【取引所四季報⑧】Lighter(ライター)を徹底検証
ピーター・ティールとRobinhoodが支援する「個人手数料ゼロDEX」は、Hyperliquidを超えられるのか
仮想通貨の無期限先物市場では、長らくBinance(バイナンス)、Bybit(バイビット)、OKX(オーケーエックス)などの中央集権型取引所が圧倒的な存在感を持っていました。
しかし、2025年以降、その構図が大きく崩れ始めています。
まずHyperliquid(ハイパーリキッド)が、中央集権型取引所に近い操作性と高速注文を備えた分散型取引所として台頭しました。
続いて、YZi Labs(ワイジー・ラボ)などバイナンス創業者周辺の支援を受けるAster(アスター)が参入します。
そして、その次に急浮上したのが、今回取り上げるLighter(ライター)です。
Lighterは、イーサリアム上に構築された無期限先物型の分散型取引所です。
最大の特徴は、個人利用者の取引手数料を原則ゼロとしながら、
注文の照合
約定処理
清算
残高変更
が正しいルールに従って行われたことを、ゼロ知識証明によって検証可能にしようとしている点です。
公式サイトは、Lighterを「イーサリアム上に構築されたゼロ知識ロールアップ」と説明し、注文処理や清算を含むすべての操作について証明を生成するとしています。
つまりLighterが売っているのは、単なる手数料の安さではありません。
中央集権型取引所の速度を持ちながら、取引所運営者が不正をしていないことを暗号技術で検証できる市場
という、新しい取引所モデルです。
ただし、その背後にはHyperliquidとは正反対の資本構造があります。
Hyperliquidが「VC資金を入れない独立系DEX」を掲げる一方、Lighterには、
Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)
Ribbit Capital(リビット・キャピタル)
Haun Ventures(ハウン・ベンチャーズ)
Robinhood Markets(ロビンフッド・マーケッツ)
Coinbase(コインベース)
など、米国金融・仮想通貨業界の有力資本が並んでいます。
Lighterは、分散型金融の理想を追うプロジェクトであると同時に、米国の巨大資本がHyperliquidへ送り込んだ対抗馬でもあるのです。
1.Lighterとは何か
Lighterは、無期限先物取引を中心とする分散型取引所です。
無期限先物とは、満期のない先物契約です。
利用者は証拠金を預け、
ビットコインが上がると思えばロング
下がると思えばショート
のポジションを取れます。
満期がない代わりに、ファンディングレートと呼ばれる資金調整を通じて、先物価格と現物価格の差を小さくする仕組みが使われます。
Lighterは、この無期限先物市場をイーサリアムのレイヤー2上で提供します。
一般的なイーサリアム上の取引では、注文するたびにガス代が発生し、処理速度も高頻度取引には向きません。
そこでLighterは、注文や取消、約定処理の多くをイーサリアム本体の外側で高速処理し、最終的な正しさをゼロ知識証明によってイーサリアムへ提出します。
簡単に言えば、
注文は高速な専用環境で処理する
処理内容が正しいことを数学的に証明する
証明をイーサリアムへ記録する
という構造です。
2.「ゼロ知識証明」とは何か
ゼロ知識証明という言葉は、非常に難しく聞こえます。
しかし、Lighterにおける役割は比較的明確です。
中央集権型取引所では、運営会社のサーバー内部で、
誰の注文を先に処理したか
清算価格を正しく計算したか
特定利用者を優遇していないか
運営会社が自分に有利な注文を挟んでいないか
を利用者が完全に確認することはできません。
最終的には、取引所を信用するしかありません。
Lighterは、注文照合や清算処理が、あらかじめ公開されたルールに従って実行されたことを暗号学的に証明します。
公式には、注文のマッチングや清算を含むすべての操作が検証可能で、証明がイーサリアム上で公開検証されると説明されています。
ただし、ゼロ知識証明があるからといって、取引所全体のあらゆる問題が消えるわけではありません。
証明できるのは、主にシステムが定められた計算ルールどおりに動いたかどうかです。
一方で、
そのルール自体が公平か
価格情報が正しいか
