開封率より大事なKPIがある【連載 MailMarketing AtoZ 第三章】
こんにちは。ブラストメールのマーケティング担当、滝口です。
メール配信システムのベンダーに勤めながら、自分自身もBtoBマーケターとして日々メールマーケティングを実践しています。
この「Mail Marketing AtoZ」は、メールマーケティングのイロハをぜんぶ詰め込んだ全10章のマガジンです。本作はnote創作大賞2026、ビジネス部門への応募作でもあります。
第1章では「今すぐ始めよう」、第2章では「送り渋りの危険性」をお伝えしました。
今回、第3章のテーマはKPIです。
「何を見れば、メルマガがうまくいっているかわかるのか」という話です。
これ、実はほとんどの人が間違ったものを見ています。
メールマーケティングのKPIといえば、何を思い浮かべますか?
おそらく多くの方が「開封率」と答えると思います。
配信システムの管理画面を開けば、真っ先に目に入る数字。レポートを作るときも、まず開封率を報告する。
上司に「メルマガどう?」と聞かれたら「開封率が〇%で…」と答える。
でも、はっきり言います。
開封率だけでは、メールマガジンの成果を図る指標としては不十分です。
もちろん開封率もメルマガにおいて重要な指標の一つではあるのですが、過信しすぎるのは禁物です。
開封率ばかりを追いかけている間に、本当に見るべき数字を見逃している可能性があります。
この章では、開封率という指標の限界を整理したうえで、実際に追うべきKPIを「守り」と「攻め」の2つに分けてお伝えします。
第1節 「開封率至上主義」というワナ
1-1 開封率が高くても売上が上がらない理由
開封率とは、配信したメールのうち何%が開封されたかを示す指標です。
一般的にBtoCのメルマガでは10〜30%程度が目安とされています。
でも少し考えてみてください。
開封率が高いことは、何を意味するのでしょうか。
メールを開いた、ということです。それだけです。
開封した人が商品を買ったかどうか、サイトを訪問したかどうか、ブランドへの好感度が上がったかどうか、そういったことは開封率からはまったく読み取れません。
開封率30%のメルマガより、開封率15%だけどクリック率が高く、購入につながっているメルマガの方が、ビジネス的には圧倒的に価値があります。
開封率は「封筒を開けた人の割合」に過ぎません。
封筒を開けたあと中身を読んだかどうか、読んで行動したかどうか、それを開封率は教えてくれないのです。
にもかかわらず、開封率を主要KPIとして追いかけているチームが多い理由は、単純に「数字として見やすいから」です。管理画面を開けば一番目立つ場所にある。
レポートに書きやすい。でも見やすい数字が、正しい数字とは限りません。
何度も言いますが、開封率が不要とは言いません。
件名の良しあしや、顧客といかに関係が構築できているかなど、開封率からわかることも多くあります。
1-2 Apple MPPがKPI計測を狂わせている現実
開封率を信頼できない、大きな理由があります。
Apple MPP(Mail Privacy Protection)の問題です。
メール配信システムの管理画面で開封レポートを見たとき、こんな経験はありませんか?
「開封した人の一覧を見ると、やたらとAppleのドメイン(icloud.com、apple.comなど)が並んでいる」
これがApple MPPの影響です。
Apple MPPとは、2021年にAppleが導入したプライバシー保護の機能です。
iPhoneやMacのメールアプリでメールを受信すると、Appleのサーバーが自動的にメール内の画像を先読みします。
メールマーケティングの開封計測は、メール内に埋め込んだトラッキング用の画像が読み込まれたかどうかで判定しています。
つまり、Appleのサーバーが画像を先読みした時点で「開封した」とカウントされてしまうのです。
受信者本人がメールを開いていなくても、です。
iPhoneのシェアを考えると、これは無視できない規模の話です。
日本のスマートフォン市場におけるiPhoneのシェアは非常に高く、BtoCのメルマガではAppleデバイスのユーザーが読者の半数以上を占めることも珍しくありません。
その多くが、実際には開封していないのに「開封済み」としてカウントされている可能性があります。
つまり、あなたのメルマガの開封率が「20%」と表示されていても、そのうちの何%かはAppleの自動処理によるもので、実際に人間が開いたわけではないかもしれない。開封率という数字そのものの信頼性が、根本から揺らいでいるのです。
「開封率を上げよう」と施策を打っても、その数字がApple MPPの影響を大きく受けているなら、正確な効果測定ができません。これが、開封率を主要KPIとして追いかけることの限界です。
