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Photoshop死亡確定!? AIが広告やクリエイティブな仕事を代替する時代へ

広告制作の現場で、いま静かに大きな地殻変動が起きています。

かつてバナー、SNS素材、商品画像、ポスター、動画のラフを作るには、PhotoshopやIllustrator、Premiere Proといった専門ツールを開き、職人のように手を動かすことが当たり前でした。

ところが生成AIの進化によって、「この商品写真の背景を明るくして」「SNS用に縦長と正方形のバリエーションを出して」「もっと高級感のあるトーンにして」とチャットで頼むだけで、制作の最初の一歩が終わってしまう場面が増えています。

ここで重要になる専門用語が「入口」です。

これはソフトを起動する最初の画面という意味だけではなく、制作作業を始める場所、つまりクリエイターが最初に触る作業環境そのものを指しています。

これまで広告制作の入口はAdobe製品が強く握ってきましたが、その入口がChatGPT、Gemini、Firefly AI Assistant、そして広告会社独自のAIプラットフォームへ移り始めているのです。

Adobeも手をこまねいているわけではありません。

Firefly AI Assistantは、自然言語で指示するとPhotoshop、Premiere、Fireflyなどをまたいで作業を進める「クリエイティブAIエージェント」として打ち出されています。

ここでいう「エージェント」とは、単に答えるAIではなく、複数の作業を理解し、必要なツールを選び、実行まで進めるAIのことです。

つまり、昔のAIが「秘書」だとすれば、いまのAIは「ちょっと勝手に段取りまで組む新人ディレクター」に近づいています。

もちろん、新人ディレクターなので、たまに謎の手を6本描いたり、ありえない影をつけたりする可能性はあります。

うんちくとして、Photoshopはもともと1980年代後半に画像編集ソフトとして生まれ、長く「プロが触る道具」の象徴でした。

そのPhotoshopの前に、チャット画面という新しい玄関マットが敷かれ始めたことが、今回の変化の核心です。

国内では、サイバーエージェント、博報堂プロダクツ、電通がそれぞれAI制作基盤を整えています。

サイバーエージェントのAI SCREAMは、複数のAIモデルを統合し、広告素材の生成や動画広告の実用化を進め、累計生成数や制作時間削減の実績を公表しています。

博報堂プロダクツのAI Craft Studioは、AIを扱う専門職「ジェネレーター」を新設し、品質、効率、安全性を両立する制作体制を掲げています。

電通のAI For Growth Creative Linesは、ブランド表現、パフォーマンス広告、制作プロセス変革をまとめて扱うサービスとして動き出しています。

ここで出てくる「BPO」は、業務の一部を外部に委託することです。

広告制作でいえば、企業が自社で全部作るのではなく、AIを活用した制作体制を持つ広告会社に、量産や運用改善まで任せる流れを意味します。

「BPR」は業務改革のことで、単にAIを一部に入れるのではなく、作り方そのものを組み替える考え方です。

「マルチモーダル」は、文章、画像、動画、音声など複数の種類のデータをまたいで扱うAIのことです。

「プロンプト」はAIへの指示文で、「生成クレジット」はAI機能を使うための利用単位です。

専門用語だけを見ると難しそうですが、要するに広告制作は「職人が一枚ずつ作る世界」から、「人が方向性を決め、AIが大量の候補を出し、人が最後に判断する世界」へ移りつつあります。

この変化に戸惑う人がいるのも自然です。

まず、イラストレーター、デザイナー、フォトレタッチャー、映像編集者にとっては、自分たちの技能が安く買い叩かれるのではないかという怒りがあります。

「AIで制作時間が3割減りました」という発表は、企業にとっては効率化の成果ですが、現場の人にとっては「では人件費も3割減らすつもりなのか」と聞こえる可能性があります。

さらに、AIが学習に使った画像や文章の権利問題も、怒りの大きな火種です。

自分の作品が知らないうちに学習に使われ、そのAIが自分の仕事を奪うような構図に見えれば、「それは泥棒が合鍵を作って引っ越し業者まで始めたようなものではないか」と感じる人も出てきます。

2024年にはAdobeの利用規約をめぐって、ユーザーの作品がAI学習に使われるのではないかという不信が広がりました。

Adobeは否定や説明を行いましたが、一度生まれた不信は簡単には消えません。

道具を信じられなくなったクリエイターにとって、制作ソフトは相棒ではなく、家の中を勝手に見回る大家さんのように見えてしまうからです。

Wacomの広告画像をめぐる反発も、同じ文脈で見られます。

絵を描く人のための道具を売る企業が、AI生成らしき画像を広告に使ったと受け取られたことで、「お客であるクリエイターを裏切ったのではないか」という怒りが広がりました。

