『ファイナルファンタジーXVI』感想 ― 圧倒的な映像美の裏で、拭えなかったモヤモヤ
『ファイナルファンタジーXVI』(以下FF16)をようやくクリアしました。発売からしばらく経ってしまいましたが、腰を据えて向き合った感想をここにまとめておきたいと思います。
結論から言うと、「映像と音楽は文句なしに素晴らしい。でも、RPGとしての手応えや物語終盤の展開には、正直モヤモヤが残った」というのが率直な感想です。良かった点と気になった点、両方を整理しながら書いていきます。
FF16は2023年6月に発売された、当時としては7年ぶりとなるナンバリング最新作です。最大の特徴は、従来のコマンド選択式やATBバトルから大きく舵を切り、リアルタイムのアクションRPGへと生まれ変わった点にあります。プロデューサーには『FFXIV』を牽引した吉田直樹氏、バトルデザインには『デビルメイクライ』シリーズで知られる鈴木良太氏が参加しており、発売前から「これまでのFFとは違う」と話題になっていました。実際に遊んでみても、その"違い"は随所に感じられました。
## 音楽とグラフィックは文句なし
まず声を大にして言いたいのが、映像と音楽のクオリティの高さです。ロード時間がほとんど存在しないシームレスな作り込みには何度も驚かされましたし、彩度を抑えた落ち着いたトーンのグラフィックが、ヴァリスゼアという世界の重苦しい空気感を見事に表現していました。荒れる海の表現や、生い茂る草木の描き込みなど、細部まで手を抜いていない印象を受けます。
召喚獣同士がぶつかり合う大規模バトルの映像的なスケール感も圧巻で、画面いっぱいに繰り広げられる演出には「これぞ次世代機のFF」と唸らされる瞬間の連続でした。
音楽面も安定のクオリティです。エリアごとの空気感を的確に演出するBGM、ボスごとのイメージを反映した戦闘曲、そしてシリーズおなじみの旋律をふと感じさせる場面など、聴いていて飽きません。ストーリー展開に気持ちが乗り切らない瞬間があっても、音楽の力で引き戻される、という感覚が何度もありました。
## 気になった点①:単調で「やらされてる感」のあるサブクエスト
一方で、遊んでいて何度も引っかかったのがサブクエストの作りです。「目的地に行って、対象を倒すか回収して、依頼主に報告する」という構成がひたすら繰り返され、正直終盤になるほど作業感が強くなっていきました。
さらに気になったのが、多くのサブクエストが「やらないと効率的に強くなれない」「こなしておかないと後々きつくなる」という空気を纏っていたことです。自分から寄り道を楽しんでいるというより、義務としてこなしている"やらされてる感"の方が強く、好奇心より「消化しなければ」という感覚が先に立ってしまいました。探索や寄り道が本来持っているはずの自由な楽しさを、あまり感じられなかったのは残念なポイントです。
特に、大きなストーリーの節目の直前にまとまった数のサブクエストが一気に発生するタイミングがあり、「今それどころじゃないのでは」と感じてしまう場面も一度や二度ではありません。ストーリーへの没入を大切にしている作品だからこそ、サブクエストの内容や出すタイミングには、もう一段の工夫が欲しかったところです。
## 気になった点②:物足りなさを感じたRPG要素
もう一つ気になったのが、RPGとしての手応えの薄さです。操作できるのは基本的にクライヴひとりで、ジルやジョシュアといった仲間をリアルタイムで動かすことはできません。装備品も収集や更新そのものが戦略性に直結する場面が少なく、属性による弱点システムのようなものもないため、「装備を整えて挑む」という楽しみをあまり味わえませんでした。
アクションゲームとしての爽快感自体は認めつつも、ナンバリングタイトルとして向き合うと、これまでのFFで得られていた育成・編成の自由度が恋しくなる瞬間が何度もありました。
## 気になった点③:駆け足だった後半のストーリー
そして一番モヤモヤが残ったのが、物語後半の展開です。前半は、クライヴの復讐劇を軸に、各国の政治的な駆け引きや因縁が絡み合う骨太な人間ドラマとして進み、続きが気になって仕方がありませんでした。
ところが後半に入ると、フーゴやディオンなど各ドミナントとの因縁を一つずつ順番に片付けていくような展開になり、それぞれのエピソードがやや駆け足気味に処理されている印象を受けました。特に終盤で存在感を増すアルテマという存在の扱いには唐突さを感じました。それまで積み上げてきた人間同士の因縁劇から、一気にスケールの大きい神話的な決着へと舵を切る構成は、前半の重厚な空気感とはやや毛色が異なり、置いていかれたような感覚がありました。
ヒロインであるジルの掘り下げも十分とは言えず、シヴァの力を失って以降は物語の中心から外れてしまい、彼女自身の因縁がきちんと決着したとは感じにくいまま終盤を迎えてしまったのも残念です。エンディング自体も余韻を残す作りではあるものの、明確な決着というよりは解釈をプレイヤーに委ねる終わり方で、賛否が分かれるのも納得できます。
## まとめ:映像体験としては一級品、RPGとしては賛否あり
総合すると、FF16は「作品としての完成度」よりも「体験としての強度」で評価すべきタイトルなのかもしれません。映像美と音楽に浸る没入感は間違いなく一級品で、その点だけでもプレイする価値は十分にあります。
ただ、シリーズ伝統のRPGとしての奥行きや、物語を最後まで丁寧に描き切る構成力を期待すると、肩透かしを食らう部分があるのも事実です。「アクション主体のダークファンタジーとして映像体験を楽しみたい人」にはおすすめできますが、「じっくり育成しながら、隅々まで練られた物語を味わいたい人」には、少し物足りなさが残るかもしれません。