とはいえ、配信リストに大きな変化はないので、「前回と比べて上がったか」など、確認方法を工夫すれば使えないこともないです。
1-3 本当に追うべき指標の優先順位
では何を見ればいいのか。
私が考える優先順位をお伝えします。
最優先:配信エラー率
メールがそもそも届いているかどうか。
これがすべての前提です。エラー率が高いということは、リストが劣化していて、ドメインの評価も下がっているサインです。次の節で詳しく説明します。
次に見る:クリック率(特にメール下部のクリック)
実際に読まれて、行動につながったかどうかを測る指標です。
開封率と違い、Apple MPPの影響を受けません。クリックという行動は、人間が意図的に行うものだからです。
※残念ながら昨今セキュリティ強化によりクリックもBOTによるものが出ているのも事実です。そこで、メール下部のクリックを確認するのをお勧めします。
第3節で詳しく説明します。
参考程度:開封率
完全に無視するわけではありませんが、あくまで参考値として見る程度にとどめましょう。件名のA/Bテストをするときなど、相対的な比較には使えます。ただし絶対値として「開封率〇%は良い・悪い」と判断するのは危険です。
気にしすぎない:配信解除率 第2章でお伝えした通り、一定の配信解除は正常なリスト管理の一部です。異常に高くなければ、過度に気にする必要はありません。
この優先順位を頭に入れておくだけで、メールマーケティングの改善の方向性がかなりクリアになります。
第2節 守りのKPI――配信エラー率
2-1 エラー率が高いと何が起きるのか
配信エラーとは、送ったメールが届かなかった状態のことです。宛先不明で返ってきた手紙のようなものだと思ってください。
エラー率が高くなると、何が起きるか。
まず、ドメインのレピュテーション(評判)が下がります。Gmailなどの受信サーバーは、送信元のドメインを常に評価しています。「このドメインから来るメールは、届かないアドレスに大量に送っている」と判断されると、信頼スコアが下がります。
信頼スコアが下がると何が起きるか。
送ったメールが迷惑メールフォルダに振り分けられるようになります。さらに悪化すると、そもそもブロックされて届かなくなります。エラー率の問題が、最終的には「ちゃんとしたアドレスにも届かなくなる」という最悪の事態につながるのです。
エラー率の目安として、5%を超えてくると要注意のサインです。業界的には2〜3%以下に保つことが望ましいとされています。配信システムの管理画面でエラー率を定期的に確認する習慣をつけてください。
2-2 ハードバウンスとソフトバウンスの違い
エラーには2種類あります。「ハードバウンス」と「ソフトバウンス」です。
ハードバウンスは、永続的なエラーです。
存在しないアドレス、削除されたアカウント、ドメインごと廃止されたアドレスへの配信が該当します。一度ハードバウンスになったアドレスは、今後も届きません。すぐにリストから削除すべきです。
ソフトバウンスは、一時的なエラーです。
受信ボックスがいっぱい、受信サーバーが一時的にダウンしている、といった状況が該当します。次回送ったときには届く可能性があります。ただし、同じアドレスが繰り返しソフトバウンスになる場合は、実質的にハードバウンスと同じ扱いをした方が安全です。
多くのメール配信システムは、ハードバウンスになったアドレスを自動的に配信対象から外す機能を持っています。この機能が有効になっているかどうか、一度確認してみてください。自動処理に任せることで、エラー率を低く保つことができます。
2-3 エラーアドレスの処理を自動化する
エラー率の管理で一番大事なのは、「毎回手動で確認・削除する」という運用をしないことです。
手動での管理は、必ずどこかで抜け漏れが出ます。担当者が変わったとき、忙しい時期に後回しになったとき、リストが劣化していきます。エラー管理は、仕組みとして自動化しておくことが鉄則です。
具体的には、以下の機能が使えるシステムを選ぶことをお勧めします。
エラーアドレスの自動除外:ハードバウンスになったアドレスを、次回配信から自動的に除外する機能。ほとんどの配信システムに搭載されていますが、設定が必要な場合があります。
エラーレポートの自動通知:配信ごとにエラー率をレポートとして受け取れる機能。エラー率が一定を超えたらアラートを出す設定ができるものもあります。
定期的なリストクリーニング:長期間反応のないアドレス(開封もクリックもない)を定期的に見直す機能。完全に死んでいるわけではないかもしれませんが、定期的に整理することでリストの質を保てます。
システム選びの段階でこれらの機能を確認しておくことが、長期的にエラー率を低く保つための近道です。システムの選び方については第8章で詳しく扱います。
