見出し画像

【連載】「う」の付くものなら何でも良かった? ― 庶民が繋いだ食の知恵 | 土用の丑の日の「裏側」 第4話

第3回で、平賀源内が「丑の日にはウナギ」という流行を作ったお話をしました。しかし、当時のウナギは今以上に贅沢品。現代の私たちが「土用の丑=ウナギ一択」と思い込んでいるのに対し、江戸の庶民はもっと柔軟で、もっと賢く夏を乗り切っていました。

キーワードは、「『う』が付く食べ物で、災いを『打(う)ち払う』」という験担ぎ(げんかつぎ)です。

ウナギ以外にもあった「土用の主役」たち

当時の記録を見ると、ウナギ以外にも多くの「う」の付く食べ物が食卓に並んでいました。これらは単なる言葉遊びではなく、現代医学から見ても理にかなったラインナップだったのです。

  • 瓜(うり): きゅうり、スイカ、冬瓜、カボチャ(南瓜)。これらは水分が豊富で、体内にこもった熱を逃がす効果があります。

  • 梅干し(うめぼし): クエン酸が豊富で、疲労回復を助けます。また、食欲が落ちる夏場でも唾液を分泌させ、食欲を増進させてくれます。

  • うどん: 食欲がない時でもつるりと食べられ、消化に良いエネルギー源となります。

江戸っ子たちは、これらを組み合わせて「うどん」に「梅干し」を乗せ、食後に「瓜」を食べる……といった、完璧な夏バテ防止メニューを考案していたのです。

「食」で邪気を払うという思想

第2回でお話しした「丑(うし)」という文字。これは陰陽五行では「金(冷たさ・収縮)」の性質をわずかに持つとされますが、同時に丑は「牛」でもあります。

牛のようにどっしりと、粘り強く夏を耐え抜くために、「『う』の付く強いエネルギーを体に取り込む」。これは、目に見えない「気」の流れを重視した、当時の日本人のセルフケア精神の表れでもありました。

現代こそ見直したい「う」の力

現代の私たちは、夏になると冷房で体が冷え、逆に内臓が弱ってしまうことがあります。そんな時、高級な脂の乗ったウナギは、胃腸に負担をかけてしまうことも。

「今日は丑の日だけど、ウナギを食べるほどお腹が空いていないな……」

そんな時は、無理に流行に乗る必要はありません。冷やしうどんに梅干しを添えて、旬のきゅうりをかじる。これこそが、土用の本来の目的である「養生(体をいたわる)」に最も適した過ごし方なのです。

幸導師のまとめ

大切なのは「高いものを食べること」ではなく、**「自分の体と対話して、必要なものを補うこと」**です。「う」の付く食べ物は、先人が残してくれた「夏を生き抜くための処方箋」。

あなたの「今の体」が求めている「う」は、一体何でしょうか?

いよいよ次が最終回です。

最後は、これまでの歴史や知恵を総括しつつ、現代の私たちが明日から実践できる第5回「現代の土用と、心身の整え方 ― 運気を落とさない過ごし方」をお届けします。


#土用の丑の日 #うのつく食べ物 #梅干し #うどん #瓜 #夏バテ対策 #江戸の知恵 #食養生 #セルフケア #無理しない #高峰青嶺


いいなと思ったら応援しよう!