【第2巻】読むビートルズ
第2章|実験と革新の時代
1965年、世界は大きな転換点を迎えていた。

アメリカではベトナム戦争が拡大し、若者の徴兵は急増。
反戦運動の火種が各地に広がり、社会は揺れていた。

出典:esquire
同じ年、
アメリカ南部では公民権運動が激しさを増し、
キング牧師の演説はテレビを通じて全米を駆け巡る。
一方でサンフランシスコやロンドンでは、
既存の価値観に背を向ける若者たちが新しい文化を生み出していた。

出典:alamy
カウンターカルチャー、LSD体験、東洋思想。
世界は物質的な豊かさと精神的自由を同時に求め、激しく変動していた。
ビートルズもまた、その渦中にいた。

前年、彼らは『A Hard Day’s Night』で映画と音楽の両面で頂点を極め、
世界ツアーでは空港にファンが殺到する“ビートルマニア”を経験した。

(Photo by Robert Whitaker/Getty Images)
だが、ジョン、ポール、ジョージ、リンゴの4人は、次第に「ただのアイドルバンド」という扱いに限界を感じ始めていた。

何万人もの観客が、演奏を一目見ようとスタジアムを埋め尽くした。
そのほとんどは、ビートルズのバッジを身につけ、
人気カルテットへの称賛を込めたプラカードを掲げる10代の少女たちだった。
ライブ会場ではファンの悲鳴が音をかき消し、演奏は自己満足に近い状態となる。ツアーは過酷さを増し、体力的にも精神的にも疲弊が進んでいた。

そんな中で彼らの創作欲求を揺さぶったのが、
アメリカから届いた一枚のレコードだった。
ボブ・ディラン『Bringing It All Back Home』

by Bob Dylan
出典:bestclassicbands
フォークシンガーとして知られていたディランがエレキギターを携え、詩的で知的な歌詞とロックサウンドを融合させたこのアルバムは、ビートルズに「ロックはもっと深くなれる」という可能性を突きつけた。

出典:rollingstone
ディランが教えてくれたのは、歌詞は単なる男女の恋愛だけじゃないってことだった。彼は僕らに扉を開いてくれたんだ。
(1997, Barry Miles著)
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時代のうねりと新たな地平

(Photo by Eyles/Daily Herald/Mirrorpix via Getty Images)
こうして1965年末、ビートルズはアルバム『Rubber Soul』の制作に取りかかる。この時期の彼らには、以前の“シングルヒット至上主義”とは違う意識が芽生えていた。
それまでポップミュージックは、テレビやラジオで消費される“軽い娯楽”と見なされていたが、ビートルズはアルバム単位での芸術的完成度を追求し始める。

(Photo by Mark and Colleen Hayward/Getty Images)
『Rubber Soul』は、初めてレコーディング期間を長く確保し、じっくりと作り込まれた作品となった。
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