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alexandre_141
『箱』
それは箱の中にあった。ぶるぶる震えている。僕はそれを手に取った。ピタリと箱は止まった。思ったより軽い。箱の中に何か入っている。とりあえず買って帰ろう。僕はレジに向かった。『結構高いなあ。』と思った。 部屋に帰宅し、そいつと対峙した。僕と箱。何の音もしなかった。思わず手を伸ばした瞬間。箱から束ねられた紙の束がバサっと落ちた。身にまとう絵柄に目を奪われた。
それはタロットカードだった。そもそも会社帰りに通った本屋に、『世界のタロットカード展示会』とコーナーがあった。そこへ仕事疲れの僕はふらふらと引き寄せられた。箱が震えていたのではない。僕が震えていたのだった。
それまで特別なタロットカードの思い入れもなかった。けれどもあの展示会に立っていたカードたちは疲れた僕の心に囁いたんだ、『おかえりなさいませ。』と。
気がつけば僕は今タロットカードのコレクターだ。沢山の浮気をしてはカードたちと遊んだ。クレジットカードの数字も相当落ちた。 でも構わない。どんなにカードの愛人達に囲まれても、帰る箱はただ一つ。
あの時震えていた僕の心を掴んだ初めての箱は、今でも燦然と輝いてこの手中で囁き続ける。
『おかえりなさいませ。』と。
だが。
『箱』のくせに、俺の浮気をじっと見つめている。
やはり、さっきまでカタカタと震えていたのは気のせいではなかったのだ。
蓋の隙間から覗く暗闇が、不敵な笑みを浮かべて俺を見つめ返していた。
了
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