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レティシア書房店長日誌

木村衣有子編「昭和 女たちの食随筆」
 まえがきにこうあります。
「おいしいおかずをこしらえるのと同じくらいの熱量で、たべものを言葉で豊かにあらわした昭和の女は、どれくらいいるのだろうか。
 そう、たべもののみものについて饒舌に綴り語ってきたのは、主に、男だったから。その証拠に、食をテーマに、少し昔の文章を中心に編まれたアンソロジーは近年多く刊行されているけれど、目次には男の名が女よりもかなり多く並んでいるのが常なのだ。
 あえて、昭和の女が言葉で残した食の記録、記憶、空想、志などを集めてみたい。」(中公文庫新刊1100円)

 林芙美子、佐田稲子、宮本百合子、石井桃子、幸田文、武田百合子、沢村貞子、向田邦子、林真理子、森茉莉、金井恵美子など錚々たるメンバー27名が、戦前・戦中・戦後と時代を反映する食の風景を描き出しています。
 「あさ、床の中で眼をさまして、一番さきに私の頭に浮かぶのは、今日の夕飯は何にしょうかしら…….ということである。 雨戸の隙間から、明るい陽の光が洩れていれば、久しぶりでちらしずしはどうだろう、と思い、うす暗くシトシトと雨の音がきこえれば、おでんの煮込みでもこしらえようか…..などとうつらうつらと思い迷うのも、また、楽しい。」
 これは、名脇役の俳優沢村貞子の「献立日記」の一節です。彼女の「私の献立日記」は料理エッセイの定番であり、その文章の巧さは特筆すべきものです。この次に、増田れい子の「楽屋弁当」が載っていて、沢村貞子のことが書かれています。増田が沢村に、料理すること、食べることへの興味がいつどのように芽生えたのかを問うと、「『治安維持法で検挙されて、獄中にいたときですね』さらりとおっしゃる。」
 沢村は新劇運動を続けるうちに、昭和7年に投獄され一年半囚われていました。「毎日麦めしとみそ汁、漬ものの食事でしたが、差入れのごちそうより、こっちの方がおいしくてね。差入れのは冷たいでしょう。麦めしだってみそ汁だって熱い方がおいしいわ。祝祭日にはプラス煮豆がつくのよ」
 なかなか言えない台詞ですね。彼女は牢獄で婦人雑誌に載っている料理記事を読み続け、「『空想のなかでこしらえてみるわけですよ。お料理は、カンゴクの中で勉強したんです、実は』沢村さんは、あでやかに笑っていった。」と書き残しています。
 あまり食のエッセイ集には手を出さないのですが、これはとても面白かった。田辺聖子の巻き寿司の話、日本にケンタッキーフライドチキンが入って
きたころの林真理子の青春物語、お惣菜やさんの風景を描いた石垣りんの詩「貧しい町」など、心に残るものが沢山ありました。これだけ多くの作家の作品の中から、食に関する秀逸なエッセイを抜き出した編者の努力にも拍手です。

⭐️レティシア書房ギャラリー案内
4/1(水)~4/12(日)  アキコハセガワ版画展
4/15(水)~4/26(日)  つむぐ舎 絵本原画展
4/29(水)~5/10(日)  さわらぎさわ作品展

⭐️入荷ご案内
平川克美「三歩あるけば旅の空」(2200円)
TSUTOMU IBUKI「悪い星の下に」(1540円)
エトセトラ「特集 SRHR」(1650円)
ゆうあん「ソロアラサー·イン·ワンルーム」(1000円)
平城さやか「ふつうに働けないから、好きなことして生きています」
(1760円)
子鹿·紫都香「キッチンドランカーの本」(660円)
「ちゃぶ台14号」(1980円)
「仕事文脈27」(1320円)
きくちゆみこ「人といること、すさまじさとすばらしさ」(2420円)
あさいまこ「ままならないまま、ママになった」(1000円)
「ほんと本屋とわたしの話23」300円
パン·カンパニー「ファミリ~ドキュメンタリー漫画」(2640円)

嶋田翔伍「住まなくても都」(1760円)
「随風03」(2200円)
中村季節「大工日記」(1980円)
税所篤快「大地との遭遇」(2200円)
碇雪恵「そいつはほんとに敵なのか」(1870円)
植本一子「とある都市生活者のいちにち」(1540円)
佐々木里菜「近く訪れる彗星」(2200円)
「蟹ブ店番日記」pha(1090円)
能町みねこ「デッドエンドで宝探し」(2200円)
折小野和弘「夏を待つ」(1980円)
渡邊愛知「guriのぐるり」」(1980円)
鎌田安里紗&マルティメンド有加「わたしの服は どこから来てどこへいくの」」(2090円)
藤原辰史編集「京大マガジン0号」(1650円)
テラニシシュウヘイ「喫茶結社の”読む”ラジオ·アーカイブス」(1100円)


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