用する。
少しでもおかしいと思ったら休む。
「まだ大丈夫」と無理を続けない。
これは自分のためでもあり、その先にいる誰かのためでもあります。
救急車を必要としている心筋梗塞の人がいるかもしれない。
脳卒中を起こした人がいるかもしれない。
交通事故に遭った人がいるかもしれない。
限られた救急医療を、本当に必要な人へ届けるために。
私たちにもできることがあります。
多くの医療現場は今も、使命感と現場の努力によって持ちこたえています。私たちも、そこで働く多くの方々への感謝の気持ちを忘れずにいたいと思います。そのためにも、こまめに水分補給をする、暑い時間帯をできるだけ避ける、無理をしない。そのような小さな行動を積み重ね、自分の命はできるだけ自分で守るよう心掛ける。その一つひとつが、救急車を一台空け、病床を一つ守り、その医療を本当に必要とする誰かの命を守ることにもつながります。猛暑が当たり前になりつつある今、私たち一人ひとりが暮らしの中で、ほんの少しの注意を怠らずにいること。
それが、医療現場を守る大切な行動につながっていくのです。
