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体と歩く|「なんとなく」を大切にする

体と歩く。
体は、いつも私たちより少し早く、今の自分を知っています。
このシリーズでは、そんな体の声に耳を澄ませながら、自分らしい歩幅を見つける時間を綴っています。

「今日は、なんとなくゆっくり過ごしたい。」

朝、目が覚めたとき、そんなふうに感じる日があります。

理由は、はっきりしません。

昨日、何かあったわけでもない。

体調が悪いわけでもない。

それでも、「今日は少しゆっくり歩こう」と、体が教えてくれているような気がするのです。

以前の私は、そんな「なんとなく」をあまり信じていませんでした。

理由がないことは、気のせい。

気持ちの問題。

そう思っていたのです。

だから、「気のせい、気のせい」と自分に言い聞かせて、いつも通り動いていました。

でも、振り返ってみると、その「なんとなく」は、いつも私に何かを伝えようとしてくれていたのだと気づきました。


「なんとなく疲れている。」

そう感じた日に無理をすると、夜には思った以上に疲れが出ることがありました。

「なんとなく今日は外の空気を吸いたい。」

そう思って少し散歩をすると、心まで軽くなったこともありました。

「なんとなく今日は温かいものが食べたい。」

そんな日に、温かいスープやお茶を口にすると、不思議とほっとすることがあります。

どれも、そのときは理由を説明できませんでした。

でも、あとになって振り返ると、「あの感覚は間違っていなかった」と思うことが少なくありません。


私たちは、何かを判断するとき、「理由」を探そうとします。

なぜそう思ったのか。

なぜそう感じたのか。

説明できなければ、不安になります。

けれど、体はいつも理由を言葉にしてくれるわけではありません。

肩の力が少し入っていること。

呼吸が少し浅いこと。

足取りが少し重たいこと。

そんな小さな変化を、体は静かに感じています。

そして、それらが積み重なって、「なんとなく」という感覚になるのかもしれません。

「なんとなく」は、体から届く小さな手紙。

私は、そう思っています。


もちろん、「なんとなく」だけで、すべてを決めるわけにはいかないこともあります。

仕事では、責任を持って判断しなければならない場面があります。

日常の中でも、冷静に考えることは大切です。

でも、自分の感覚まで否定しなくてもいい。

そう思うようになりました。

頭で考えることと、体で感じること。

そのどちらも、自分を支えてくれる大切な存在です。


ある朝、庭の花に水をあげているときのことです。

「今日は、もう少しここにいたい。」

そんな気持ちになりました。

時計を見れば、家を出る時間は近づいています。

それでも、ほんの一分だけ朝日を眺めました。

風に揺れる花。

鳥のさえずり。

朝のやわらかな光。

その一分があっただけで、その日は不思議なくらい穏やかな気持ちで過ごせました。

あのときの「なんとなく」は、忙しい一日になる前に、体がくれた贈り物だったのかもしれません。


私たちは、忙しくなるほど、自分の感覚を後回しにしてしまいます。

「あとで考えよう。」

「気のせいだろう。」

そうしているうちに、体が送ってくれていた小さなサインは、少しずつ見えなくなってしまいます。

だから私は、ときどき立ち止まって、自分に問いかけます。

「今、なんとなく、どう感じている?」

その問いに、正解はありません。

「今日は静かに過ごしたい。」

「誰かに会いたい。」

「少し休みたい。」

どんな答えでも大丈夫です。

大切なのは、その感覚をすぐに否定しないこと。


私たちの体は、今日だけを生きているわけではありません。

これまで見てきた景色。

出会ってきた人。

頑張ってきた日々。

休みたかった日。

そのすべてを覚えながら、今日という一日を生きています。

だからこそ、言葉にはできない小さな感覚が、ふっと心に浮かぶことがあるのでしょう。

私は、そんな「なんとなく」を、これからも大切にしていきたいと思います。

それは曖昧なものではなく、体が今日の私にそっと届けてくれた、小さな手紙だからです。

体は、今日も言葉になる前の気持ちを、静かに教えてくれています。

だから今日も、その小さな手紙を受け取りながら、自分の歩幅で歩いていきたいと思います。


今日も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
また「体と歩く」の時間に、お会いできたら嬉しいです。

Yufu


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