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“好き”を後押しするブランドへ。「PAY ID」ロゴ刷新の裏側にある、立ち位置のデザイン

こんにちは!
「BASE DESIGNER BLOG」編集部のライター・Michiroです。
ネットショップ作成サービス「BASE」プロダクトのBranding Divisionで、ブランドのテキスト・コミュニケーションをデザインしています。

今回は、購入者向けショッピングサービス「PAY ID」のロゴ刷新について、プロジェクトを担当したProduct Division Design Section Mgr・キタさん(北村 直巳)さんに取材しました!

2026年5月7日、「PAY ID」のロゴがリニューアルされました。
今回の刷新では、ロゴデザインだけでなく、サービス名称の表記も「Pay ID」から「PAY ID」へ変更されています。

一見すると、三角形と円を横に並べた、とてもシンプルなロゴ。
でも、そのミニマルな形の裏側には、「PAY ID」というサービスの立ち位置をもう一度見つめ直し、これからのブランドのあり方を整理していくプロセスがありました。

テーマは、
「PAY IDは、誰のために、どんな存在であるべきか」
を、デザインから考え直すこと。

今回は、ロゴ刷新の背景、外部パートナーとの協業、コンセプトの作り方、色や形の意思決定、そしてこれからの「PAY ID」について、デザイナー視点で振り返っていきます。


1. 出発点は、「『PAY ID』とは何者なのか」をもう一度考えること

2026年5月7日にリニューアルされた、「PAY ID」の新ロゴ

今回のロゴ刷新は、前のロゴにネガティブな課題があってはじまったものではありません。

むしろ、これまでのロゴも、当時の「Pay ID」(今回のロゴ刷新にともない、テキスト表記も『PAY ID』に変更)が置かれていた状況や課題に対して、きちんと考え抜かれて作られたものでした。

当時は、BASEの購入者向けアプリとしての立ち位置から離れ、「Pay ID」という独立したブランドとして認知してもらうことが大きなテーマでした。
だからこそ、BASEのイメージに強く寄りすぎず、新しいブランドとして立つための独自性が求められていました。

一方で、今回の刷新で向き合ったのは、さらにその先のフェーズです。
「PAY ID」は、BASEで開設されたショップでの購入体験を支えるだけでなく、今後さらに提供領域を広げていくことを見据えています。

そのときに、「PAY ID」というブランドが、どんな役割を持ち、どんな価値を届ける存在なのか?
したがって、もう一度、ブランドの立ち位置から考え直す必要がありました。

つまり、今回のロゴ刷新は、単なる見た目の変更ではありません。

「PAY ID」というブランドが、これからどこへ向かうのか。
そのために、いま何を変え、何を残すのか。
その問いに、デザインで答えていくプロジェクトだったのです。

2. 主役は、ショップと購入者。「PAY ID」は、その間にいる“黒子”

「PAY ID」のブランドを考えるうえで、チームがずっとたいせつにしてきた考え方ーーそれは、主役はあくまでショップであり、ショップオーナーであり、そこに並ぶ商品であり、それを「好き」と思って買う購入者である、ということです。

「PAY ID」は、購入体験を支えるサービスです。
でも、「PAY ID」そのものが過度に前に出ることが、いつも正解とは限りません。

たとえば、購入者が本当に見ているのは、決済手段そのものではなく、ほしい商品であり、その商品を販売しているショップです。
「PAY ID」は、その「好きなものが買える」体験を、できるだけスムーズに、安心して進められるように支える存在です。
言い換えるなら、「PAY ID」は“黒子”のような立ち位置でもあります。

ただし、黒子であることと、ブランドとして弱いことは違います。
むしろ、ショップと購入者の間に立つ存在だからこそ、安心感や親しみやすさ、そして「この決済なら、使っても大丈夫」と思える信頼感が必要になります。

目立ちすぎない。
でも、ちゃんと選ばれる。
前に出すぎない。
でも、必要なときにはしっかり認識される。

このバランスをどうつくるかが、今回のブランド刷新における、大きなテーマでした。

3. 外から見た「PAY ID」を知るために、外部パートナーと組む

前回のロゴ制作は、社内のデザイナーを中心に進められました。
一方、今回は、外部パートナーといっしょに、ブランドの立ち位置から見直すことになりました。

お願いしたのは、クリエイティブアソシエーション<CEKAI>に所属するアートディレクター/グラフィックデザイナーの安田昂弘さん。

外部パートナーと組んだ理由は、たんに「新しい表現を提案してもらう」ためだけではありません。
社内のメンバーは、「PAY ID」というサービスに長く向き合ってきたからこそ、その文脈や歴史を深く理解しています。

それは大きな強みである一方で、ずっと内側から見ているからこそ、見えにくくなることもあります。
「PAY ID」は、外から見たときに、どんなサービスに見えているのか。
BASEとの関係性は、どう受け取られるのか。
決済サービスとして、アプリとして、ブランドとして、どんな印象を持たれているのか。
そうした視点を取り入れるためにも、外部のデザイナーと協業する意味がありました。

