私の刹那――時を刻むものたち 4Days/Day4
時を刻むものたち 4Days
MC:アイ
私たちは、同じ一秒を使っている。
でも、その一秒まで同じとは限らない。
一階と二階の時計
まったく同じ二つの超高精度な時計を用意して、一つを一階に、もう一つを二階に置く。
それだけでも、二つの時計は厳密には同じ速さで進みません。
もちろん、壁時計や腕時計を並べて眺めて分かるような差ではありません。けれど、十分な精度を持つ時計で比較すると、高さの違いによるわずかな進み方の差が見えてきます。
原因は重力です。
高い場所と低い場所では重力ポテンシャルが異なるため、それぞれの時計が記録する経過時間に差が生じます。また、重力だけでなく速度も関係します。異なる速さで移動し、異なる経路を通った二つの時計をあとで比べれば、その読みは完全には一致しません。
ここで、「場所によって一秒の長さが勝手に変わる」と考えてしまうと少し分かりにくくなります。
一秒という単位は共通です。
違うのは、その時計がどんな場所にいて、どんな経路を通り、その一秒をいくつ積み重ねたか。
相対性理論では、時計が自分自身のたどった経路に沿って記録する時間を「固有時」と呼びます。
だから二つの時計が違う値を示しても、どちらかが壊れているとは限らない。むしろ時計が十分に正確になったことで、これまで見えなかった時空の違いが、時計の読みとして現れるようになったのです。
【解説|固有時】
固有時とは、ある時計が自分のたどった経路に沿って記録する経過時間のこと。同じ構造の時計でも、速度や重力ポテンシャルの異なる経路を通れば、あとで比較したときに異なる経過時間を示すことがある。
「高い場所では時間そのものが速くなる」と単純化するより、それぞれの時計が異なる条件の中で異なる固有時を記録すると考える方が正確。
時計で高さを見る
この違いは、もはや相対性理論を確認するだけの現象ではありません。
時計そのものが、重力の違いを測るセンサーになり始めています。
2022年には、ストロンチウムを使った光格子時計で、わずか約一ミリメートルという高さの違いによる重力赤方偏移が測定されました。富士山の頂上と海岸を比べる必要はありません。今の最先端時計は、私たちが指先で示せるような距離の中にある重力の差まで読み取ろうとしています。
ここまで精密になると、時計の役割が少し変わって見えます。
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