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想い、馳せる / 平常

そして、翌日。
告別式の前に、故人との最後の食事として朝食が用意されるとの事で、朝早く家を出る。
夫は、どうしても勤務調整出来ず、仕事に向かった。
我が家からは私と子供達の4人。
子供達はそれぞれ、学校を忌引でお休み。
朝、それを伝えると、何でもないように「仕方が無いよ。」とか、「ひぃおばあちゃんのお葬式だもんね。」とか言いつつ、口元が少しニヤけたのを、私は見逃さない。
次男に至っては、めちゃくちゃ笑顔。
正直過ぎる。
まぁ、どんな理由でも、学校休めるのが嬉しいのは分かる。
ただ一言。

「でも、今日は結構忙しいからね?朝食から始まって、告別式、火葬場、初七日法要まであるから、帰ってくるのは夕方だよ。」
「あれ?うちのおじいちゃんおばあちゃん(曾祖父母)の時って、朝ごはん皆で食べたっけ?」
「ん?いや。各自で食べてから葬儀場に行ったよ。そこはほら、市も葬儀会社も違うから。」
「あー⋯なるほど。」

ここ数年、葬儀や法事が多い我が家。
子供達も落ち着いている。
私が長男の年に、実家の祖父が亡くなった時は、分からない事だらけで、終始落ち着かなかったなぁ。
通夜も告別式もあまり思い出せない。
断片的に、狭い実家で行ったな、とか、母の職場の人が受付をやってくれたな、とか、その程度。

「それに、同じ仏教でも宗派が違うと、お経さんも少し違うよ。」
「そうなの?」
「うん。私、こっちに来て初めてお寺さん来た時、びっくりした。」
「「「へー。」」」

そんな話をしながら、今日も車を走らせる。
片道1時間半。
思ったよりも、心は平常。

わいわいと、朝食を食べる。
思っていたよりも、豪勢なお膳。
写真に撮って、お仕事中の夫に送信。
夫の朝ごはんは菓子パン。
ふふふ⋯きっと、羨ましがってる。
子供達も、「いやー、パパ仕事だから仕方無いよ。」と言いながら顔が笑ってる。
パパ、どんまい。

食事が終わり、控え室に戻ると、それぞれ身支度を整えはじめる。
従妹は昨日、葬儀場に泊まったようで、荷物を纏めながら忙しそうだ。
叔母と口論を交えて、イライラモード。
妹は、まだ5歳の甥っ子が落ち着かないため、後について朝から喧しい。
まぁ、だいたい定番の光景。
それらをBGMに、我が家の4人はまったりモード。
たまに、何故か長女が妹に捕まって長々話し掛けられてたり、次男が義父の話に付き合ったり。
“ヘルプ ミー!”と、心の声を顔に張り付かせた長女と目が合う。
笑顔で“頑張れ!”と親指を立てて、私と長男はスルースキル発動中。

開始時間が近付き、子供達に声を掛け、それぞれトイレを済ませ、会場に入る。

静かな会場。
今より、少し若い祖母の遺影。
平常な心に、少し重さが乗る。

午前10時。
厳かな空気の中、静かに、告別式が始まったーー。


#エッセイ #私小説 #記憶 #家族

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