シーケンサーが注文を拒否していないか
運営側が市場選定を恣意的に行っていないか
トークン配分が公平か
までは、別の問題です。
数学的に正しく処理された取引所が、経済的にも公平であるとは限りません。
3.個人取引手数料ゼロの仕組み
Lighterが急速に注目された最大の理由は、個人利用者の取引手数料を原則ゼロとしたことです。
一般的な取引所では、注文が成立すると、
メイカー手数料
テイカー手数料
が発生します。
取引回数が多いほど、手数料負担は大きくなります。
Lighterは、高度に最適化した注文処理と証明インフラによってコストを下げ、個人利用者についてはゼロ手数料を実現できると説明しています。
ただし、「すべての利用者が完全無料」という意味ではありません。
Lighterは個人利用者の通常取引を無料とする一方、APIを利用する高頻度トレーダーや機関投資家については、別の料金体系を採用しています。公開メインネット開始時にも、個人取引は無料、高頻度のAPI利用者には料金を課す方針が報じられました。
これは合理的な設計です。
個人がブラウザ上で数回注文する場合と、BOTが1秒間に大量の注文を出す場合では、取引所へ与える負荷が全く違います。
Lighterは、
個人利用者を無料で集め、ヘビーユーザーや機関投資家から収益を得る
という、フリーミアム型の取引所モデルを採用していると考えられます。
4.創業者ウラジミール・ノバコフスキーとは何者か
Lighterの創業者兼最高経営責任者は、Vladimir Novakovski(ウラジミール・ノバコフスキー)です。
ノバコフスキーは、Lighterを2022年に創業しました。
彼の経歴で興味深いのは、最初から仮想通貨業界の人物だったわけではない点です。
報道によると、ノバコフスキーは若くしてハーバード大学へ進学し、数学・経済・コンピューター分野に通じた起業家として活動してきました。
Lighter以前には、AIやソーシャルアプリ分野のスタートアップを運営していました。
新型コロナ禍には、オンラインで人と交流するサービスを展開し、約3,000万ドルを調達したものの、成長が鈍化したため、事業転換を決断したと語っています。
つまり、ノバコフスキーはジェフ・ヤンのような純粋な高頻度取引出身者とは少し異なります。
彼は、
数学的能力
AI開発
消費者向けサービス
ベンチャー資金調達
スタートアップの事業転換
を経験してきた、シリコンバレー型の連続起業家に近い人物です。
この経歴は、Lighterの作り方にも表れています。
Hyperliquidが、プロトレーダー向け取引基盤から徐々に一般利用者へ広がったのに対し、Lighterは最初から、
分かりやすい画面
手数料ゼロ
ポイント制度
招待制度
エアドロップ期待
大型VCによる信用補完
を組み合わせ、急速に利用者を集めました。
技術だけでなく、利用者獲得まで含めて設計されたDEXなのです。
5.背後にいるピーター・ティール系資本
Lighterの背後関係で最も重要なのが、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)です。
Founders Fundは、PayPal(ペイパル)共同創業者のPeter Thiel(ピーター・ティール)らが設立した米国の有力ベンチャーキャピタルです。
ピーター・ティールは、
PayPal
Palantir Technologies(パランティア・テクノロジーズ)
Facebook初期投資
防衛・監視技術
AI
仮想通貨
政治ネットワーク
などに広く影響力を持つ投資家です。
Lighterは2025年11月、Founders FundとRibbit Capitalが主導する資金調達で6,800万ドルを集め、企業評価額は約15億ドルに達したと報じられました。
投資には、
Founders Fund
Ribbit Capital
Haun Ventures
Robinhood Markets
が参加しました。
この資金調達は、株式だけではありません。
報道によると、投資契約には企業株式と将来発行されるトークンを受け取る権利が含まれていました。
つまりVCは、Lighterの会社価値だけでなく、LITトークンの値上がりからも利益を得られる構造です。
この点はHyperliquidと大きく異なります。
