「心理的安全性」の解像度を上げる
現在所属している組織で、組織文化についての取り組みが促進されています。その中で「心理的安全性」について個人的な関心が高まったので理解を深めることにしました。
「心理的安全性」という言葉は数年前(もっと前?)から聞くようになりましたが、こうした流行語は本質を理解されず、なんとなくの印象で使われることも多いと思います。それによる誤用や効果的ではない運用を防ぐために、その本質を理解したいと考えています。
意味の希薄化が発生するのは、個人やグループが作った用語があり、適切に定義されていたにもかかわらず、歪められた定義がコミュニティに広まったときです。 これにより、用語の定義が完全に失われる危険性があります。 また、それに伴い、用語の利便性も失われてしまうでしょう。
意味の希薄化(Semantic Diffusion)
参考文献『心理的安全性のつくりかた』(第1章より)

https://pub.jmam.co.jp/book/b517388.html
主要な参考文献としてこちらの書籍を読みました。
チームの心理的安全性
「心理的安全性」という用語は、曖昧な記憶ではGoogleに関するものだったと思いますが、概念としては1999年に提唱された「チームの心理的安全性」から来ているようです。
チームの心理的安全性とは、チームの中で対人関係におけるリスクをとっても大丈夫だ、というチームメンバーに共有される信念のこと。
その後はGoogleによって「心理的安全性」という用語が広まっていったようですが、その詳細はプロジェクト・アリストテレスの「効果的なチーム」を分析する研究があったとのことです。その研究結果として「チームがどのように協力しているか」が重要で、その協力の仕方の中で圧倒的に重要だったのが「心理的安全性」という結論だったようです。
リサーチチームは、真に重要なのは「誰がチームのメンバーであるか」よりも「チームがどのように協力しているか」であることを突き止めました。
これに関連してGoogleでは「チームのパフォーマンス」に関する別の研究もあります。
Googleは社内でトップレベルのパフォーマンスを示すチームの間に共通の要因がないかを模索するべく2年間の調査研究プロジェクトを行い、チームの底上げ要因を探った。(略)「チームの個々のメンバーの素養よりも、各メンバーが他の関係者といかにやり取りし、作業をどう構成し、チームに対する自身の貢献をどう捉えるか、のほうが重要」との結果が出た。言い換えれば、「要はチーム力」ということである。
「チーム」とは?
最近、自分が話している中で「チーム」という単語が自然と出てきたのですが、なんとなく「スポーツチーム」のようなイメージがあるだけでした。
明確な定義は無いのかもしれませんが、書籍においては「お互いにアイデアを生み出す。ともに問題に取り組む。ともに目標やゴールに向かおうという活動」があってのチームであり、単なる個人の集合とは区別されています。
このような「チーム」という考え方が職場に出てきたのは、比較的最近のようですが、その背景として、正解のない不確実性が高い時代になったために、チームの学習を促進する「心理的安全性」が重要になってきたことがあります。
心理的安全を損なうもの
では心理的安全性を高めようとする時、何がその障害になるのでしょうか。「チームの心理的安全性」の定義の中では「対人関係におけるリスク」をあげています。これは「良かれと思って行動しても、罰を受けるかもしれない」というリスクのことで、具体的には次の4つ分類されるようです。
「無知」と思われるリスク
「無能」と思われるリスク
「邪魔」と思われるリスク
「否定的」と思われるリスク
自分の胸に手を当てて考えてみると、過去に発言を躊躇った背景には、このいずれかにリスクを感じた事があると思われます。特にエンジニアとして結果が問われる世界にいると、これらは自分のアイデンティティや生存を脅かしかねない、とてもデリケートな部分であるように感じます。
こうしたリスクの大きい環境では、挑戦することが躊躇われますし、気付きやアイデアを共有することも難しくなります。このような状況ではチームと言うよりは「単なる個人の集まり」と言えるでしょう。
高い基準(ハイ・スタンダード)の仕事
仕事の基準を高くするには、「目標を高く設定する」のではなく、「妥協点を高く設定する」とのことです。高すぎる目標を設定しても達成するイメージが湧きませんし、すぐに妥協していては共感されることもないでしょう。
すぐに目標の妥協を繰り返す状態として思い当たるのが、最近読んだシステム思考の書籍『世界はシステムで動く』で紹介される「低パフォーマンスへの漂流」です。これは悪い状態になることで目標を下げ、それによってさらに状態が悪くなる負のサイクルです。こうしたサイクルを回避する方法が「最良のパフォーマンスに応じた目標設定」と「パフォーマンスに関わらず基準を守る」であり、高い基準の仕事に通じるものを感じます。
学習と成長するチーム
学習と成長するチームは「心理的安全性が高い」かつ「仕事の基準が高い」状態で、いわゆるラーニングゾーンにある状態です。心理的安全性が高い状態のよくある誤解として、衝突のないぬるま湯のような環境がイメージされるかもしれませんが、そうではなくて、実際には「健全な衝突」が促進される環境が心理的安全性の高い状態です。
こうした心理的安全性の高いチームは、離職率が低くなったり、収益性が高い傾向があるようです。Googleの研究でも、個々のメンバーの素養より、チーム力がパフォーマンスの要因とされています。(LeanとDevOpsの科学)
日本組織固有の心理的安全性
エドモンドソン教授によって、心理的安全性を計測する7つの質問が発表されていますが、著者の研究では日本の組織には固有の要因があるようです。それが、話しやすさ、助け合い、挑戦、新奇歓迎という4つの因子です。
話しやすさ:率直な意見やアイデアを出すことができる
助け合い:トラブルへの迅速な対応や、より高いアウトプットを目指すための協力ができる
挑戦:変化に合わせて積極的に変えることができる
新奇歓迎:一人一人がその才能を活かすことができる
また、日本固有の風土として「同調圧力」があります。この同調圧力は成長や変化を起こす人をコンフォートゾーンに押し留めようと強く働きます。心理的安全性の高いチームを作っていくには、そうした日本固有の文化にも対応していく必要があります。(エンジニアリング組織論への招待)
心理的安全性をもたらす行動
組織に心理的安全性をもたらそうと考えるとき、導入したい2つの考え方があるといいます。
自分自身を「問題」の中に入れる
自分自身の「行動」を振り返る
つまるところ「自分自身で心理的安全性を体現しよう」ということだと思います。自分の行動が周りにどのような影響を与えているか観察し、心理的安全を感じる言動を実践することが重要です。
まとめ
今回、組織文化について考えるなかで「心理的安全性」についての理解を深めようと学習しました。こうした言葉は、流行りに乗ってとりあえず取り入れるのではなく、何をどのように解決するのかを理解することが大切です。「心理的安全性」について個人やチームが正しく理解し、ハイパフォーマンスな組織を目指していきましょう。
