書評 鋼鉄の城塞 戦艦大和の技術的限界
五十路のおじさん、ばっどです。
鋼鉄の城塞 ヤマトブジシンスイス
伊東潤
若い技術士官(士官学校卒ではなく、大卒でエンジニアとして軍人になった青年たち)の存在を通して描かれる戦艦大和の物語。
大和をテーマにした文学は各種ありますが、技術士官を通すことによって、超弩級戦艦という存在の理不尽、不合理が浮かび上がる佳作でした。
マクロな軍事論として航空戦力vs大鑑巨砲という言葉の対比は数限りなく語られてきましたが、大和建艦にフォーカスしたことで、技術そのものの難度、建艦過程の守秘による非効率、運用の効率の悪さ難度の高さと、読めば読むほど何故建造したんですか?という疑問が尽きません。
作る過程の大変さは、吉村昭の「戦艦武蔵」にも詳しく語られてますが、まぁ大変。
今の会社でもこういう形で自分の首を絞めることって多々あるよねぇ。。。とかなり感情移入。
で、運用。
3000人を超える乗員が一糸乱れぬ連携をとることでしかその巨艦は真のパフォーマンスを発揮できない。
その努力は尊いが、航空戦が主となり魚雷爆弾機銃掃射が浴びせかけられ、乗員損耗が不可避な戦闘では能力が維持できません。
また、主砲身の耐久性、燃費、弾薬コストなどを考えると、圧倒的戦力たり続けること自体が難しいことは明々白々。
100%の圧倒的なパフォーマンス維持はまさに画餅そのものと言えます。
本作ではこの辺が非常にクローズアップされていおり、作り手が主人公であるだけに大変胸苦しさを感じる仕上がりになっています。
そういう過程+個人的につらい経験を経て、主人公はある決断をします。
楽しい話ではないですが、戦史が好きな方であれば、読み応えのある物語じゃないかと思います。
そのうえでちょっと言っちゃいますすが、「すごいフィクション」の壁の高さを感じさせる作品ではあります。
えらそうにいえば、もうひと頑張り欲しかった。
それ何っては言えないですが、わかったら自分が作家になるって話です。