Hyperliquidは、VCへの事前販売を行わず、初期利用者への大規模エアドロップを中心としました。
Lighterは、利用者へエアドロップを行う一方で、チームと投資家にも供給量の半分を割り当てました。
したがって、Lighterは「完全なコミュニティ所有型DEX」ではありません。
米国の有力VCとフィンテック企業が、経営会社とトークンの両方に強い経済的利害を持つDEXです。
6.なぜRobinhoodが出資しているのか
Lighterの出資者として特に興味深いのが、Robinhood Markets(ロビンフッド・マーケッツ)です。
Robinhoodは、米国の個人投資家向け証券アプリを運営する上場企業です。
前回の記事で取り上げたように、同社はRobinhood Chainを通じて、株式やETF、未公開資産をブロックチェーン上へ移す構想を進めています。
Robinhoodがスタートアップへ直接投資することは、それほど多くありません。
そのRobinhoodがLighterへ出資したということは、単なる財務投資以上の意味を持つ可能性があります。
Lighterが持つのは、
高速な注文板
ゼロ知識証明
無期限先物
イーサリアム決済
機関投資家向けAPI
24時間稼働する市場
です。
Robinhoodが将来、株式トークンや現実資産のデリバティブを拡大する場合、Lighterの技術は非常に相性が良いと考えられます。
現時点で、Robinhood ChainとLighterの統合が正式に確定しているわけではありません。
ただし、Robinhoodによる出資は、Lighterを単なる仮想通貨先物DEXではなく、株式や現実資産を含む次世代取引基盤の候補として見ている可能性を示します。
これは公開情報に基づく推測ですが、Lighterの将来を考えるうえでは重要な点です。
7.Coinbaseも背後にいる
Lighter公式サイトには、Coinbase(コインベース)も支援者として掲載されています。
Coinbaseは米国最大級の暗号資産取引所であり、同時に、
カストディ
ステーブルコイン
機関投資家向け取引
Base(ベース)チェーン
ベンチャー投資
を手掛けています。
Lighterはイーサリアム上のDEXですが、背後には中央集権型取引所のCoinbaseと、証券会社のRobinhoodがいます。
これは矛盾しているようにも見えます。
しかし、米国金融企業にとっては、DEXを潰すより、成長するDEXへ出資して経済的利益を得る方が合理的です。
中央集権型取引所と分散型取引所の境界は、徐々に曖昧になっています。
Lighterは分散型の技術を使っていますが、資本面では米国の既存金融・仮想通貨産業と強く結びついています。
8.企業評価額15億ドルは妥当なのか
Lighterは2025年11月の資金調達で、約15億ドルの評価を受けました。
評価の根拠には、急増した取引量があります。
報道時点では、30日間の無期限先物取引量が約2,795億ドル、預かり資産総額が約11億5,000万ドルに達したとされました。
一時期には、取引量でHyperliquidやAsterを上回り、無期限先物DEX首位になったとも報じられています。
しかし、ここは慎重に見る必要があります。
Lighterは、
取引手数料ゼロ
ポイント付与
エアドロップ期待
招待報酬
を使って利用者を集めました。
この環境では、経済的な目的がなくても、ポイント獲得のために何度も売買する利用者が増えます。
一部の分析では、Lighterの取引量増加にはポイント制度が大きく影響しており、キャンペーン終了後も同じ取引量が維持されるかは不明だと指摘されました。
取引量は最も目立つ数字ですが、DEXでは操作されやすい指標でもあります。
実態を見るには、
未決済建玉
実際の預かり資産
継続利用者数
API利用者
手数料収入
キャンペーン終了後の定着率
を併せて見る必要があります。
9.LITトークンの配分
Lighterは2025年12月30日に、独自トークンLITを発行しました。
総供給量は10億枚です。
配分は大きく二つに分かれます。
利用者・提携先・成長報酬:50%
チーム・投資家:50%
利用者向けの25%、すなわち2億5,000万LITは、過去のポイント制度参加者へエアドロップされました。
残る25%は、将来のポイント制度、提携、成長施策などに使われます。
