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マーケティングで最初にやるべきことは、施策を考えることではない

「売上を伸ばすために、何をやるべきでしょうか」


この質問をすると、広告、SNS、CRM、キャンペーン、サイト改善といった施策が並びます。


どれも有効な施策かもしれません。


しかし、マーケティングで最初に決めるべきなのは、施策ではありません。


何の数字を変えるのかです。


変える数字を決めないまま施策を選ぶと、効果がありそうなことを少しずつ実行するだけになります。


結果として、人も予算も時間も分散します。


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【施策は、変数を動かすための手段】


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広告を出す。


SNSを運用する。


店舗を増やす。


価格を変える。


こうした施策には、それぞれ異なる役割があります。


広告は、主に認知や購入確率を変えるための手段です。


店舗や販売チャネルを増やす施策は、購入できる場所を増やすための手段です。


価格改定や商品構成の変更は、単価や購入確率に影響します。


つまり、施策そのものに価値があるのではありません。


変えるべき数字を、実際に変えられる施策に価値があります。


だから施策を考える前に、まず売上を構造として捉える必要があります。


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【売上を、六つの変数に分解する】


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事業によって細かな違いはありますが、私は売上を考えるとき、まず次のような変数に分解します。


・市場


・認知


・配架


・購入確率


・購入頻度


・単価


簡略化すれば、売上はこれらの変数の掛け算として捉えられます。


市場が大きくても、商品を知られていなければ売れません。


知られていても、買える場所になければ売れません。


買える場所にあっても、選ばれる確率が低ければ売れません。


一度買われても、継続されなければ売上は積み上がりません。


そして、購入数が同じでも、単価が変われば売上は変わります。


売上を一つの数字として見るだけでは、何を変えればよいのか分かりません。


分解して初めて、どこが結果を制約しているのかを考えられます。


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【どの変数を動かせるのか】


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六つの変数は、すべて同じようにコントロールできるわけではありません。


市場規模は、通常、一社の短期的な取り組みだけで大きく変えられるものではありません。


購入頻度も、商品特性や利用場面による制約を強く受けます。


毎月買う必要のない商品を、施策だけで毎週買ってもらうことはできません。


一方、企業がマーケティング活動を通じて比較的コントロールできるのは、次の四つです。


・認知


・配架


・購入確率


・単価


認知は、広告やPR、店頭露出、口コミ、コンテンツなどを通じて改善できます。


配架とは、単に店舗の棚へ置かれることだけではありません。


顧客が商品やサービスを購入できる場所、接点、機会の広さです。


購入確率とは、購入可能な人のうち、実際に自社を選ぶ割合です。


単価とは、一回の購入で得られる売上です。


もちろん、どの変数も無限に動かせるわけではありません。


重要なのは、動かせるかどうかだけではなく、使えるリソースでどこまで動かせるかを見積もることです。


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【使えるリソースで、どこまで伸ばせるか】


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例えば、認知を伸ばすには広告費や露出機会が必要です。


配架を増やすには、営業担当者の工数、取引条件、在庫、物流、販売先との交渉が必要です。


購入確率を上げるには、商品の価値を分かりやすくする、購入時の不安を減らす、クリエイティブや商品を改善するなどの取り組みが考えられます。


単価を上げるには、価格改定、上位商品の提案、セット販売、商品構成の変更などがあります。


しかし、可能な施策を並べるだけでは不十分です。


それぞれに必要な予算、人数、時間と、期待できる売上をシミュレーションします。


例えば、現在の売上が次の構造だったとします。


・認知している人が10万人


・購入可能な割合が50%


・購入確率が10%


・平均単価が5,000円


この場合、売上は2,500万円です。


認知を10万人から12万人へ増やせば、他の条件が同じなら売上は3,000万円になります。


購入確率を10%から12%へ上げた場合も、売上は3,000万円です。


単価を5,000円から5,500円へ上げた場合は、売上は2,750万円です。


同じ売上効果でも、必要な予算や時間、成功確率は異なります。


だから、期待効果だけではなく、実行に必要な資源まで比較します。


現実には、一つの変数を動かすと、別の変数も動きます。


値上げをすれば、単価は上がっても購入確率が下がるかもしれません。


認知を広げても、購入できる場所が足りなければ売上にはつながりません。


一つの数字だけを都合よく動かすのではなく、複数のシナリオを置き、売上、利益、実行可能性を確認する必要があります。


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【戦略とは、変える変数を選ぶこと】


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仮に、認知、配架、購入確率、単価のすべてに改善余地があったとしても、すべてへ同じように投資できるとは限りません。


