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レティシア書房店長日誌

佐藤弘夫「山に棲む霊」
 
 本書は、日本人が古代から近代まで、山をどのように聖なる場、死者の居場所、祖霊の場として扱ってきたのかを文献資料とフィールドワークを駆使して書いたものです。山と霊魂をめぐって、古来から現代へと変化してゆく思想を読み解いていきます。(新刊2420円)  
 

 難しい本のように聞こえますがそんなことはなく、文献資料の紹介も、できるだけ平易なスタイルで提示されているし、著者が方々の山寺に出かけてゆく様子がリアルに描かれていて、同行している気分です。(モノクロ写真なのが残念ですが)  
 現代人にとっては、山といえば登山、観光、自然を楽しむ場だと思います。しかし、かつて日本人にとって山は、死者が籠る場所であり、神が降り立つ場所であり、仏の世界へ近づく道でもありました。特に、戦乱の中世に生きる人にとって、最大の目的は現世にはなくいかに浄土に向かうかということだったのです。山にいる神は、いわば亡くなった人びとを浄土へと向かう高速エレベーターに乗せるような役割でした。  
 「中世社会は人々が流動する社会だった。農民と土地の結び付きは弱く、戦乱や飢饉・疫癘の流行によって、村や集落が丸ごと消滅することも珍しくなかった。いつどのようにして命を落とすか予測できない日々のなかで、人々はせめて仏に死後の幸福を願わざるをえなかった。浄土の仏に対する熱烈な渇望は、そうした不安定な社会状況を背景として生まれたものだった。」
 その後、豊臣秀吉の天下統一で戦乱の世が終わり、社会状況は一変します。 「社会の安定化にともなって、人々の関心はこの世でいかに充実した人生を送るかという方向に向かうようになった。他界浄土のリアリティが薄れ、この世とあの世の緊張関係が解消していくにつれて、遠い他界の住人であった超越的存在(カミ)はその居場所をこの世に移し始めた。」  
 山の役割も変化していきます。古代~中世~近世への歴史を日本人の宗教観をベースにして描いていきます。  
 本筋とは関係ないのですが、終章「山に積み重なる祈りの心」に、著者の故郷の宮城県南部の山村で過ごした子供時代のことが書かれています。  「当時は犬が放し飼いにされていた。群れをなして村道を駆け回っている犬の姿が、しばしば見受けられた。いまになって思えば、見通しのいい里山と、放し飼いの犬たちが、野生動物が人間のテリトリーに侵入することを防ぐ役割を担っていたのである。」 なるほどクマが町中に侵入することはなかったのですね。里山が、奥山と村の生活空間の緩衝地帯になっていたのです。

⭐️レティシア書房ギャラリーご案内
9/9(水)~9/20(日)「虫撮り3」菊池千賀子写真展

9/23(水)~10/4(日) 中村ちとせ銅版画展
10/7(水)~10/18(日) 「ねこのチャーさん」國栖晶子絵本原画展
10/21(水)~11/1(日)「Quilling&Illustration Horoscope&Flowers 」Kotohanaアートワーク

⭐️イベントのお知らせ
 10月25日(日)「北海道のネイチャーガイド安藤誠トークショー」
 17時30分スタート(2000円要予約)
⭐️入荷ご案内
夏森かぶと「居場所づくりの日々」(1210円)
辻山良雄「本とねこと青い自転車」(2200円)

あさいまこ「たまご日記」(1000円)
早時期仮名子「You  and Me Cocoon」(700円)
子鹿·紫都香「キッチンドランカーの本」(660円)
「労働文集 孝働2」(1500円)
green birds「Time Homestay」(1500円)
スズキナオ「新幹線から見えたすき屋へカレーを~」(2200円)
上田信二「成分表」(1870円)

仕事文脈28「強さ弱さ研究」(1320円)
青木海青子「図書館、山へ分け入る」(1980円)
月と文社編「何も起きない夜日記」(1980円)
板垣崇「百年(一日)の孤独<上>」(2200円)
早時期仮名子「不明度51%」(600円)
田辺翔士「物置小屋暮らし俯瞰図」(1650円)

中川学「京都いま浄土」(3300円)
世田谷ピンポン「感傷は僕の背骨」(1980円)
内藤正典ゼミ「ゼミはガチだけど役に立つ」(2750円)
「京都町中中華倶楽部4」(968円)
「その界隈No16」(1100円)

世田谷ピンポンズ「感傷は僕の背骨」(1980円)
「明日のパン」(2500円)
Mimamorineko「拾いながら、見えてくる」(1100円)
Gururi編「猫もあなたを愛している」(1980円)
アンソロジー「徳島で本のにおいを辿る」(1430円)


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