一方、チームと投資家には合計50%が配分され、一定のロック期間後、複数年かけて解除される設計です。
この配分は、DeFiコミュニティ内でも賛否が分かれました。
肯定的な見方では、
25%を利用者へ即時配布した
将来報酬を含めれば半分がエコシステム向け
チームが長期開発を続ける動機になる
という評価になります。
否定的な見方では、
チームとVCで50%は多い
将来の売り圧が大きい
分散型を名乗りながら内部関係者の影響が強い
投資家は株式とトークンの両方を持つ
という問題があります。
HyperliquidのHYPEと比べると、LITは明らかにVC色が強いトークンです。
10.ゼロ手数料で、どうやって儲けるのか
個人利用者の手数料がゼロであれば、Lighterは何で収益を得るのでしょうか。
考えられる収益源は主に次のとおりです。
API・高頻度取引利用料
BOT、マーケットメーカー、機関投資家など、大量の注文を送る利用者から料金を取ります。
個人の少額取引を無料にして流動性を集め、負荷と利益機会の大きいプロ利用者から回収するモデルです。
清算・取引インフラ
無期限先物市場では、清算や証拠金管理そのものが経済活動になります。
プロトコルが保険基金や清算機能を持つことで、一定の収益を得られる可能性があります。
将来の商品拡大
資金調達時、Lighterは複数チェーンへの展開、新たなデリバティブ、機関投資家向け収益化機能の開発を進めると説明しました。
将来的には、
株式先物
為替
商品
オプション
現物取引
取引基盤の外部提供
などへ広がる可能性があります。
つまり、ゼロ手数料は恒久的な慈善事業ではありません。
利用者を一気に集め、市場シェアを取り、後から機関投資家向けサービスや高度機能で収益化する戦略です。
11.中央管理者は本当にいないのか
Lighterは分散型取引所を名乗ります。
しかし、注文を並べるシーケンサーは、少なくとも現段階ではLighter側が運営する中央集権的な要素を持っています。
シーケンサーとは、利用者から届いた注文を受け取り、処理順序を決める装置です。
ゼロ知識証明によって、最終的な計算結果が正しいことは確認できます。
しかし、シーケンサーが、
注文の受信を拒否する
意図的に処理を遅らせる
サービスを停止する
可能性までは、証明だけで完全には防げません。
この問題に対応するため、Lighterは優先取引や緊急退出機能を用意しています。
ホワイトペーパーでは、シーケンサー障害や検閲時に、ポジション決済やイーサリアムへの出金を直接行うための仕組みが説明されています。
2026年5月には、シーケンサーが停止した場合でも、利用者がイーサリアム側から資産を引き出せる強制退出機能の検証完了が報じられました。
これは非常に重要な改善です。
ただし、普段の取引体験では、依然として中央シーケンサーへの依存が残ります。
したがってLighterは、
すべてが完全に分散化された取引所
というより、
中央処理の速さを使いながら、資産保全と計算の正しさをイーサリアムで保証する取引所
と表現する方が適切でしょう。
12.出金トラブル
Lighterでは、LITトークン発行直後の2025年12月30日、利用者から出金できないとの報告が相次ぎました。
トークン発行やエアドロップの直後はアクセスが集中しやすく、多くの仮想通貨サービスで障害が起きます。
しかし、分散型取引所を名乗る以上、
運営サーバーが混雑しただけで、利用者が資産を動かせなくなる
という状況は、理念との矛盾を突かれます。
その後、シーケンサー停止時でもイーサリアムへ直接退出できる仕組みが強化されたことは、この問題への回答と見ることができます。
ただし、緊急退出機能が存在しても、一般利用者が実際に簡単に使えるかは別問題です。
通常画面からの出金が止まったとき、コントラクトを直接操作できる利用者は多くありません。
技術的に退出可能であることと、初心者でも現実に退出できることは区別して考える必要があります。
13.BOTとの相性
LighterはBOT運用との相性が良い取引所です。
理由は、
高速注文板
低遅延
API
大量注文処理
高頻度取引向け料金体系
検証可能な約定処理
が用意されているからです。
公式サイトは、毎秒数万件規模の注文と取消を、ミリ秒単位の遅延で処理できると説明しています。
向いているBOTとしては、
マーケットメイクBOT
裁定取引BOT
板情報を使う短期BOT
