① 今日は、ワンピースでよかった。🍃同じ写真から、ひとつ目の物語
今日は、
楽しみにしていた
お友達とランチ。
本当は、
ブラウスとパンツ。
少しラフなスタイルで
出かける予定だった。
けれど、
家を出る直前になって、
やっぱり、
このワンピースを
着ていこう。
そう思った。
ゆったりとしていて、
歩くたびに
体のまわりを
風が泳ぐようなワンピース。
今日は、
これを着たいと思った。
彼女とは、
いつも話が尽きない。
仕事のこと。
これからのこと。
たわいもないこと。
気がつけば、
何時間も経っている。
今日もきっと、
時間を忘れて
話し続けるんだろう。
向かったのは、
深い森の中にあるカフェ。
物語の中に
迷い込んだような場所だった。
木々の隙間から、
小人がひょっこり
顔を出しても
不思議ではない。
そんなことを
想像してしまう。
運ばれてきたのは、
スパイスの効いた
スープカレー。
ふわりと広がる
パクチーの香りに、
いっそう食欲を
そそられる。
そして、
冷たいジンジャーエール。
クラフトコーラのような、
透き通る褐色。
窓から差し込んだ光が、
二人のグラスを
キラキラと輝かせていた。
よく笑い、
よく話した。
静かな森の中で、
穏やかな時間を
彼女と共有している。
なんて贅沢な時間だろう。
食事を終えると、
彼女が言った。
「少しだけ、
寄り道してもいいですか?」
もちろん。
私は、
行き先を聞かないまま
彼女についていった。
しばらくして、
「着きました」
彼女が、
にこりと笑った。
その視線の先に
広がっていたのは、
色彩豊かな
花のじゅうたん。
遠くに、
そびえる山々。
その手前には、
深い緑。
大好きな、紫。
夏の光を浴びて、赤。
私たちを明るくする、黄色。

あたり一面が
鮮やかな色に包まれ、
風に乗って
やさしい香りが届く。
大きく息を吸った。
風が髪を揺らし、
ワンピースの裾を
ふわりと持ち上げる。
その風を
全身にまといながら、
ただ、ただ、
幸せだと思った。
花畑の前に立ち、
風に揺れる裾を見たとき、
朝、ふいに、
「このワンピースを
着ていこう」
そう思ったのは、
この景色に
出会うことを、
知っていたからのような
気がした。
今日は、
ワンピースでよかった。