人も、予算も、時間も限られています。


だから比較します。


・改善した場合、結果はどれだけ変わるのか


・改善に、どれだけの資源が必要なのか


・実行するまでに、どれだけ時間がかかるのか


・一時的な効果ではなく、継続できるのか


・他の変数へ悪影響を与えないか


その上で、最も結果が変わる可能性が高い変数へ、使えるリソースを集中させます。


私が考えるマーケティング戦略とは、施策の一覧を作ることではありません。


変える変数を選び、その変数を動かすために、人、予算、時間を配分することです。


「全部大切なので、全部やる」は戦略ではありません。


何をやるかと同時に、何をやらないかを決める必要があります。


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【数字を動かす前に、社内を動かす】


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実務では、シミュレーション上の正解が、そのまま実行されるとは限りません。


認知を増やすには予算が必要です。


配架を増やすには営業や物流の協力が必要です。


価格を変えるには、経営や営業の合意が必要です。


商品を改善するなら、開発や製造も関わります。


つまり、変えたい数字が分かっても、その数字を動かす権限がマーケティング部門にあるとは限りません。


この調整は、実際にはかなり大変です。


部門ごとに目標が違い、予算の使い道も違います。


全社では合理的な判断でも、特定の部門にとっては負担が増えることがあります。


だから、優れた戦略を作るだけでは足りません。


なぜこの変数を伸ばすのか。


どの程度の売上や利益が期待できるのか。


他の選択肢より、なぜ優先するのか。


実行しない場合、何を失うのか。


これを説明し、社内の意思決定を動かす必要があります。


逆に言えば、マーケティング責任者がPL責任を負いながら、価格、販路、商品、販促といった主要な変数を動かす権限まで持つ組織は、とても強いです。


結果に責任を持つ人と、結果を動かす権限を持つ人が一致しているからです。


数字を見ながら、どの変数に投資するかを素早く決め、実行し、結果を見て修正できます。


多くの企業では、この責任と権限が複数の部門に分かれています。


そのため、正しい戦略が分かっていても実行までに時間がかかり、部門最適によって全体最適が崩れることがあります。


どの変数を動かすかだけではなく、その変数を自社の組織で本当に動かせるのか。


そこまで含めて考えて初めて、実行できる戦略になります。


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【マーケティングは、施策探しから始めない】


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売上が伸びないとき、新しい施策を探すこと自体が悪いわけではありません。


しかし、施策から始めると、流行している手法や、社内で声の大きな人が支持する案へ引っ張られます。


先に見るべきなのは、売上の構造です。


市場、認知、配架、購入確率、購入頻度、単価に分解する。


その中から、現実にコントロールできる変数を選ぶ。


使えるリソースで、どこまで伸ばせるかをシミュレーションする。


そして、最も結果が変わる場所へ資源を集中させる。


施策を考えるのは、その後です。


今後の記事では、それぞれの変数について、もう一段具体的に書く予定です。


・認知を、何で測り、どう伸ばすのか


・配架や購入可能性を、どう評価するのか


・購入確率を、どう測り、どう改善するのか


・購入頻度を上げられる事業と、上げにくい事業の違いは何か


・単価を上げながら、売上や利益を伸ばすには何を見るべきか


測定方法も、伸ばし方も、変数によって異なります。


まず決めるべきなのは、どの施策を実行するかではありません。


限られた資源を使って、どの変数を変えるのかです。


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