北村さんは、安田さんに依頼した理由について、デジタルプロダクトだけでなく、リアルな空間やパッケージ、イベント、店舗など、さまざまなタッチポイントで成立するデザインを手がけていることが大きかった、と話します。

「PAY ID」は、アプリやWebの中だけで完結するブランドではありません。
これからキャンペーンやイベント、外部のサービスとの接点など、さまざまな場所でユーザーと出会っていく可能性があります。

だからこそ、画面の中だけで強いロゴではなく、リアルな場所でも、プロダクト上でも、同じ温度感で機能するブランド表現が必要でした。

デジタルでも、リアルでも、
小さなアイコンでも、大きなビジュアルでも。
「PAY ID」らしさを一貫して伝えられること。

この視点が、外部パートナー選定の大きな軸になっていました。

4. 「ロゴを改善する」ではなく、「ブランドの立ち位置」を考える

プロジェクトがはじまって、まずおこなわれたのは、「これまでのロゴがどのような経緯で作られたのか」を共有することでした。

前回のロゴは、BASEのアプリから「Pay ID」へとブランドを切り替えていく中で、BASEの印象に引っ張られすぎず、独自性を持たせることを意識して作られていました。

その背景を共有したうえで、安田さんから出てきたのは、「ロゴ自体の改善」というよりも、「外から見たときに、『PAY ID』というブランドをどのような立ち位置に置くべきか」という視点でした。

リブランディングやロゴ刷新というと、ともすれば「大きく変えること」そのものが目的になってしまうことがあります。
でも、今回のプロセスでは、いきなり形を変えるのではなく、まずブランドの構造を理解し、そのうえで何を残し、何を変えるべきか、を整理していきました。

「PAY ID」は、BASEから生まれたサービスです。
でも、BASEそのものではありません。
購入者向けショッピングサービスであり、決済であり、ショップと購入者をつなぐ存在、でもあります。

この立ち位置は、シンプルに見えて、じつはとてもむずかしい。
だからこそ、表面的なデザイン変更ではなく、ブランドの理解から入る必要がありました。

北村さんも、安田さんとのやりとりについて、「PAY ID」というサービスの立ち位置のむずかしさをとてもよく理解してもらえたことが大きかった、と振り返ります。

過去の経緯を受け止める。
そのうえで、いまの「PAY ID」に必要な表現を考える。
そのコミュニケーション自体が、すでにデザインの一部だったのかもしれません。

5. 三角形と円。BASEの魂を残しつつ、「PAY ID」として立つ

過去の経緯を踏まえながら、「PAY ID」の立ち位置を再定義するために、複数案を検討

初回の提案では、さまざまな方向性のロゴ案が提示されました。
そのなかで、現在のロゴにつながる案は、三角形と円を組み合わせた、とてもミニマルなものでした。

三角形は、「PAY ID」のはじまりでもあるBASEを想起させる形。
円は、人ーーつまり購入者を表す形。
この2つを横に並べることで、ショップと購入者をつなぐ、「PAY ID」の役割を表現しています。

さらに、三角形と円の組み合わせは、「PAY ID(ペイ アイディー)」の発音のはじまりである「ペ」の形にも見えます。
言われてみると「ああ、なるほど」と思うけれど、強く説明し過ぎない。
この“ちょうどよさ”も、今回のロゴの魅力です。

見た瞬間に、すべての意味が伝わるわけではない。
でも、知ると腑に落ちる。
そして、知ったあとも説明っぽく見えない。

このバランスは、「PAY ID」というサービスの立ち位置とも重なります。

「PAY ID」は、購入体験の中で前に出過ぎる存在ではありません。
でも、そこにあることで、ショップと購入者の距離を近づけ、好きなものを買う体験を支えています。
ロゴも同じように、強く主張しすぎるのではなく、ミニマルな形のなかに、サービスの思想を静かに込めているのです。

北村さんが、このロゴについて「BASEの魂は残しつつ、『PAY ID』として立っている」と表現していたのが印象的でした。

BASEから生まれたサービスであること。
でも、「PAY ID」として独立したブランドであること。
その両方を、三角形と円という最小限の形で表現する。
削ぎ落としたからこそ、立ち位置が見えてくるロゴになっています。

6. 最後まで悩んだのは、色の意思決定

形と同じくらい、あるいはそれ以上に印象を大きく左右するのが、色です。

前のロゴは、ブルーを基調としたカラーでした。
ブルーには、清潔感や安心感、信頼感を伝えやすい一方で、決済サービスらしさが強く出る色でもあります。

今回のロゴでは、円にオレンジ、三角形にやわらかなベージュが使われています。
このカラーによって、「PAY ID」の印象は大きく変わりました。
より明るく、ポジティブで、コンシューマー向けのサービスらしい表情になっています。

とはいえ、色の決定は、スムーズに一直線で決まったわけではありません。
社内では、これまでの印象とのつながりを考え、ブルーを残した案も検討しました。
ロゴを大きく変えることは、ブランドの見え方を大きく変えることでもあります。
だからこそ、慎重になるのは当然です。
でも最終的には、安田さんからの提案も踏まえ、最初に出ていたカラー案で進めることを決めました。

