語り続ける夜――アラビアン・フォー・ナイツ 4Days/Day1
アラビアン・フォー・ナイツ 4Days
MC:ユウ
夜が明ければ、物語は終わる。
だから彼女は、終わらせなかった。
また、あの古本屋
以前、イスラムの記事を書いている時に、アラビアンナイトに触れた。
アラジンや魔法のランプではなく、その物語の軸にいる、毎晩物語を語り続けたシェヘラザードのことを、いつかちゃんと読んでみたい。
そんなことをぼんやり思い出しながらの帰り道。
私はあの古本屋の前で足を止めた。
以前にも、妙な本を一冊買ったことのある店だった。
棚の隅にあったのは、古びた紺色の本。
『千夜一夜と魔法の言葉』
会計を済ませると、店主は何も言わず、薄い黒の紙で本を包んだ。古本にわざわざブックカバーを掛ける店も珍しい。
表には、銀色の文字が一行だけ刷られている。
「أما الدعاء فلا يُحجب عن أحد」
アラビア語……かな。
その文字を一度なぞってから、本を開いた。
最初の章題は…
千夜一夜と魔法の言葉――
第一章 夜明けの呪文
――黒戸聖
魔法というものは、たいてい何かを起こすための技術だと思われている。
石を金に変える。死者を蘇らせる。姿を消す。
だが、シェヘラザードが宮廷に持ち込んだ魔法は、その逆だった。
何も起こさないための魔法――正確に言えば、「夜が明ける」という、この世で最も確実で、最も逆らいようのない出来事を、一時的に無力化する魔法だ。
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