『野木の女』― メルヘン物語 ―
柔らかな光に包まれた花畑。
白や淡いピンクの小さな花が一面に咲き、風に乗って花びらが舞っています。
その中央で――
一人の少女と、一人の青年が向かい合っています。
少女は質素な服をまとい、少し不安げでありながらも、まっすぐな目で青年を見つめています。
どこか“この場所に属していない存在”のような、繊細で儚い雰囲気を持っています。
一方の青年は、土に触れて生きる庭師のような姿。
エプロンに手袋、手には小さなスコップ。
彼は“整えられた美しさ”を象徴する存在であり、少女とは対照的です。
二人の間にあるのは、ただの距離ではなく――
「選ばれた花」と「野に咲く花」という、価値観の境界。
背景には、ぼんやりとした巨大な女性のシルエットが浮かび上がっています。
まるでこの世界そのもの、あるいは“運命”や“自然の意志”を象徴しているかのようです。
遠くには整えられた家々。
人の手で作られた秩序ある世界。
そして手前には、風に揺れる野の花。
誰にも管理されない、自由で強い生命。
この絵が語っているのはただの出会いではなく、
“価値の衝突”と“物語の始まり”の瞬間です。
第1章:風に紛れる花
昔々――
風が強く吹く町がありました。
その町では、
花は「選ばれるもの」でした。
美しく整えられた庭に咲く花だけが
人に愛され、
人に摘まれ、
人に飾られる。
そして、それ以外の花は――
誰にも見られず、踏まれ、忘れられる。
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