健診のレントゲンで、どれくらい被ばくするのか
前回は、健診で胸のレントゲンを撮る理由を書きました。
集団で行う健診のあと、結果が会社に届いて、レントゲンを受けていない方がいると分かる。理由をうかがうと人それぞれで、そのなかに「被ばくが心配だ」というご意見がありました。
今日は2回目、健診のレントゲン1枚で、どれくらい被ばくするのかです。
レントゲン1枚は、ふだんの暮らしの2週間ぶん
健診で撮る胸のレントゲンは、正面から1枚です。このとき受ける放射線の量は、おおよそ0.08ミリシーベルトです。
放射線は、日々の暮らしの中でも浴びています。大地や食べもの、空気、宇宙から届くもので、日本で暮らしていると1年に2.1ミリシーベルトほどになります。そのうち、食べものから体に入る分が1年に0.99ミリシーベルトで、およそ半分を占めます。
これを1日あたりに直して比べると、レントゲン1枚は、ふだんの暮らしで浴びる量のおよそ2週間ぶんにあたります。
飛行機に乗ると、レントゲン1枚から2枚ぶん
宇宙から届く放射線は、高いところほど多くなります。さえぎる大気が薄くなるからです。
1時間あたりで並べると、東京の地上が0.028から0.079マイクロシーベルト、富士山の頂上で0.10、飛行機で太平洋の上を飛ぶと7.40マイクロシーベルトです。マイクロシーベルトは、ミリシーベルトの1000分の1です。
東京とニューヨークを飛行機で往復すると、0.11から0.16ミリシーベルト。レントゲンでいえば、1枚から2枚ぶんです。
一方、富士山の頂上にまる1日いても、東京より増える量は、レントゲン1枚の40分の1より少なくなります。飛行機は、はるかに高いところを長い時間飛ぶため、量が大きくなります。高さのほかに、住む土地によっても量は変わります。世界には、大地から受ける放射線が日本の約30倍(1年に9.2ミリシーベルト)のインドのケララや、約16倍のイランのラムサールといった地域があります。土の中に放射性の物質が多く含まれているためです。インドや中国のこうした地域の調査では、これまでのところ、がんがはっきり増えたという報告はありません。なお、山登りやスキーで気をつけたいのは、放射線ではなく紫外線です。
体への影響が確認されているのは、100ミリシーベルトから
放射線による体への影響が確認されているのは、100ミリシーベルト以上の量です。
レントゲン1枚の0.08ミリシーベルトと比べると、1000倍以上の開きがあります。
毎年の健診で1枚ずつ、40年撮り続けたとしても、合わせて3.2ミリシーベルトです。100ミリシーベルトには、まったく届きません。100ミリシーベルトより少ない量では、がんが増えるとしても、その差はきわめて小さく、見分けるのが難しいとされています。体には傷を直す力があるので、少しずつ浴びた場合の影響は、この足し算よりさらに小さいと考えられています。
CTは、1回で0.06から17ミリシーベルト
同じ資料には、CT検査の量も載っています。1回あたり0.06から17ミリシーベルト。幅が大きいのは、撮る範囲の広さ(頭か、胸からおなかまでか)や、薬を使って何回か続けて撮るかどうかで、量が変わるからです。多いほうでは、1回の検査でレントゲン1枚の200倍を超えます。

ですから、健診のレントゲン1枚を断っても、減らせる被ばくはごくわずかです。CTは必要があって撮る検査なので、控えてくださいという話ではありません。
妊娠中の方、妊娠を考えている方へ
被ばくのご心配は、妊娠中の方からもよくいただきます。
胸のレントゲン1枚で、おなかの赤ちゃんが受ける量は0.01ミリグレイ未満です(おなかの赤ちゃんが受ける量は、シーベルトではなくグレイという単位で表します)。胎児への影響が心配されるのは100ミリグレイからで、1万分の1以下にあたります。
妊娠に気づかないまま1枚撮ってしまった、という方もおられます。国際的な専門機関(ICRP)は、100ミリグレイを下回る被ばくを、妊娠をあきらめる理由にすべきではないと明記しています。その1枚を心配する必要はありません。
妊娠を考えている時期も同じです。影響が心配される100ミリグレイという量は、妊娠のごく初期でも、赤ちゃんの体ができていく時期でも変わりません。そして、妊娠する前に受けた放射線が、生まれてくる子どもに影響するという証拠は、人では見つかっていません。
最後に
健診のレントゲン1枚は、0.08ミリシーベルト程度。ふだんの暮らしの2週間ぶんで、体への影響が確認されている量の1000分の1にも届きません。
被ばくが心配だというお気持ちは、もっともだと思います。今回は、その量を比べられる形でお示ししました。
次回は3回目、レントゲンを見合わせてよい人と、別の方法で代えられる場合の話です。妊娠中の方の扱いや、CTを撮ったばかりの方はどうすればよいのかも、そこで書きたいと思います。