「変えるなら、ちゃんと変える」
そんな意思決定だったのだと思います。

ブランドを刷新する以上、以前の印象を中途半端に残すのではなく、「PAY ID」がこれから向かう方向へ、きちんと舵を切る。
オレンジとベージュの組み合わせは、その意思を視覚的に伝えるものになっています。

ブルーを残す案も検討しながら、最終的にはより明るくポジティブな印象のカラーへ

7. ロゴが変わっても、購入体験の主役は変わらない

ロゴが切り替わってから、ユーザーからは「アイコンが変わった」といった反応も、少しずつ届いているそうです。

もちろん、ロゴが変われば、前のほうがよかったという声もあります。
似ているものに見える、という反応も出てきます。

新しいものが出ると、たいてい何かしら言われるもの。
ただ、北村さんは、そこに大きなハレーションは起きていない、といいます。
それは、「PAY ID」がユーザー体験の中で、必要以上に前に出るサービスではないこととも関係しています。

購入者にとってたいせつなのは、好きなショップであり、好きな商品を、安心して買えること。
ショップオーナーにとってたいせつなのは、購入者に気持ちよく、安心して買ってもらえること。
ロゴが変わっても、その体験が崩れなければ、サービスは自然に使い続けてもらえるでしょう。

だからこそ、「PAY ID」にとっての本当の勝負は、これからであると感じます。
新しいロゴが、日々の購入体験の中で、少しずつ見慣れていくこと。
そして、今後「PAY ID」がさらにさまざまな場面で使われるようになったときに、「これは『PAY ID』なんだ」と、自然に認識されること。

ロゴ刷新は、ゴールではありません。
これから「PAY ID」というブランドを育てていくための、スタートラインなのです。

8. デザイナーの仕事は、媒体ではなく、体験を大きくすること

取材の後半では、北村さん自身のデザイナーとしての考え方についても、お話をうかがいました。

「PAY ID」は、アプリでもあり、Web上の購入体験でもあり、管理画面でもあり、決済でもあります。
さまざまな接点がありますが、北村さんは「アプリだから」「Webだから」という違いはあっても、デザイナーとしてやるべきことの本質は変わらない、と話します。

対象となるユーザーを理解する。
使い勝手を考える。
ビジネス上の要件を、ユーザー体験としてどう実現するかを考える。
そして、プロダクトとして形にする。

それは、BASEでも「PAY ID」でも、アプリでもWebでも変わりません。
たいせつなのは、媒体ではなく、そのサービスをどう大きくしていくか。
そして、ユーザーにどんな体験を届けるか。
この考え方は、今回のロゴ刷新にも通じています。

ロゴは、ただのビジュアルではありません。
プロダクト、決済、アプリ、キャンペーン、イベント、外部サービスとの接点など、「PAY ID」がこれから出会うあらゆる場所で、ユーザー体験の入口になります。
だからこそ、ロゴを変えることは、見た目を変えることではなく、体験の輪郭を整えることでもあるのです。

9. AIも、チームも、ブランドも。これからの「PAY ID」を育てるために

取材の最後には、今後のデザインや、チームづくりについても話が広がりました。

AIによって、デザイナーの仕事は大きく変わりつつあります。
北村さんも、コストダウンできるところ、AIに任せられるところは、どんどん任せていきたいと話します。
一方で、AIがあるからこそ、人間の判断軸は、より重要になります。

何が「PAY ID」らしいのか。
何がユーザーにとってわかりやすいのか。
何を変え、何を残すべきなのか。

そうした判断は、専門性を持った人間が握る必要があります。

そして、それは一人のデザイナーやマネージャーだけが持っていればよいものではありません。
チーム全体が、「PAY ID」としての判断軸を持ち、自律的に動けるようになること。
北村さんは、これからの「PAY ID」チームを大きくしていくうえで、そんなところにもしっかり力を入れていきたいと話していました。

ブランドは、ロゴだけで育つものではありません。
日々の意思決定、プロダクトの改善、ユーザーとの接点、チームの動き方。
そのすべてが積み重なって、ブランドになっていきます。
今回のロゴ刷新も、その積み重ねの一つ、なのです。


今回、「PAY ID」のロゴ刷新について印象的だったのは、最後まで「主役を取り違えない」姿勢でした。

「PAY ID」は、ショップと購入者の間に立つサービスです。
好きなショップで、好きなものを買う。
その体験を、もっとかんたんに、もっと安心できるものにしていく。
新しいロゴは、そのための目印です。

三角形と円という、とてもシンプルな形。
でも、その背景には、BASEから生まれたサービスとしての文脈、「PAY ID」として独立していく意思、そしてショップと購入者をつなぐ存在でありたい、という思想が込められています。

ロゴを変えることは、ブランドを派手に見せることではありません。
「PAY ID」がこれから何者として立っていくのかを、あらためて定義すること。
その意味で、今回のロゴ刷新は、「PAY ID」がこれからさらに広がっていくための、静かで力強い一歩なのだと思います。


今後もBASEデザインチームのさまざまなデザインアプローチや取り組み、チームの雰囲気を発信してまいります。

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