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恋愛相談を、友達にしなくなった|凪

去年の秋、居酒屋の狭い座敷で、友人が二時間ぶん話した恋愛の悩みを、私は一度も止めずに聞いていた。

自分の番が回ってきたとき、話すことがなかったわけではなく、当時ちょうど返事の来ない相手のことで毎晩考えていたのに、口から出たのは「最近ぜんぜん、平和だよ」の一言だった。


相談すると、決まってしまう

友達に話さなくなった理由を、長いあいだ面倒だからだと思っていましたが、去年あたりから、たぶんそうではないと考えるようになりました。

人に話すと、その関係が言葉で固定されてしまうからです。三日返ってこないんだよね、と口にした瞬間、その関係は「三日返ってこない関係」という名前をもらってしまい、聞いた友達は当然そこから先を親身に考えてくれる。

「それは脈ないよ」「もっといい人いるって」。どちらも善意しかない言葉。でも、その判定を聞いてしまうと、次に相手から連絡が来たとき、私は自分の気持ちより先に友達の判定を思い出すようになる。

相談は、自分の関係に他人の採点を持ち込む行為でもありました。

それでも、聞いてもらいたい日はある

誤解しないでほしいのは、相談が悪いと言いたいのではないということ。

去年の座敷で二時間話した友人は、話し終えたあとに「聞いてもらっただけでよかった」と言って笑っていて、答えが欲しかったわけではなく、ただ声に出して並べたかっただけなのだと分かった。

私にもその日はある。欲しいのは判定ではなくて、相づちだけ。それなのに、こちらが状況を説明すればするほど、相手は親切に判定を返してくれる。ずれはたぶん、どちらのせいでもない。

手帳に相談するようになった

いま、その役目を引き受けているのが手帳。

書くのは事実だけと決めていて、相手から連絡が来た日に丸、こちらから誘った日に三角、それ以外は何も書きません。感想も判定も書かない。

一週間ためて眺めると、不思議なことに、居酒屋で聞いてもらったあとと同じ感じがする。声に出して並べるかわりに、紙の上に並べているからだと思う。

違うのは、紙は「脈ないよ」と言ってこないところです。

判定が出てこない場所に事実を並べると、他人の評価より先に、自分がどうしたいのかのほうが見えてくる。友達に相談していたころは、自分の希望より先に、周りの評価が見えていた気がします。

今夜のひとつ

もし最近、誰にも話していない関係があるなら、それは隠しているのではなくて、まだ言葉にしたくないだけかもしれません。

その場合は、無理に人に話さなくていい。かわりに、事実をひとつだけ書き出してみてください。今週、相手から連絡が来た回数はいくつだったか? その数字を書くだけで、話したかったことの半分はもう形になっています。

次は、「二人で会う約束をした夜に、なぜか予定を入れたくなる話」を書こうと思っています。

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