ファンディングレート裁定
複数取引所間の価格差監視
清算監視BOT
などが考えられます。
ただし、API利用者は個人向けゼロ手数料の対象外になる可能性があります。
「手数料ゼロだから高頻度BOTに最適」と単純に考えるのは危険です。
BOT運用では、
API料金
注文数制限
約定率
スプレッド
サーバー距離
出金時間
シーケンサー障害
まで確認する必要があります。
14.Hyperliquidとの違い
LighterとHyperliquidは、いずれも無期限先物型DEXですが、思想と資本構造は大きく異なります。
Hyperliquid
独自レイヤー1
VC調達なし
初期利用者中心のトークン配分
創業者主導
独自の経済圏を構築
取引所とチェーンを一体化
Lighter
イーサリアム上のZKロールアップ
大手VCから資金調達
投資家とチームに50%配分
Robinhood、Coinbaseが支援
個人手数料ゼロ
正当性証明を重視
Hyperliquidは、既存金融から独立した金融国家を作ろうとしています。
Lighterは、イーサリアムと米国金融資本を組み合わせ、高性能な取引インフラを作ろうとしています。
どちらが優れているかは、利用者が何を重視するかによります。
独立性を重視するならHyperliquid
イーサリアムの安全性を重視するならLighter
VCの影響を嫌うならHyperliquid
大手企業との提携力を評価するならLighter
という違いがあります。
15.Asterとの違い
Asterは、YZi Labsやバイナンス関係者とのつながりを持つDEXです。
一方、Lighterの支援者は米国系です。
Asterの背後には、
バイナンス
BNBチェーン
中国系・華僑系仮想通貨人脈
が見えます。
Lighterの背後には、
ピーター・ティール
Robinhood
Coinbase
米国VC
イーサリアム経済圏
が見えます。
したがって、AsterとLighterの競争は単なるDEX競争ではありません。
バイナンス経済圏と米国フィンテック経済圏による、次世代デリバティブ市場の争奪戦
という側面があります。
Hyperliquidは、そのどちらにも属さない独立勢力として存在します。
この三つ巴が、現在の無期限先物DEX市場の核心です。2025年にはHyperliquid、Aster、Lighterが市場シェアを争う三大勢力として分析されました。
16.Lighterは本当に公平なのか
Lighterは、注文処理や清算の正しさを証明できることを強調しています。
これは確かに重要です。
しかし、公平性には複数の層があります。
技術的公平性
注文処理が公開ルールに従っているか。
この部分はゼロ知識証明によって改善されます。
経済的公平性
チーム、VC、一般利用者のトークン配分は公平か。
Lighterでは半分がチームと投資家向けです。
情報の公平性
大口投資家やマーケットメーカーが、一般利用者より有利な情報や接続環境を持っていないか。
高頻度取引では、わずかな通信速度差が利益になります。
統治の公平性
プロトコル変更、市場追加、手数料変更を誰が決めるのか。
LITトークンがあっても、チームと投資家が供給量の半分を持つ構造では、内部関係者の影響力が大きくなります。
したがってLighterは、
約定処理の公正さを強化した取引所ではあるが、経済・統治まで完全に分散化された取引所ではない
と評価するのが妥当でしょう。
17.経営者の背後関係をどう評価するか
確認できる事実を整理します。
確認できる事実
創業者はウラジミール・ノバコフスキー
2022年創業
AI・消費者向けサービスから仮想通貨へ事業転換
2025年に6,800万ドルを調達
評価額は約15億ドル
Founders FundとRibbit Capitalが主導
Haun VenturesとRobinhoodが参加
Coinbaseも支援者として掲載
投資家は株式と将来トークン権利を受け取った
チームと投資家にLITの50%を配分
確認できないこと
ピーター・ティール本人が経営判断へ直接介入している証拠
RobinhoodによるLighter買収計画
Coinbaseとの排他的提携
米国政府・情報機関による関与
LighterとRobinhood Chainの正式統合
したがって、
「ピーター・ティールが裏でLighterを支配している」
