【連載】平賀源内の「元祖」コピーライティング ― 1枚の看板が変えた日本の夏 | 土用の丑の日の「裏側」 第3回
「土用の丑の日にウナギを食べる」という習慣。実はこれ、平安時代から続く伝統……ではなく、江戸時代の「キャッチコピー」から始まったマーケティングの勝利だということをご存知でしょうか?
絶体絶命のウナギ屋を救え!
物語の舞台は江戸時代。とあるウナギ屋の店主が、ある悩みを抱えていました。 「夏は暑くて、脂っこいウナギがさっぱり売れない。どうにかしてくれ!」
そこで相談を受けたのが、当時のマルチクリエイターであり、日本史上屈指の天才・平賀源内(ひらが げんない)です。彼は発明家であり、蘭学者であり、そして稀代の策士でもありました。
「本日、土用の丑の日」という魔法
源内は、店先に1枚の張り紙を出させました。そこにはただ一言、こう書かれていたのです。
「本日、土用の丑の日」
たったこれだけです。「ウナギが美味しい」とも「栄養満点」とも書いていません。しかし、この一言が江戸の町で爆発的なヒットを記録します。
なぜでしょうか? 第2回で触れる予定だった「丑の日には『う』の付くものを食べると病気にならない」という当時の民間伝承(縁起担ぎ)を、巧妙に利用したからです。
「今日は丑の日。あ、『う』の付くウナギを食べなきゃ!」
そんな心理を突いた源内の戦略は、現代で言うところの「バズ」を引き起こしました。他の店もこぞって真似をし、やがて「夏=ウナギ」という文化が日本中に定着していったのです。
旬を逆手に取った逆転劇
実は、天然ウナギの本来の旬は、冬眠に備えて脂が乗る秋から冬。夏は、実はそれほど美味しくない時期でした。
源内の凄さは、「旬ではないもの」を「今、食べるべき理由」に変換してしまったことにあります。価値がないと思われていたものに、ストーリーという「魔法」をかけて価値を創り出したのです。
幸導師のまとめ
日本最古のキャッチコピーは、単なる嘘ではなく、困っている店主を助け、夏バテ気味の江戸っ子に活力を与える「優しい嘘」でした。
あなたの周りにある「当たり前」も、誰かが仕掛けた素敵な魔法かもしれませんよ。
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