生成AIそのものへの反発は、単なる新技術アレルギーではありません。

「誰の作品で学習したのか」「誰が報酬を得るのか」「誰が責任を取るのか」が曖昧なまま、制作現場だけが高速化されていくことへの抵抗です。

人々が強く不安に感じる点もいくつかあります。

ひとつは雇用です。

広告会社や制作会社がAIプラットフォームを整えれば、ラフ案、バナー展開、サイズ違いの量産、背景差し替え、簡単な動画編集などは、少人数で回せるようになります。

これは企業には便利ですが、若手クリエイターが経験を積む「下積みの仕事」が減る可能性があります。

昔ならバナーを100本作る中で、余白、色、視線誘導、文字の強弱を体で覚えました。

AIがその工程を肩代わりすると、若手は「完成品を選ぶ力」は鍛えられても、「なぜそう作るのか」を学ぶ機会が減るかもしれません。

もうひとつの不安は品質です。

AIは速いですが、ブランドの微妙な文脈、炎上しやすい表現、地域ごとの文化差、法規制、権利関係を常に正しく理解するわけではありません。

広告は目立てばよいものではなく、誰かを傷つけず、ブランドの約束を壊さず、法律や商習慣にも沿う必要があります。

AIが作った画像に、既存キャラクターに似た要素、実在人物に似た顔、差別的に見える構図、誤解を招く商品表現が混ざった場合、責任を負うのはAIではなく企業です。

SNSでの反対意見は、かなりはっきりしています。

「AIで作った広告なら、AI使用と明記してほしい」という透明性を求める声があります。

「クリエイターの仕事を奪ってコスト削減するだけではないか」という労働面の批判があります。

「学習データの権利が不透明なAIを商用利用するのは危険だ」という法務面の批判があります。

「大手広告会社だけがAI基盤を持ち、中小制作会社や個人クリエイターが不利になる」という業界構造への不満もあります。

「結局、似たような広告ばかり増えて、世の中がAIくさいビジュアルで埋まる」という美意識の反発もあります。

AIが広告制作を民主化するという見方もありますが、同時に、制作の主導権が巨大プラットフォームと大手代理店に集まるという見方もできます。

Photoshopの入口が奪われるという話は、Adobeだけの問題ではありません。

それは、広告制作の入口を誰が握るのかという問題です。

個人クリエイターが汎用AIを使って直接作るのか、広告会社の社内AI基盤で量産されるのか、Adobeのような既存ツール企業がAIを組み込んで主導権を保つのか。

この三つ巴の争いが、いまの広告制作現場で起きています。

興味深いのは、AIが人間の創造性を完全に消すというより、人間の仕事の場所をずらしている点です。

手を動かす時間は減り、指示を出す力、候補を見極める力、権利や炎上リスクを判断する力、ブランドの人格を守る力がより重要になります。

これからのクリエイターは、筆が速いだけでは足りず、AIに何を任せ、何を任せないかを決める編集者のような能力が求められます。

ただし、ここで「人間はディレクションだけやればよい」と言い切るのは危険です。

手を動かした経験がない人は、AIの出力のどこが雑なのか、どこが危ないのかを見抜けないことがあります。

料理をしたことがない人が、AIに「いい感じのフレンチを作って」と頼んでも、塩と砂糖を間違えた皿を高級料理として出してしまうかもしれません。

広告制作でも同じです。

AI時代に必要なのは、手仕事を捨てることではなく、手仕事の知識を持った人がAIを使うことです。

プログラマーとして見ると、この流れはかなり自然です。

ソフトウェア開発でも、コードを一行ずつ書く時間はAIによって減っていますが、要件定義、設計、レビュー、セキュリティ、運用責任の重要性はむしろ増しています。

広告制作のAI化も同じで、単純作業は自動化されますが、最終的な責任と判断は人間側に残ります。

個人的な感想としては、AI制作基盤は便利な電動工具のようなものです。

電動ドリルがあるから大工が不要になるわけではなく、下手な人が使えば壁に穴を開けすぎるだけです。

AIも同じで、使いこなす人には武器になりますが、責任を考えずに振り回すと、広告どころかブランドの壁まで穴だらけになります。

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