と断定することはできません。
ただし、Founders Fund、Robinhood、Coinbaseという出資者・支援者の構成を見る限り、Lighterが米国金融・技術資本の影響を強く受けるプロジェクトであることは事実です。
Lighterは、無色透明な分散型共同体ではありません。
米国の巨大VCと金融企業が、Hyperliquidに対抗するための技術基盤として期待しているDEXと見るのが自然です。
18.総合評価
取引性能
★★★★★
低遅延の注文板と大量注文処理能力を備え、中央集権型取引所に近い取引体験を目指しています。
手数料
★★★★★
通常の個人利用者がゼロ手数料で取引できる点は非常に強力です。
ただし、API・高頻度取引では料金が発生します。
技術的透明性
★★★★★
注文照合と清算までゼロ知識証明の対象にする設計は、DEXの中でも先進的です。
分散性
★★★☆☆
イーサリアムで検証される一方、シーケンサーや開発判断は運営側に依存しています。
資本力
★★★★★
Founders Fund、Ribbit Capital、Robinhood、Coinbaseなど、極めて強力な支援者を持ちます。
トークン設計
★★★☆☆
利用者への25%エアドロップは大きい一方、チーム・投資家への50%配分は重く、将来の売り圧と統治集中に注意が必要です。
BOTとの相性
★★★★★
高速注文、API、板取引という点でBOT開発に向いています。
ただし、API料金と接続条件の確認が必要です。
規制リスク
★★★☆☆
現時点では主に仮想通貨デリバティブですが、米国金融企業との関係や将来の現実資産展開によって規制負担が増える可能性があります。
日本人との相性
★★★☆☆
ウォレット接続型で利用しやすい一方、日本居住者への提供条件やデリバティブ規制は各自で確認する必要があります。
将来性
★★★★★
技術、資本、提携先のすべてが強力で、Hyperliquidに対抗できる数少ないDEXです。
結論――Lighterは「ウォール街が作る分散型取引所」なのか
Lighterは非常に完成度の高いプロジェクトです。
個人手数料ゼロ。
高速な板取引。
ゼロ知識証明による約定・清算の検証。
イーサリアム上での資産保全。
これらを同時に実現しようとする設計は、現在のDEX市場でも先進的です。
しかし、Lighterを純粋な分散型革命と見るのは正確ではありません。
背後には、
ピーター・ティール系のFounders Fund
フィンテック投資のRibbit Capital
米国証券会社Robinhood
米国暗号資産大手Coinbase
がいます。
さらにLITトークンの半分は、チームと投資家へ割り当てられています。
Lighterは、金融資本から独立した市場ではありません。
むしろ、
既存の米国金融・テクノロジー資本が、分散型金融の成長を自分たちの経済圏へ取り込むために支援するDEX
という性格を持っています。
Hyperliquidが「VCを拒否して作られたオンチェーン金融国家」なら、Lighterは「米国の巨大資本が支援する検証可能な電子取引所」です。
どちらが勝つかは、まだ分かりません。
Hyperliquidには、独立性、流動性、ブランド、コミュニティがあります。
Lighterには、イーサリアムの安全性、ゼロ知識技術、手数料ゼロ、米国資本があります。
そしてAsterには、バイナンス経済圏があります。
今後の無期限先物DEX市場は、
Hyperliquid
Aster
Lighter
による三極競争になる可能性があります。
取引所四季報としてのLighterの暫定評価は、5点満点中4.4点です。
技術力と資本力は最高水準です。
一方で、VCとチームへのトークン集中、ポイント施策で膨らんだ取引量、中央シーケンサーへの依存は慎重に確認する必要があります。
Lighterは、Hyperliquidを超える可能性を持っています。
しかし、成功したとき、その取引所を実質的に所有しているのが利用者なのか、チームなのか、米国VCなのか。
そこが最も重要な論点になるでしょう。
※本記事は情報提供を目的としており、LITその他の暗号資産、無期限先物、Lighterの利用を推奨するものではありません。レバレッジ取引では、預けた証拠金をすべて失う可能性があります。また、各サービスの利用条件や法的取扱いは居住地域によって異なります。

