【Mind Sessions】✍夢か、まぼろしか。深夜3時のスーパーマーケット。
私は時々、深夜、ふと思い立って24時間営業のスーパーマーケットへ足を運びます。深夜なら車で15分-20分の場所。
私は、この場所が好きです。
けれど、時折、自分がどこにいるのか分からなくなることがあります。
蛍光灯の太陽が照らす、無人の聖域
自動ドアが開いた瞬間、網膜を刺すのは、あまりに不自然で、あまりに清潔な白い光。
外の世界は深い闇に包まれているというのに、ここだけは永遠の正午が続いているかのような錯覚に陥ります。
店内には、誰一人として客がいません。
聞こえてくるのは、冷蔵ショーケースが発する低く、規則正しいハム音(ハミング)だけ。
それはまるで、眠りについた街の心拍数を測る精密機械の鼓動のようでもあります。

万華鏡の棚と、色彩のラビリンス
整然と並べられた色とりどりのパッケージ。
赤、青、黄色。
それらは、ビートルズが歌った『Lucy in the Sky with Diamonds』の空のように、極彩色に明滅しています。
誰にも手に取られるのを待っている、何千という商品たちの沈黙。
それはまるで、読まれるのを待つ古書の背表紙や、針を落とされるのを待つレコードの溝と同じ、静かな「業」の集積に見えてくるのです。
「Nothing is real(何ひとつ、現実じゃない)」
ジョン・レノンの歌声が脳裏をかすめます。
あまりに完璧に陳列された野菜や果物。
あまりに静かな冷凍食品のコーナー。
私は今、本当にこの世界に存在しているのでしょうか?
それとも、これは深夜の脳が見せている、あまりに解像度の高い「まぼろし」なのでしょうか。
境界線で「現実」を買い取る
カゴの中に、小さな飲み物を一つだけ入れます。
レジ袋の擦れる音だけが、このサイケデリックな静寂を切り裂く唯一の現実味です。
「評価」も「BAD」も存在しない、ただ「在る」だけの空間。
不条理も混沌も、ここでは整然とした棚の中に封じ込められています。
この無人のスーパーマーケットは、私にとっての「想像力という鳥が、羽を休める場所」なのかもしれません。
「まぁ……いいか。夢なら夢で。」
そう呟いて、私はレジを済ませ、再び自動ドアの向こう側へと足を踏み出します。
光の聖域を背に、冷たい夜の空気が頬を撫でたとき。
手の中にある冷えた缶の感触だけが、私をこの世界に繋ぎ止めてくれました。
どこまでも続く、夏の夜の空の下。
私は、また一歩、自分の物語へと戻っていくのです。

1828日目
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