いちがつのゆうべ
老人は、小さなろうそくに火をつけてすぐに吹き消した。
ろうそくは質素で細く、三分の一ほどがアルミ箔で巻かれていた。
それは、クリーム色のケーキの一切れの上に、控えめに置かれていた。
大きな苺がそのそばにあり、ろうそくの尖った芯に傷つけられることもなく、静かに横たわっていた。
老人は指先で苺をそっとつまみ、受け皿に移した。
それから、ろうそくも抜いた。
白いクリームの泡の上には、形状の異なる二つのくぼみが残った。
テーブルの上には、ケーキの皿と、苺とろうそくを置いた受け皿のほかに、
水の入った大きな青い陶器のカップと、湯気を立てているやかんがあった。
一月で、家の中はとても冷えていた。
老人は両手でカップを包み、ひと口飲んだ。
熱い水は、何かを内側から溶かすように、静かな温もりを与えた。
窓の外はすでに薄暗く、階段の踊り場の灯りはかすかにしか照らしていなかった。
だがその弱い光が、ふいに白い人影を夕闇の中から浮かび上がらせた。
老人は窓を見ていなかった。
誰かを待っていたわけでもなく、誕生日に一人でいても、特別に寂しさを感じてはいなかった。
それでも、視界の傍らで光の動きを捉え、顔を上げると、窓の外に遅い来客の姿が見えた。
次の瞬間、その影は夕闇に溶け、
老人は、階段を上って自室に戻る隣人だろうと思った。
しかし、いつも聞こえるはずの足音はなく、
老人はカップをテーブルに置き、来客にを迎えるべく身を正した。
一分経っても、二分経っても、
ドアを叩く音も、呼び鈴も鳴らなかった。
老人は再びカップを両手に取ったが、今度は飲まなかった。
まだ受け皿に残っている苺に目をやり、それから窓の方を見た。
闇は次第に濃くなり、彼は、日常のよく知っている感覚を覚えた。
控えめなお祝いの品々でさえ、その感覚を変えることはなかった。
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