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冷房で体調を崩さないための科学――「エアコンは体に悪い」は本当なのか?

夏になるとよく聞くのが、

「冷房に当たりすぎて体がだるい」
「エアコンで風邪をひいた」
「冷房は体に悪いからなるべく使わない」

という話です。

しかし、猛暑の日本で冷房を我慢することは、むしろ熱中症の危険を高めます。

では、なぜ冷房の効いた部屋に長時間いると「なんとなく体調が悪い」と感じることがあるのでしょうか。

ポイントは、冷房そのものを悪者にするのではなく、人間の体温調節と環境の関係を理解することです。

「冷房病」という病気があるわけではない

まず知っておきたいのは、一般に使われる「冷房病」や「クーラー病」は、特定の病気を示す正式な医学的診断名ではないということです。

冷房環境で、

だるい、頭が重い、手足が冷える、肩がこる、食欲がない――。

こうした症状が現れることはありますが、原因は一つとは限りません。

室温、湿度、気流、外との温度差、睡眠不足、脱水など、複数の条件を考える必要があります。

人間は体温を一定に保とうとしている

人間は周囲の温度が変化しても、深部体温を比較的一定に維持しています。

暑ければ皮膚の血管を広げ、汗をかいて熱を逃がす。

寒ければ皮膚の血管を収縮させ、熱が逃げるのを抑える。

この体温調節をコントロールしている中心の一つが脳の「視床下部」です。

つまり、猛暑の屋外から強く冷房された室内へ何度も移動すれば、体はそのたびに異なる環境へ対応しなければなりません。

ただし、「温度差で自律神経が壊れる」といった単純な説明には十分な科学的根拠がありません。

大切なのは、極端な温度環境を避け、自分が快適に過ごせる状態を作ることです。

冷房は「設定温度」だけで考えない

よく「冷房は28℃に設定すればいい」と言われます。

しかし環境省が目安として示している28℃は、エアコンの設定温度そのものではなく「室温」の話です。

同じ28℃でも、湿度、日射、服装、風の有無などによって体感温度は変わります。

したがって、

「必ず28℃」

と数字だけにこだわる必要はありません。

温湿度計なども参考にしながら、暑すぎず寒すぎず、快適に過ごせる室内環境を作ることが重要です。

冷風を体に当て続けない

同じ室温でも、エアコンの風が直接当たる場所では寒く感じることがあります。

特にオフィスでは、

「部屋全体は快適なのに、自分の席だけ寒い」

ということが起こります。

そんな場合は設定温度を大幅に上げるより、風向きを変える、席を調整する、薄手の上着を使うなどの対策が現実的です。

冷房対策は「エアコンを消す」ではなく、気流まで含めて調整すると考えるといいでしょう。

冷房による乾燥にも注意

エアコンは冷房時に空気中の水分を除去するため、条件によっては室内の湿度が下がります。

すると喉、鼻、目などに乾燥を感じる人もいます。

こまめに水分をとることに加え、室内の湿度を確認することも有効です。

ただし夏は湿度が高すぎること自体が不快感や熱中症リスクにつながるため、むやみに加湿する必要はありません。

「乾燥している気がする」だけで判断せず、湿度計で確認するのがおすすめです。

夜こそ冷房を上手に使う

「寝るときはエアコンを切ったほうが健康にいい」

とも限りません。

夏の高い室温は睡眠を妨げる可能性があります。

睡眠と温熱環境に関する研究でも、暑すぎる環境が睡眠に悪影響を及ぼすことが報告されています。

寝苦しいのに無理して冷房を切り、

何度も目が覚める

睡眠不足になる

翌日だるくなる

という状態では本末転倒です。

寝室も、自分が快適に眠れる温度に調整しましょう。

本当に怖いのは「冷房の使いすぎ」だけではない

日本の猛暑で特に注意したいのは、冷房を避けすぎることです。

環境省や厚生労働省も、熱中症予防のためエアコンを適切に使用するよう呼びかけています。

特に高齢者は暑さを感じにくくなることがあり、室内でも熱中症になる危険があります。

「冷房は体に悪い」

という思い込みから暑さを我慢するほうが、深刻な健康リスクにつながることがあります。

冷房は「避ける」のではなく「使いこなす」

夏を快適に過ごすポイントは、

冷房を使わないことではありません。

室温を確認する。
寒ければ風向きを変える。
薄手の上着を使う。
水分をとる。
夜も無理に冷房を切らない。

そして何より、暑さを我慢しない。

冷房は現代の猛暑から体を守ってくれる重要な道具です。

「エアコンは体に悪い」と怖がるのではなく、自分の体調と室内環境を見ながら上手に調整する。

それが、科学的に考えた夏の冷房との付き合い方なのです。

参考となる研究・資料

・環境省「熱中症予防情報サイト」
・厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」
・Okamoto-Mizuno K, Mizuno K. Effects of thermal environment on sleep and circadian rhythm. Journal of Physiological Anthropology, 2012.
・Cramer MN, Jay O. Biophysical aspects of human thermoregulation during heat stress. Autonomic Neuroscience, 2016.



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