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小説創作における『憑依型執筆スタイル』の考察と言語化への挑戦 第五章(中編)

第五章 憑依型に必要なもの(中編)

■情報を取捨選択するセンスの重要性

 これまでも述べてきましたが、執筆中(脳内の物語をライブ中継中)は非常に多くの情報が流れ込んできます。
 音、匂い、温度、視界に映るもの、生理現象などなど。これらの情報を全て拾ってしまうと、物語のノイズになります。ネット小説界隈でありがちな「文字数が多い=大作」という誤解もそうですが、多ければいいってものではありません。
 でも逆に、少なすぎてもダメです。その場の空気や時間の経過が描写出来ていなければ、「あれ?いつの間に移動したの?」や「この人たち、いつまでここに居るつもりなの?」と、読者が迷子になります。

 情報量の加減の話は、憑依型だけでなくプロット設計型にも言える共通の話ですが、ここからは、憑依型だからこその話になります。
 本当の意味で憑依型に必要なのは、『情報を拾う瞬発力
 文章力の重要性でも述べましたが、執筆のスピードが必要な中で、いちいち情報を選んでいる時間なんてありません。瞬時に拾うか捨てるかを決める必要があります。
 むしろ、決めるのではなく、勝手にフィルターが作動するくらいでないといけません。私はこのフィルターを『情報を取捨選択するセンス』だと考えています。

 センスと言うからには、早ければ良いというものではありません。適切で効果的な情報を拾わなくてはいけないでしょう。

 間違った情報の拾い方を例で挙げますと
 例えば、修羅場のシーンでありがちなのは、視覚による「相手は眉間にしわを寄せて、今にも殴りかかってきそうな形相だ」という描写。
 でもこれって、実はリアリティに欠ける情報なんです。
 だって、相手が怒っている時、普通は怖くて目を合わせませんので、相手がどんな表情なのか正確には分からないはずなんです。つまり、これはキャラの声ではなく、作者の声なんです。
 なので、私の場合は「腹減ってきたな・・・早く帰りたいけどめっちゃ怒ってるから、しばらく帰れそうにないな・・・」と、同じ『相手が怒っている』という描写でも、こちらのほうが、修羅場としては現実あるあるでリアルになるんです。

■取捨選択のセンスは、個性にもなる

 どのような情報を選んで拾うかというのは、憑依型の中での個性になるとも考えています。

 また私の話になるのですが、第四章で出てきた『生活憑依型』というのがまさしく私の個性になります。これは私が生活に関する情報を拾うクセが強いために、『生活憑依型』とカテゴライズされたわけです。
 具体的には、「トイレの便座を上げっぱなし」だとか、「コンビニでドリンクコーナーの扉を開けたら自分より先に他の人の手が伸びて先にドリンクを取られた」とか、「ヒロインが泣いている時に鼻水が垂れていた」とか、「修羅場なのに尿意が気になりだす」とか、生活に密接した情報を拾ってしまうクセがあって、それが私の個性(センス)になっているということです。

■センスを磨くには

 では、そのセンスは、どうすれば鍛えられるの?という話になりますが、正直に言えば、分かりません。
 文章力と同じで、ただひたすら執筆するだけで鍛えられそうだし、センスがある人(上手い人)の作品をたくさん読めば勉強になるでしょう。
 ですが、瞬発力と感性の両方を磨けるのか?というと、いまいち弱く感じます。

 ただ、自分のことを振り返ると、このセンスを強く意識して(研ぎ澄ませて)執筆するタイミングがあります。それを繰り返すことで、取捨選択のセンスは磨かれる(最適化される)とは思います。

 ずばりそれは、短編小説の執筆です。
 短編小説って、ネット小説界隈だと『1話で完結したもの』を短編とジャンル付けしている傾向がありますが、本来の短編は『とあるワンシーンを切り取ったドラマを、文字で表現するもの』だと思うのですよ。
 プロット設計型にありがちなのが、短編なのにキャラが自己紹介や世界観の説明を始めたりして、「いやソレ、短編じゃなくてプロットそのものじゃん」って突っ込みたくなるものが多いんですよね。

 でも、それは本来の短編ではありません。
 短い文章で、その場の空気や温度を表現したものを短編小説だと言えると思うのですよ。
 だから、少ない情報で、如何にその場面を的確に描写できるかが勝負になります。
 まさに、ジャズの即興プレイなんです。
 つまり、短編ほど、情報の取捨選択のセンスが重要だと言えます。
 なので、短編を書いていれば、センスが磨かれるのかな?とは思います。

 この短編小説での訓練に関しては、あくまで『私の場合は』と念押しさせて頂きます。

 ※私がどのような情報の拾い方をしているのか興味がありましたら、短編集『悪意』をご参照ください。
https://kakuyomu.jp/works/16818792436445669531

第五章(後編)につづく。

※このエッセイは、小説投稿サイト『カクヨム』と『小説家になろう』でも公開しています。


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