#4:『ありがとう』を給油するガソリンスタンドに僕たちはなる
まさか「花を売ろう」とガソリンスタンドのメンバーに自信をもって宣言する日が来るとは、少し前までは想像していなかったーー
ある時ふと思ったんです。
ガソリンスタンドって、ちょっと不思議な場所かもなって。
人は積極的に「行きたい」と思って来るわけではない。
生活の中で「仕方なく」足を運ぶ場所。
でも、必ず立ち寄る。定期的に、無意識に。
この「無意識の習慣」の中に、ちょっとした感情の起点を忍ばせられたらどうだろう?
たとえば、「ありがとうを伝えるきっかけ」みたいなもの。
そう考えたときに、僕たちは「花」を選んだ。
ただ綺麗だからでも、売れそうだからでもなく、お花は“ありがとう”を象徴する代表格であり、僕たちの内側にある”ありがとう”という気持ちを具現化してくれる優秀なアイテムとして。
でも、お花を売るというビジネスを新しく立ち上げるという考え方では事業としては弱い。
しかし、僕たちは、「地域のありがとう」を加速させる感謝Boosterとして、この仕組みを社会実装したいと思っている。
このnoteでは、僕たちがなぜガソリンスタンドで花を売り始めたのか、そしてその裏にあるちょっと変わったけど静かで熱い思想について、綴ってみたいと思います。

1. 「ガソリンスタンドで花を売る」という違和感を超えて
富山の片隅にある僕たちのガソリンスタンドは、どこにでもあるような、昔ながらのスタンドです。
決して“最先端”とは言えない、けれど地域の人にとってはなくてはならない存在。
そんなガソリンスタンドが、最近、「花を売る」と言い出し、販売しだした。
「え?なんで?」
「ヤギヤエンタープライズさんはなんでもやるんだねぇ。」
という反応がほとんどでした。
それも当然です。車に関係のない花を置くことに、商業的な合理性は見つけにくい。
でも、僕たちはBoost X projectという地域活性化構想のもとで、
この“違和感”を「地域に必要な変化」へと転化する挑戦をしています。
Boost X projectは、「人・ビジネス・地域社会をBoost(加速)する」ことが目的です。
そして、今回のお花を販売するという取り組みは、その中でも「人の中にある感謝の気持ちを外に出す仕掛け」としてスタートしました。
お花って、手紙よりも、LINEよりも、伝えにくい感情を自然に伝えられるツールだと思うんです。
しかも、受け取った側も「なぜ花?」と問わない。それが花のすごさであり、寛容さだったり。非常にストレートなスペックをもっています。
「ありがとう」の気持ちを伝えたい。
でも、ちょっと照れくさい。
そんな人たちの背中をそっと押すきっかけとして、お花はとても優れているという当たり前のことを新鮮に思いつきました。
2. 感謝には『頻度ときっかけ』が必要だと思った
なぜ、感謝という行為をガソリンスタンドで仕掛けようとしたのか。
答えはとてもシンプルで、ガソリンスタンドは「定期的に通う場所」だからです。
感謝という素敵な気持ちは、日々の中に無数に生まれているのに、その多くがスルーされています。
たとえば、朝一番に起こしてくれる奥さん、いつも一緒に働いている同僚、一緒に住んでいる親御さん。身近な人ほど、感謝の歩留まりが起こっていると思いました。
「ありがとう」と言おうと思ったのに、タイミングを逃してしまった。
なんとなく気恥ずかしくて、また今度にしようと思っているうちに、日常に埋もれてしまう。
「長い仲なんだからそのくらいわかっているでしょ!」
と軽視されている感謝の気持ちや言葉もあったりしないだろうか。
僕も家族に言えていない「ありがとう」を何度も生き埋めにしてきたと思うし、日々そうしている気がする。
ーー もったいない。
「ありがとう」という言霊はマジックワードであり、前向きなBoosterである。
だから僕たちは、「ありがとう」を言えるきっかけを定期的に創出するインフラをめざしました。
「ありがとう」が僕たちのお客さまから生まれ、お客さまの身近な方たちもハッピーになる。そんな世界線。
給油という“いつもの行動”のついでに、一輪の花を手に取り、「そうだ、ありがとうって伝えよう」と思えるような仕組み。
これは、商品として花を売るというより、「ありがとうを増やす文化」を地域に実装する社会実験という考え方でもあります。
3. 売上よりも、感謝の数で測ってみたい
お店で100本の花が売れたら、それは100の「ありがとう」がこの地域に生まれたということです。
売れたか、売れなかったかではなく、ありがとうが可視化されたかどうか。
もし、ひとりの中学生が、お母さんに「ありがとう」と言って花を渡したとしたら、
それはその家庭の空気を変える小さな革命です。
もし、寡黙な父親が、娘の誕生日に花を買って帰ったら、
それは“父親なりの不器用な表現”として、きっと娘さんの心に刻まれる。
そんな出来事を、100個つくれると思ったら、それだけで胸が熱くなります。
ガソリンスタンドという場所は、そもそも人が“わざわざ来る”場所ではない。
生活の中のルーティンの中にある、当たり前のインフラというのが事実だと思う。
でも、だからこそ、その“ついで”の中に意味を持たせることができると、僕は信じています。
感謝は、道徳やマナーではなく、“行動”です。
そして、行動にはきっかけが必要です。
僕たちがやっているのは、ガソリンスタンドといういつもの場所に、"感謝のスイッチ"を仕掛け、「ありがとう」という行動のきっかけを、地域の日常の中に紛れ込ませることなんです。
4. まとめ: インフラに“想い”をのせる
これから、ガソリンスタンドで売る花の数は、もしかしたらそれほど増えないかもしれません。
でも、僕たちの本当のゴールは、数字には現れにくい「ありがとうの総数」を増やすことです。
感謝を伝える文化が当たり前になったら、地域の空気は変わる。
事業者としてサボることはしませんが、売上やKPIとは別次元の豊かさもめざして。
僕たちは、事業者としてのやり方だけでなく、地域を多面的に活性化させるインターフェイスとしての在り方を模索しています。
DXも、AIも、マーケティングも、もちろん大切です。
僕も地域でのセミナーで発信してきたり、各社にカスタムメイドしたセミナーなどで直接サポートしたりしています。
やるべきことはやるべきことではありますが、物理的に存在するお店は人の“想い”を運ぶ器のファンクションも有しています。
僕たちはこれからも、給油という当たり前の行動の中に、
ちょっとした“あたたかい違和感”を仕込んでいきたいと思っています。
そして、少しずつでも地域に「ありがとう」が増えていく未来を、
ガソリンスタンドという場所から、静かに照らしていきたいと思います。
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