10歳のAI参謀--雑な指示でもなんとかしてくれると思っていません?--(麻衣編3)
「お姉ちゃん、マーケ代理店の佐々木さんから提案書が来てますよ」
画面の中のアヤが、麻衣のメールを指差している。
「あ、見てみよう」
麻衣は提案書をざっと読んで首をかしげた。
『リスティング広告で月300万円、SNSで拡散し見込み客を拡大……』
「うーん悪くはないけど、何か違う」
企画書をめくりながら独りでブツブツ言っている麻衣に、アヤが静かに聞く。
「佐々木さんに、何て依頼したんですか?」
「『新規顧客を増やす施策を考えて』って言ったけど……」
「え?」「それだけですか?」
「うん」
アヤが続ける。
「ちなみに何が違うのですか?」
「質の高い新規顧客を開拓すべきだと思って、相談したの」
「・・・」
アヤは深くため息をついた。
「お姉ちゃん、それじゃAIも人も迷子になります」
目的を言わないと、手段がズレる
状況:
代理店に「新規顧客獲得」を依頼
返ってきたのは「広告でリード数最大化」の提案
でも麻衣が欲しいのは「LTVが高い優良顧客」
アヤが指摘する。
「佐々木さんは悪くないです。『新規顧客を増やす』なら、リード数を最大化するのが正解ですから」
「でも、お姉ちゃんが本当に欲しいのは『数』じゃなくて『質』ですよね。目的が伝わってないから、ズレたんです」
「なぜ?」を5回繰り返す
アヤがホワイトボードに書いた。
5 Whys(なぜを5回)
「お姉ちゃんに聞きます」
アヤは続けた。
「なぜ新規顧客を増やしたいんですか?」
麻衣が返答する
「売上を上げるため」
「なぜ売上を上げたいんですか?」
「次の資金調達を成功させるため」
「なぜ調達が必要なんですか?」
「事業を伸ばすため」
「なぜ伸ばしたいんですか?」
「市場で勝つため」
「なぜ勝つ必要があるんですか?」
「・・・・」
麻衣は言葉に詰まった。そして、ゆっくり答えた。
「……前職で、メンバーを守れなかった。今度は、自分のチームを守りたい。そのためには、会社を潰すわけにはいかない」
アヤは頷いた。
「それが、お姉ちゃんの『真の目的』です」
目的のピラミッド
アヤがピラミッドを描く。
上位目的: チームを守る、会社を存続させる
↓
手段: 調達成功 → 継続利用してくれる質の高い顧客を増やす
↓
KPI: 商談数、POC転換率
「お姉ちゃんが佐々木さんに渡したのは、一番下の『KPI』だけです」
「だから『数を取る』ことに最適化された。でもお姉ちゃんが欲しいのは『質』だった」
依頼文を書き直す
麻衣は、佐々木への指示をこう書き換えた。
件名:新規獲得施策のご相談(リード数ではなくLTV重視)
佐々木さん
【目的】
単なるリード最大化ではなく、解約率が低くLTVが高い顧客の受注を増やすことです。
【ゴールイメージ(3ヶ月後)】
継続しやすい顧客セグメントが見えている
そのセグメントからの商談が安定発生
【お願い】
リード数ではなく、**「どのセグメントから、どんな顧客を連れてくるか」**の設計をお願いします。
送信後、すぐに返信が来た。
「目的を明確にしていただき、ありがとうございます。LTV前提で設計案を作り直します」
AIも同じ:目的がないと一般論
アヤが続ける。
「これ、AIに聞くときも同じです」
❌「新規顧客を増やす施策を教えて」
→ 広告とSNSの一般論
⭕「LTVが高く解約率が低い顧客を3ヶ月以内に増やす施策を教えて」
→具体的なターゲットを踏まえたセグメント設計
→ リーチ後に獲得、そしてオンボーディング強化まで踏み込んだ提案
「目的が違えば、AIが出す答えも変わります」
📋 今日のまとめ
「売上を上げたい」は目的の一部でしかない
5回「なぜ?」を繰り返すと本音に近づく
目的のピラミッド:KPI ← 手段 ← 真の目的
代理店にもAIにも、上位目的から渡す
🔧 今日のAI参謀プロンプト
【役割】
あなたはエグゼクティブコーチです。
私の曖昧な目標を5 Whysで深掘りし、「真の目的」を見つけてください。
【今の目標】
(例:新規顧客を増やしたい)
【実行ルール】
1. 対話形式で「なぜ?」を一つずつ投げてください
2. 本質的な目的に到達したら、以下を整理:
- 真の目的
- その目的に効く指標(最大3つ)
- 見落としがちなリスク
それでは、最初の「なぜ?」から始めてください。
📖 書籍案内
『AI参謀 Vol.2:「実行の設計図」』は、作り上げた戦略を組織に浸透させ実行させる為に、主人公がAI参謀アヤと共に、悪戦苦闘しながら組織を動かす物語。
👉 Kindle / Kindle Unlimited 対応