第3節 攻めのKPI――メール下部クリック率
3-1 「下部クリック」がエンゲージメントの真の指標である理由
守りのKPIがエラー率なら、攻めのKPIはクリック率です。ただし、ただのクリック率ではありません。メール下部のクリック率に注目してほしいのです。
なぜ「下部」なのか。
メールの中にリンクを複数置いている場合、どのリンクがクリックされたかによって、読者のエンゲージメントの深さがわかります。
メールの一番上にあるリンク(たとえばヘッダー画像についているリンクや、最初の商品へのリンク)をクリックする人は、メールをざっと見ただけでクリックしています。悪くはないですが、エンゲージメントとしてはそこまで高くありません。
一方、メールの下部にあるリンク(コンテンツを読み進めた先にあるボタンや、ページ下部のリンク)をクリックした人は、メールの内容をある程度しっかり読んで、興味を持ったうえでクリックしています。これは、ブランドへの関心が高い読者です。
BtoCのメールマーケティングにおいて、最終的な目標はリピーターを作ること、ブランドのファンを増やすことです。下部クリック率が高いということは、そういう読者が育っているというサインです。
3-2 どのリンクが何回クリックされたかを読む
具体的にどう計測するか。
メール配信システムの中には、メール内の各リンクごとにクリック数を計測できる機能があります。
「URLクリック集計」「リンク別クリック数」などと呼ばれることが多いです。
この機能を使うと、どのリンクが何回クリックされたかが一覧で確認できます。
このデータを見るときのポイントは、上から下への「クリックの流れ」を見ることです。
メール上部のリンクのクリック数が100で、下部のリンクのクリック数が3であれば、ほとんどの人はメールの上部しか見ていないということです。
逆に、上部が100で下部が40であれば、かなりの割合の読者がメールをしっかり読み進めているということです。
理想的には、下部クリック数÷上部クリック数の比率が高いほど、メールが読まれているということになります。この比率を「メール閲読率」の代替指標として使うことができます。
3-3 ファン化を数値で測るという発想
下部クリック率という指標は、単なるクリック数以上の意味を持っています。それは「ファン化の進捗を数値で測る」という発想です。
BtoCのマーケティングにおいて、一番大切なのはリピーターとファンを作ることです。一度買ってくれた人がまた買ってくれる。さらにはブランドを好きになって、周りに勧めてくれる。そういう関係性を作ることが、長期的な売上の安定につながります。
メルマガは、その関係性を育てるための最適なチャネルです。定期的にコンテンツを届けることで、読者の記憶にブランドが残る。役立つ情報を届けることで、信頼が積み上がる。
でも、「ファン化が進んでいるかどうか」は、なかなか数値で測りにくいものです。そこで使えるのが、下部クリック率という指標です。
メールをちゃんと読んで、最後まで興味を持って行動した人の割合。それが下部クリック率です。
この数字が回を追うごとに上がっていくなら、あなたのメルマガは着実に読者との関係を深めていると言えます。逆に下がっているなら、コンテンツや構成を見直すサインです。
開封率という「封筒を開けた割合」ではなく、下部クリック率という「最後まで読んで行動した割合」を追いかける。
この発想の転換が、メールマーケティングの質を一段上げることにつながります。
第3章のまとめ
開封率は「封筒を開けた割合」に過ぎず、ビジネス成果とは直結しない
Apple MPPの影響で、開封率の数字自体の信頼性が揺らいでいる
本当に追うべきKPIは「配信エラー率(守り)」と「メール下部クリック率(攻め)」の2つ
エラー率は5%を超えたら要注意。自動除外の仕組みを整えておく
下部クリック率は「ファン化の進捗」を測る指標として使える
開封率は参考値として見る程度にとどめ、配信解除率は過度に気にしない
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ここまで、長い記事を最後まで読んでくださり、本当にありがとうございます!
メールマーケティングに関するリアルなお悩みがございましたら、ぜひ直接お話ししませんか?
私自身、ふつうのマーケターとして現場で悪戦苦闘しながらマーケティングに取り組んでいます。
理論だけではない、実務レベルでの等身大の情報交換したいと思っています。
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※私とのオンライン面談です。
第4章へ続く
http://note.com/blastmail/n/nc1a6f43a6357?magazine_key=m9688bad5a075
