蔵の中の自由帳 ~ショートショート~ #シロクマ文芸部
【蔵の中の自由帳】
俺の家には蔵がある。
昭和?
大正?
いや、明治か?
ともかく古くて、ぼろくて、黴臭い。
レンガ造りの蔵だ。
その中には、古臭いものたちが所狭しと詰め込まれている。
雑誌、箱、壺、誰のものかもわからない木彫りの熊。
足の踏み場もなく、一歩入れば出られるかどうかもわからない。
蟻地獄のような蔵だ。
だが、俺はこの蔵が好きだった。
中に入ると、外の雑多な世界から切り離される。
そこは俺だけの世界、俺だけの宇宙、だった。
今日も、俺は蔵に潜り込む。
ただし今日は、いつもと違って、
ちゃんとした理由がある。
俺はこの蔵の奥深くに眠る“あるもの”を見つけたのだ。
それは、昭和のアイドルが表紙になった古い自由帳。
たしか、キャンデーズというアイドルだった。
たぶん、親父が若いころに買ったものだろう。
なぜそれを探すのか。
フリマサイトで見てしまったのだ。
キャンデーズの自由帳が、数万円で売られているのを。
俺は腑抜けた記憶を頼りに、蔵の奥へ奥へと進んでいく。
そして、無造作に積み上げられた雑誌の間に、それを見つけた。
キャンディーズだ。
ラン、スー、ミキ。
ご丁寧にルビまで印字されている。
やった。
こんなものがン万円。
しばらくリッチに過ごせるじゃないか。
暗い闇の中、オレンジ色の裸電球が灯る俺の宇宙空間で、勝者の魂がふわりと漂った。
俺は自由帳を手に取り、パラパラとめくった。
やった。
未使用だ。
こりゃ、二桁いくかもしれない。
そう思いながら、さらにページをめくっていく。
……えっ。
俺はその場で、布団袋に倒れ込んだ。
自由帳。
そう、これは自由帳なのだ。
何を書いてもいい。
何を描いてもいい。
自由帳は、未使用ではなかった。
最後のページにだけ、びっしりと文字が書かれていた。
若かりし親父の、あまりにも緻密な計画。
タイトルは、
「ランちゃんと結婚するぞ計画」
この記事は、小牧幸助さん企画【シロクマ文芸部】参加用の記事になります。
今回のお題は、「自由帳」
はじめて、参加させていただきました。
いつもは、こんな感じで、
Gemini(AI)の出すお題で即興小説を書いています。
いいなと思ったら応援しよう!
**市場の熱狂と崩壊、
人間の欲望と静かな思想。
ブラック目醒ラボでは、FX分析と思想哲学の観測記録を発信しています。
20年生きている老猫アポロンと共に、
今日も静かに観測を続けています。
いただいたチップは、創作・分析活動のために大切に使わせていただきます。**